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5. 日本の主要輸入先国の動向(2020年6月時点予測)

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最終更新日:2020年7月10日

5. 日本の主要輸入先国の動向(2020年6月時点予測)

2020年7月

 近年、日本の粗糖(甘しゃ糖・分みつ糖〈HSコード1701.14−110〉および甘しゃ糖・その他〈同 1701.14−200〉の合計)の主要輸入先国は、豪州、タイ、南アフリカ、フィリピンで、2019年の主要輸入先国ごとの割合を見ると、豪州が81.4%(前年比10.2ポイント増)、タイが18.6%(同9.5ポイント減)となっており、2カ国でほとんどを占めている(財務省「貿易統計」)。

 以上により、この2カ国の動向については毎月報告し、南アフリカおよびフィリピンの動向についてはそれぞれ半年に1回の頻度で報告する(南アフリカは3月号および10月号、フィリピンは4月号および9月号を予定)。

 本稿中の為替レートは2020年5月末日TTS相場の値であり、1タイ・バーツ=3.46円である。

豪州

2020/21年度、砂糖生産量はやや増加する見込み
 2020/21年度(4月〜翌3月)のサトウキビの収穫面積は、36万ヘクタール(前年度比1.0%減、5月予測から変化なし)とわずかに減少すると見込まれる(表6)。サトウキビ生産量は、記録的な干ばつに見舞われた2019年ほど極端な天候にはならないとの前提の下、3200万トン(同6.5%増、5月予測から変化なし)とかなりの程度増加すると見込まれる。

 砂糖生産量は、前年度の減産からの反動が押し上げ要因となり、449万トン(同4.7%増、5月予測から変化なし)とやや増加すると見込まれる。消費量の落ち込みを輸出促進によって相殺すると予測されることから、輸出量は350万トン(同4.6%増、5月予測より増加)とやや増加すると見込まれる。

降雨による土壌水分量の増加がサトウキビ収穫を妨げ、圧搾に遅れ
 豪州砂糖製造業者協議会(ASMC)は、2020/21年度におけるサトウキビの週間圧搾量の公表を開始した。これによると、5月下旬に降雨が続き、ハーベスタが圃場に入れなかった影響でサトウキビが収穫できず、製糖工場での圧搾の開始が前年度より1週間程度遅れた。結果、6月7日までの週間圧搾量は1万4891トン(前年同期比90.9%減)と大幅に減少した。一方、可製糖率(CCS)(注1)は12.28と、前年同期の11.93を上回った。現地報道によると、サトウキビの主産地であるクイーンズランド(QLD)州のハーバート・バーデキン地域(注2)などでは、6月に入っても降雨が続いており、製糖業者はサトウキビの収穫や圧搾を一時中断せざるを得ない状況にあるため、今後の週間圧搾量への影響が懸念されるとしている。

(注1)サトウキビのショ糖含有率、繊維含有率および搾汁液の純度から算出される回収可能な糖分の割合。
(注2)ハーバート地区とバーデキン地区を合わせた区域。


SRA、サトウキビの新品種2種類の承認を発表
 豪州砂糖研究センター(SRA)は5月18日、SRAが開発したサトウキビの新品種(「SRA28」および「SRA29」)の栽培が、栽培対象地域のサトウキビ農家と製糖業者で構成された委員会(Regional Variety Committees)において承認されたと発表した。

 SRA28は、既存品種と比べて単収やCCSが高いことや、耐倒伏性に優れ収穫しやすいこと、根腐病や葉焼け病、黒穂病への耐病性を持つことなどが特徴である。本承認によりSRA28は、QLD州北部のファー・ノース・クイーンズランド(FNQ)地域において2020/21年度から、同州ハーバート地区において2021/22年度から栽培が可能となった(図4)。

 SRA29は、既存品種と同等の単収やCCSが期待でき、株出しを繰り返しても単収が保たれるという強みがある。SRA29は、2021/22年度から同州南部地域での栽培が認められた。


表6 豪州の砂糖需給の推移

タイ

2019/20年度、輸出量はかなり大きく減少する見込み
 2019/20年度(10月〜翌9月)のサトウキビ収穫面積は、砂糖の国際価格の低迷により他作物へ転作が活発化したことで、156万ヘクタール(前年度比15.0%減、5月予測から変化なし)とかなり大きく減少すると見込まれる(表7)。加えて、2019年初頭の降雨量が少なく、サトウキビの生育が停滞していることから、サトウキビ生産量は7500万トン(同42.7%減、5月予測から変化なし)と大幅に減少すると見込まれる。

 サトウキビ生産の落ち込みにより、砂糖生産量は878万トン(同43.2%減、5月予測から変化なし)と大幅に減少すると見込まれる。砂糖の減産に伴い輸出余力が低下し、輸出量は860万トン(同14.9%減、5月予測から変化なし)とかなり大きく減少すると見込まれる。

2019/20年度の焼きキビの割合は、全体の50%以下に
 サトウキビ・砂糖委員会事務局(OCSB)が公表した2019/20年度の製糖実績によると、同年度に製糖工場で圧搾されたサトウキビは、干ばつの影響を受けて前年度比42.8%減の7489万トンとなった。このうち、焼き畑(注1)で収穫されたサトウキビ(以下「焼きキビ」という)は3718万トン(同53.5%減)、生のまま収穫されたサトウキビは3771万トン(同26.0%減)と、焼きキビの減少率が生のまま収穫されたサトウキビを上回った。また、同年度の焼きキビの割合は49.6%(同11.5ポイント減)と50%を下回ったものの、同政府が2019年2月の規制導入時に発表した焼きキビの削減目標割合である30%には届かなかった(注2)。 2019/20年度の平均的なCCSは前年度と同程度の12.7であったが、サトウキビの大幅な減産が響き、砂糖生産量は同43.1%減の829万トンと大幅に減少した。また、製糖工場の平均稼働期間も、前年度の131日間から43日も短い88日間に短縮され、通常より1カ月以上早い3月末に操業を終了した。

注1)サトウキビの梢頭部や葉を燃やした後に収穫する方法。
(注2)タイ政府は2019年2月以降、焼き畑による大気汚染を防止するため、製糖業者に対し焼き畑で収穫されたサトウキビの取引量を制限するなどの規制を行っている。 詳細は、「砂糖類・でん粉情報」2019年6月号「タイにおける砂糖産業の動向」(https://www.alic.go.jp/joho-s/joho07_001986.html)を参照されたい。

表7 タイの砂糖需給の推移

(参考) タイの砂糖(粗糖・精製糖別)の輸出量および輸出単価の推移

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