砂糖 砂糖分野の各種業務の情報、情報誌「砂糖類情報」の記事、統計資料など

ホーム > 砂糖 > 砂糖の国際需給・需給レポート > 3. 世界の砂糖需給に影響を与える諸国の動向(2020年11月時点予測)

3. 世界の砂糖需給に影響を与える諸国の動向(2020年11月時点予測)

印刷ページ

最終更新日:2020年12月10日

3. 世界の砂糖需給に影響を与える諸国の動向(2020年11月時点予測)

2020年12月

 本稿中の為替レートは2020年12月末日TTS相場の値であり、1インドルピー=1.57円である。
ブラジル
2020/21年度、砂糖生産量、輸出量ともに大幅増の見込み
 LMC International(農産物の需給などを調査する英国の民間調査会社)の2020年11月時点の予測によると(以下、特段の断りがない限り同予測に基づく記述)、2020/21年度(4月〜翌3月)のサトウキビ収穫面積は、原油の国際価格の動きに不安定さが見られ、バイオエタノール需要にも不透明感があるものの、バイオ燃料など再生可能エネルギーの生産・利用の促進を図るブラジルの国家政策「RenovaBio」の本格始動が生産意欲を後押しする可能性があることも踏まえ、873万ヘクタール(前年度比0.9%増)とわずかに増加すると見込まれる(表2)。サトウキビ生産量は、生育期間を通じて天候がおおむね良好で生育が順調であることから、6億5600万トン(同2.1%増)とわずかに増加すると見込まれる。

 一方、砂糖生産量は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によるバイオエタノール需要の不透明感を背景に、多くの製糖業者が砂糖生産に回帰する動きが見られることから、4394万トン(粗糖換算〈以下、特段の断りがない限り砂糖に係る数量は粗糖換算〉、同38.2%増)と大幅に増加すると見込まれる。この予測の下、ブラジルレアルが米ドルに対して安値圏で推移することで輸出意欲が向上し、輸出量は3385万トン(同66.6%増)と大幅に増加すると見込まれる。

砂糖価格の上昇を背景に、中南部の2021/ 22年度エタノール生産量は減少する見込み
 現地の調査会社によると、7月から9月にかけての極度な乾燥気候など、この数カ月間、国内のほとんどの地域で例年と比較して降雨が少ない状況が続き、2021/22年度(来年度)産のサトウキビの作付時期に遅れが生じ、一部で生育に支障をきたしている。サトウキビの生育期間の確保のために、収穫期を遅らせるなどの対策を講じるものの、これにより来年度は、サトウキビの収穫量と砂糖生産量が今年度よりやや減少すると予測されている。

 同社は、サンパウロ州などの同国中南部地域におけるサトウキビ収穫量は、2020/21年度(今年度)の5億9600万トンに対し、来年度は5億7500万トンに減少するとし、また、同地域の製糖工場の砂糖生産量は今年度の3800万トンに対し、来年度は3600万トンに減少すると予測している。

 しかし、砂糖価格の指標となるニューヨーク先物相場が9月中旬以降急回復したこととブラジルレアル安を背景とした輸出の増加により、同国内の砂糖価格も記録的な高水準にあり、砂糖生産量が減少しても良好な利益率が期待できることから、製糖工場の来年度の収益は十分確保できるとみられている。

 また、砂糖価格が高水準であり、製糖工場がバイオエタノールよりも砂糖を優先して生産を続けると見込まれることから、ブラジルでは今年度に引き続き、来年度もエタノール生産量が減少すると見込まれており、中南部地域における来年度のエタノール生産量は、前年度比2.4%減の2885万キロリットル(トウモロコシ由来のエタノールを含む)になると予測されている。

