ニューヨーク粗糖先物相場の2020年10月の推移を見ると(3
月限)、1日は、作付面積の減少などにより、タイでの砂糖生産量が減少するとの懸念から1ポンド当たり13.58セント
(注1)の値を付け、7日には、7カ月ぶりの14セント台となる同14.14セントまで値を上げた。さらに、9日はラニーニャ現象
(注2)によってブラジルのサトウキビ栽培地域で降雨量が減少し、ブラジルでの砂糖生産量も減少するとの見込みから同14.23セントまで上昇した。12日は、ブラジルの降雨予報を受けて同13.84セントと反落したものの、13日は、原油価格の上昇により、同14.01セントと再び14セント台まで値を戻した
(注3)。16日は、ブラジルのサトウキビ栽培地域で、翌週の降雨の可能性が低いとの天気予報を受け、同14.43セントと上昇した。20日は、インド製糖業協会(ISMA)が6月に発表した2020/21年度の砂糖生産量予測を引き上げたことを受けて同14.54セントまで下落した。22日は、ブラジルの降雨量が平年よりも少なく、同国の砂糖生産量が減少するとの懸念から、同14.78セントまで上昇し、28日には、同14.89セントと8カ月ぶりの高値を更新した。30日は、エタノール価格を下支えしていた原油価格の下落と、対ドルでのブラジルレアル安により、前日に続いて下落し同14.36セントと2週間ぶりの安値となった
(注4)。
11月に入ると、2日は、ブラジル、豪州およびグアテマラが異議を申し立てたインド政府の砂糖輸出業者に対する補助金の合法性について、世界貿易機関(WTO)が11月中に裁定を下す可能性もあった状況の中、インドの製糖工場が政府の輸出支援政策の発表を待って、砂糖の輸出を手控えている
(注5)との報道があったことなどから、同14.97セントと高値を付けた。3日は、ブラジルで降雨の予報があったことから、前日の高値から反落し、同14.72セントまで下落した。6日は、ブラジルレアルが対ドルで上昇したことを受け、砂糖価格は終日上昇し、同14.91セントまで上昇した。10日は、インドの砂糖生産量の増加予測に加えて、ブラジルで降雨の予報があったことから、同14.68セントと下落した。11日は、ブラジルサトウキビ産業協会(UNICA)が、10月後半のブラジル中南部の砂糖生産量が前年同期からかなり大きく増加し、製糖に仕向けるサトウキビの割合が上昇したと公表したことなどを受けて、同14.49セントと続落した。16日は、EU最大の砂糖生産国であるフランスの農業省が、
萎黄病や干ばつの影響を受けて今年度のてん菜収穫量を先月予測から下方修正したことなどから、同15.47セントと急騰した。
(注1)1ポンドは約453.6グラム、セントは1米ドルの100分の1。
(注2)太平洋赤道域の日付変更線付近から南米沿岸にかけて、海面水温が平年より低くなる状態が続く現象。
(注3)一般に、原油価格が上昇すると、石油の代替(補填)燃料であるバイオエタノールの需要も上昇する。バイオエタノールの需要が上昇すると、その原料作物(サトウキビ、てん菜、トウモロコシ、キャッサバなど)のバイオエタノール生産への仕向けが増える一方、それらから生産される食品(サトウキビの場合は砂糖)の生産・供給が減ることが想定される。食品用途仕向けの度合いが小さくなるほど需給がひっ迫し、当該食品の価格を押し上げる方向に作用する。
(注4)粗糖は米ドル建てで取引されるため、米ドルに対してレアルが安くなると、相対的にブラジル産粗糖の価格競争力が強まる。世界最大の砂糖輸出国ブラジルの輸出意欲が高まると、需給の緩和につながることから、価格を押し下げる方向に作用する。
(注5)インド政府の2020/21年度における砂糖の輸出政策の経緯については、『砂糖類・でん粉情報』2020年11月号のインドの項「ISMA、2020/21 年度における砂糖の輸出政策の早期発表を首相官邸に要請」(https://www.alic.go.jp/joho-s/joho07_002327.html)も参照されたい。