4. 日本の主要輸入先国の動向（2020年7月時点予測）

　近年、日本の粗糖（甘しゃ糖・分みつ糖〈HSコード1701.14−110〉および甘しゃ糖・その他〈同 1701.14−200〉の合計）の主要輸入先国は、豪州、タイ、南アフリカ、フィリピンで、2019年の主要輸入先国ごとの割合を見ると、豪州が81.4％（前年比10.2ポイント増）、タイが18.6％（同9.5ポイント減）となっており、2カ国でほとんどを占めている（財務省「貿易統計」）。

　以上により、この2カ国の動向については毎月報告し、南アフリカおよびフィリピンの動向についてはそれぞれ半年に1回の頻度で報告する（南アフリカは3月号および10月号、フィリピンは4月号および9月号を予定）。

2020/21年度、砂糖生産量はやや増加する見込み
　2020/21年度（4月〜翌3月）のサトウキビの収穫面積は、36万ヘクタール（前年度比1.0％減、6月予測より変化なし）とわずかに減少すると見込まれる（表6）。サトウキビ生産量は、記録的な干ばつに見舞われた2019年ほど極端な天候にはならないとの前提の下、3200万トン（同6.5％増、6月予測より変化なし）とかなりの程度増加すると見込まれる。

　砂糖生産量は、前年度の減産からの反動が押し上げ要因となり、449万トン（同4.7％増、6月予測より変化なし）とやや増加すると見込まれる。消費量の落ち込みを輸出促進によって相殺すると予測されることから、輸出量は350万トン（同4.6％増、6月予測より変化なし）とやや増加すると見込まれる。

サトウキビ栽培における水銀含有農薬の使用禁止が1年後に迫る
　6月2日に発出された豪州農薬・動物医薬品局（APVMA）の告示によると、APVMAは国内での水銀含有農薬の登録を5月26日付で取り消した。水銀は、たとえ低濃度での使用であっても、人の健康や環境に損害を与えることが多くの研究で明らかにされている。1900年代初頭に、水銀は農薬成分として普及したが、1970年代に世界中で中毒事件が続出したことを契機に、ほとんどの国で同農薬の生産や農作物への使用が禁止された。豪州国内においてもほとんどの用途で同農薬の使用が禁止されたが、例外的にクイーンズランド州、ニューサウスウェールズ州、西オーストラリア州、北部準州でのサトウキビ栽培にのみ使用が認められていた。

　現地報道によると、サトウキビ産業では、約80％の生産者が黒腐病の防除薬剤として同農薬を使用している状況にある。今回の決定を受け、国内での同農薬の生産は終了されるものの、緩和措置として登録取消から1年間は、既存のサトウキビ農家は同農薬を購入し、使用できることとなった。

2019/20年度、輸出量はかなり大きく減少する見込み
　2019/20年度（10月〜翌9月）のサトウキビ収穫面積は、砂糖の国際価格の低迷により他作物への転作が活発化したことで、156万ヘクタール（前年度比15.0％減、6月予測より変化なし）とかなり大きく減少すると見込まれている（表7）。加えて、2019年初頭の降雨量が少なく、サトウキビの生育が停滞していることから、サトウキビ生産量は7489万トン（同42.8％減、6月予測より減少）と大幅に減少すると見込まれる。

　サトウキビ生産の落ち込みにより、砂糖生産量は881万トン（同43.0％減、6月予測より増加）と大幅に減少すると見込まれる。砂糖の減産に伴い輸出余力が低下し、輸出量は863万トン（同14.7％減、6月予測より増加）とかなり大きく減少すると見込まれる。

新型コロナウイルス感染症の影響で、国内外で砂糖需要が減少
　タイ製糖協会（TSMC）は7月4日、国内市場における砂糖需要が落ち込んでいることを公表した。需要減退の原因として、COVID-19の拡大による経済活動の縮小を挙げ、同国ではCOVID-19の感染拡大が収束しつつも、依然多くの国では拡大が継続し、国際市場全体を見ても砂糖需要が減少傾向にあるとしている。また、2019/20年度（10月〜翌9月）の6月までの9カ月間における同国の砂糖消費量は169万トンとなり、今後の需要も同程度と仮定した場合、同年度全体の砂糖消費量は225万トンと当初の予測から約10％落ち込む見込みとしている。さらに、2020/21年度の生産量についても、干ばつの影響を受けて生産量が大幅に減少した前年度と同様の傾向が続く見込みとし、同国における製糖産業の厳しい状況を明らかにした。

　加えて、今後、タイの製糖業者は製糖事業だけではなく、バイオエタノールやバイオプラスチックなどの付加価値の高い事業にも取り組むことが必要であると述べている。