10月の砂糖輸出量、過去最多を記録
 ブラジル農務省(MAPA)は11月12日、10月の砂糖輸出量が過去最多の420万トン(前年同月比2.2倍)を記録したと発表した。同月の砂糖輸出額も、前年同月比2.2倍の12億ドル(1272億円)と大幅に増加した。最も輸出量が多かった輸出先国は中国で、3億1174万ドル(330億4444万円)と全体の輸出額の約4分の1を占めた。その他の主な輸出先はインド(輸出額1億782万ドル〈114億2892万円〉)、バングラデシュ(同8507万ドル〈90億1742万円〉)、米国(同6195万ドル〈65億6670万円〉)であった。業界関係者によると、ブラジルの砂糖生産量の増加、輸出競合国からの砂糖供給量の減少や、ブラジルレアルが米ドルに対して安値で推移し、ブラジル産糖の価格競争力が高まっていることが砂糖の輸出量を押し上げる要因になっている。
表2
(参考)ブラジル
インド
2020/21年度、砂糖生産量はかなり大きく増加し、輸出量はかなり大きく減少する見込み
 2020/21年度(10月〜翌9月)のサトウキビの収穫面積は、豪雨による大規模な圃場(ほじょう)の浸水被害に見舞われた昨年度からの反動で、473万ヘクタール(前年度比6.5%増)とかなりの程度増加すると見込まれる(表3)。サトウキビの主産地であるマハラシュトラ州では、年間降雨量が集中するモンスーン期(6〜9月)における降雨が順調であることから、ダムの水位回復により、サトウキビ生産量は3億9912万トン(同15.2%増)とかなり大きく増加すると見込まれる。

 砂糖生産量は3397万トン(同15.4%増)とかなり大きく増加すると見込まれる。今年度はコロナ禍における厳しい財政状況を理由に砂糖の輸出政策の発表が遅れており、国内の製糖業者は粗糖の輸出契約の締結が難しい状況にある中、精製糖業者は粗糖輸入量を増やしており、輸出向け精製糖の増産が予想されることから、輸出量は693万トン(同11.4%減)とかなり大きく減少すると見込まれるものの、前月予測から上方修正された。

内閣経済対策委員会、サトウキビの搾汁や糖みつ由来のエタノール買い取り価格を引き上げ
 インドの政策決定機関である内閣経済対策委員会(CCEA:首相が議長を務める)は10月29日、2020/21エタノール年度(12月〜翌11月)における、公営石油販売会社(OMC)が、サトウキビの搾汁や糖みつなどから生産したエタノールを製糖業者などから買い取る際の価格を発表した。サトウキビの搾汁(砂糖やシロップを含む)由来のエタノールについては、現行1リットル当たり59.48ルピー(93円)から62.65ルピー(98円)へ、Bモラセス(注)由来のエタノールについては同54.27ルピー(85円)から57.61ルピー(90円)へ、Cモラセス由来のエタノールについては43.75ルピー(69円)から45.69ルピー(72円)にそれぞれ引き上げられた。また、同年度から、エタノールにかかる物品サービス税(GST)や輸送費を、OMCが負担するようになった。CCEAは、今回のエタノールの買い取り価格の引き上げなどにより、製糖業者の経営状態の改善が期待されるとともに、農家へのサトウキビ代支払いの遅延改善にも効果があるだろうとしている。

 同国では2014年からエタノールの買い取り価格の設定を開始しており、2019/20年度にOMCが買入れたエタノールの量は、2013/14年度の5.1倍に相当する約195万キロリットルとなった。

(注)砂糖の製造工程では、搾汁を煮詰めて結晶化させる。これを遠心分離機で脱水し、砂糖の結晶と糖みつを分離する。このとき得られた糖みつをAモラセスと呼び、Aモラセスにはまだ砂糖が含まれているので再度煮詰め、脱水する作業を繰り返す。このとき脱水して取り出した糖みつをBモラセス、Bモラセスを煮詰めて脱水し、取り出した糖みつをCモラセスと呼ぶ。こうした工程により、各モラセスに含まれる砂糖の量はA>B>Cの順に多く、搾汁のうち回収可能な砂糖はAモラセスに約23%、Bモラセスに約 10%がそれぞれ残留している。
表3
(参考)インド
中国
2020/21年度、輸入量はわずかに増加する見込み
 2020/21年度(10月〜翌9月)のサトウキビの収穫面積は119万ヘクタール(前年度比1.0%増)とわずかに増加すると見込まれる(表4)。また、ここ数カ月、サトウキビの主産地である広西チワン族自治区と雲南省の降雨量が多く、12月の収穫に向けてサトウキビが順調に生育するとの予想から、サトウキビ生産量は7520万トン(同1.0%増)とわずかに増加すると見込まれる。

