2020/21年度の輸出量は、大幅に減少する見込み
2020/21年度(10月〜翌9月)のてん菜の収穫面積は148万ヘクタール(前年度比2.5%減)とわずかに減少すると見込まれる(表5)。てん菜生産量は、7月の干ばつに加えて9月後半から10月の降雨が日照不足をもたらしたことで、9892万トン(同9.1%減)とかなりの程度減少すると見込まれる。
EU最大の砂糖生産国であるフランスで特に流行している萎黄病のほか、天候不順やカビが原因の褐斑病の発生によっても根中糖分が低下し、砂糖生産量は1619万トン(同4.7%減)とやや減少すると見込まれる。輸出量は砂糖の減産に伴い、140万トン(同26.1%減)と大幅に減少すると見込まれる。
フランス上院、ネオニコチノイド系農薬の緊急使用を認める法案を可決
現地報道によると、フランス元老院(上院)は11月4日、てん菜種子のコーティングにネオニコチノイド系農薬を使用することを2021年から最大2023年まで許可する法案を可決した。同国では2018年以降、その散布がミツバチなどの生態系に影響を及ぼすとして、同農薬の使用が禁止されている
(注)が、アブラムシによって媒介されるウイルス性の病害である萎黄病が全国的に流行していることを受けて、生産者団体は同農薬の緊急使用を許可するよう政府に要請していた。
しかし、11月10日に70人以上の議員が同法案の合憲性の審査を憲法評議会に付託したことで、12月15日に同法案が公布されるかどうか不透明な状況となっている。議員らは同法案について、(1)同国で数年前から確認されている、同農薬の使用による鳥類や昆虫に見られた生体数の減少について説明がないこと(2)健康や環境に関する憲法よりも企業活動の自由を不当に優遇していること(3)生態系に大規模かつ不可逆的な汚染を決定づけており、憲法で規定された環境保護の義務に反していること―などを指摘している。
(注)同農薬の使用をめぐる経緯については、『砂糖類・でん粉情報』2020年9月号のEU・英国の項「フランス、ネオニコチノイド系農薬の緊急使用を認める方向」(https://www.alic.go.jp/joho-s/joho07_ 002293.html)を参照されたい。