 また、同年度のてん菜の収穫面積は、内モンゴル自治区において、てん菜の買い取り価格が引き上げられたことから、生産者が作付面積を拡大し、収穫面積は23万ヘクタール(同7.8%増)とかなりの程度増加し、てん菜生産量は1145万トン(同5.1%増)とやや増加すると見込まれる。

 これら原料の増産に伴い、砂糖生産量は1142万トン(同1.4%増)とわずかに増加すると見込まれる。輸入量は、ブラジルからの輸入が10月に入っても増加基調で持続していることを踏まえて前月予測から上方修正され、667万トン(同1.6%増)とわずかに増加すると見込まれる。

中国政府、砂糖を含む7品目を豪州から輸入禁止か
 香港の現地報道は11月3日、中国政府が砂糖を含む豪州産7品目を11月6日から輸入禁止対象とする旨を輸入業者に通達した、と関係者の話として報じた。これに対し中国当局は、政府は輸入を強制的に禁止しておらず、輸入業者独自の対応であると否定したものの、豪州の関連業界に波紋が広がっている。豪州のサイモン・バーミンガム豪州貿易観光投資大臣によると、一部の品目については6日以降も中国の税関を通過しているという。同大臣は、輸入が一律に禁止されているという噂が広まっている状況を注視していきたいとし、中国当局が自らの言葉に忠実であることを望むと述べた。豪州と中国との外交関係は、豪州が2020年4月に新型コロナウイルスの発生源に関する国際的調査を求めたことをきっかけに急速に悪化しており、すでに大麦やワイン、石炭で、輸入制限や高関税措置が取られている。

 2019/20年度(10月〜翌9月)に中国が豪州から輸入した粗糖(HSコード:170114)は9万1360トン、精製糖(HSコード:170199)は1860トンであった。
表4
(参考)中国
EU
2020/21年度の輸出量は、大幅に減少する見込み
 2020/21年度(10月〜翌9月)のてん菜の収穫面積は148万ヘクタール(前年度比2.5%減)とわずかに減少すると見込まれる(表5)。てん菜生産量は、7月の干ばつに加えて9月後半から10月の降雨が日照不足をもたらしたことで、9892万トン(同9.1%減)とかなりの程度減少すると見込まれる。

 EU最大の砂糖生産国であるフランスで特に流行している萎黄病のほか、天候不順やカビが原因の褐斑病の発生によっても根中糖分が低下し、砂糖生産量は1619万トン(同4.7%減)とやや減少すると見込まれる。輸出量は砂糖の減産に伴い、140万トン(同26.1%減)と大幅に減少すると見込まれる。

フランス上院、ネオニコチノイド系農薬の緊急使用を認める法案を可決
 現地報道によると、フランス元老院(上院)は11月4日、てん菜種子のコーティングにネオニコチノイド系農薬を使用することを2021年から最大2023年まで許可する法案を可決した。同国では2018年以降、その散布がミツバチなどの生態系に影響を及ぼすとして、同農薬の使用が禁止されている(注)が、アブラムシによって媒介されるウイルス性の病害である萎黄病が全国的に流行していることを受けて、生産者団体は同農薬の緊急使用を許可するよう政府に要請していた。

 しかし、11月10日に70人以上の議員が同法案の合憲性の審査を憲法評議会に付託したことで、12月15日に同法案が公布されるかどうか不透明な状況となっている。議員らは同法案について、(1)同国で数年前から確認されている、同農薬の使用による鳥類や昆虫に見られた生体数の減少について説明がないこと(2)健康や環境に関する憲法よりも企業活動の自由を不当に優遇していること(3)生態系に大規模かつ不可逆的な汚染を決定づけており、憲法で規定された環境保護の義務に反していること―などを指摘している。

(注)同農薬の使用をめぐる経緯については、『砂糖類・でん粉情報』2020年9月号のEU・英国の項「フランス、ネオニコチノイド系農薬の緊急使用を認める方向」(https://www.alic.go.jp/joho-s/joho07_ 002293.html)を参照されたい。
表5
(参考)EU
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
Tel:03-3583-9272