砂糖類の国内需給

　農林水産省は、「砂糖及びでん粉の価格調整に関する法律」（昭和40年法律第109号）により、四半期ごとに砂糖および異性化糖の需給見通しを公表している。9月に「令和2砂糖年度における砂糖及び異性化糖の需給見通し（第1回）」を公表した（詳細は2020年11月号参照）。

作付面積は前年産からわずかに増加したものの、生産量はやや下回る見込み
　北海道農政部生産振興局農産振興課は、令和2年10月15日に「令和2年産てん菜の生産見込数量（令和2年8月20日現在）」を公表した。

　作付面積は、5万6749ヘクタール（前年産比0.7％増）と、前年産に比べて405ヘクタール増加した（表4）。地域別に見ると、十勝地域が2万4773ヘクタール（同0.1％増）、オホーツク地域が2万3151ヘクタール（同0.5％増）、道央地域4439ヘクタール（同5.8％増）、道南地域4386ヘクタール（同0.9％増）とすべての地域で前年産を上回った。

　令和2年産の1ヘクタール当たりの収量は、生育期に少雨による干ばつ傾向で推移する地域が見られたことから、67.2トン（同5.0％減）と、過去最高であった前年の収量（70.7トン）を下回る見込みである。しかしながら、病害虫などの発生が少なかったこともあり、例年の平均単収^（注）（63.7トン）を引き続き上回る見込みである。なお、令和2年産のてん菜生産量は381万2000トン（同4.4％減）を見込んでいる。

　また糖分は、昨年に引き続き、てん菜が糖分を蓄える登熟期の気温が平年に比べ高温で推移したことから、令和元年産（16.8％）と比べ同水準かやや低下する見込みである。

　製糖工場では、例年通り10月上旬ごろから操業を開始したが、今年は新型コロナウイルス感染症（COVID-19）に細心の注意を払いながらの操業となり、安定稼働に向けて各工場が独自で感染症対策を実施するなど徹底した生産管理体制を整えている。

（注）直近7カ年（令和元年〈2019年〉〜平成25年〈2013年〉）の1ヘクタール当たりの収量のうち最高、最低を除く5カ年分の平均。

【粗糖の輸入動向】
9月の輸入量は前年同月から大幅に減少
　財務省「貿易統計」によると、2020年9月の甘しゃ糖・分みつ糖（HSコード 1701.14-110）および甘しゃ糖・その他（同1701.14−200の豪州）の輸入量は、8万7531トン（前年同月比39.9％減、前月比46.4％増）であった（図1）。

　輸入先国は豪州、南アフリカおよびタイで、国別の輸入量は次の通りであった（図2）。

豪州 　　　　　4万2494トン 　
（前年同月比68.5％減、前月比28.9％減）
南アフリカ 　　　3万41トン 　
（前年同月および前月輸入実績なし）
タイ 　　　　　　1万4996トン 　
（前年同月比40.1％増、前月輸入実績なし）

　2020年9月の甘しゃ糖・分みつ糖の1トン当たりの輸入価格は、3万7074円（前年同月比11.8％高、前月輸入実績なし）であった（図3）。

南アフリカ 　　　3万4618円 　
（前年同月および前月輸入実績なし）
タイ 　　　　　　　4万1993円 　
（前年同月比26.6％高、前月輸入実績なし）

　また、同月における甘しゃ糖・その他の豪州からの高糖度原料糖の1トン当たりの輸入価格は、3万7787円（前年同月比5.2％高、前月比5.7％高）であった（図3）。

【含みつ糖の輸入動向】
9月の輸入量は前年同月から大幅に減少
　財務省「貿易統計」によると、2020年9月の含みつ糖（HSコード 1701.13-000、1701.14-190）の輸入量は、130トン（前年同月比32.6％減、前月比61.2％減）であった（図4）。

　輸入先国は中国およびフィリピンの2カ国で、国別の輸入量は次の通りであった（図5）。

中国 　　　　　　95トン 　
（前年同月比37.5％減、前月比46.3％減）
フィリピン 　　　35トン 　
（同2.7倍、同34.0％減）

　2020年9月の1トン当たりの輸入価格は、12万9169円（前年同月比4.0％高、前月比28.9％高）であった（図6）。

　国別の1トン当たりの輸入価格は、次の通りであった。

中国 　　　　　　12万684円 　
（前年同月比2.7％高、前月比3.1％高）
フィリピン 　　　15万2200円 　
（同34.6％安、同18.6％高）

【加糖調製品の輸入動向】
9月の加糖調製品の輸入量は前年同月からわずかに減少
　財務省「貿易統計」によると、2020年9月の加糖調製品の輸入量は、3万8558トン（前年同月比1.6％減、前月比3.0％増）であった（図7）。

　品目別の輸入量は、表5の通りであった。

10月の移出量は前年同月からかなりの程度減少
　2020年10月の異性化糖の移出量は、5万8106トン（前年同月比10.3％減、前月比9.1％減）であった（図8）。

　同月の規格別の移出量は、次の通りであった（図9）。

果糖含有率40％未満 　　　　　　　382トン 　
（前年同月比10.8％減、前月比17.8％増）
同40％以上50％未満 　　　　1万6607トン 　
（同4.3％減、同1.4％減）
同50％以上60％未満 　　　　　4万433トン 　
（同12.7％減、同11.6％減）
同60％以上 　　　　　　　　　　　　　684トン 　
（同0.8％減、同31.9％減）

【市場価格】
砂糖、異性化糖ともに前月と同水準で推移
　10月の糖種別・地域別の砂糖価格（日経相場）は、次の通りであった。

上白糖（大袋）
東京 　　　　　　　　　1キログラム当たり187〜188円
大阪 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　同187〜188円
名古屋 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　同191円
関門 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　同191円

上白糖（小袋）
東京 　　　　　　　　　1キログラム当たり199〜202円
大阪 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　同202円

本グラニュー糖（大袋）
東京 　　　　　　　　　1キログラム当たり192〜193円
大阪 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　同192〜193円
名古屋 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　同196円

ビート・グラニュー糖（大袋）
東京 　　　　　　　　　1キログラム当たり187〜188円
大阪 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　同187〜188円
名古屋 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　同189円

　10月の異性化糖の価格（日経相場、大口需要家向け価格、東京、タンクローリーもの、JAS規格品、水分25％）は、次の通りであった。

果糖分42％もの 　　1キログラム当たり131〜132円
果糖分55％もの 　　　　　　　　　　　　同137〜138円

【小売価格】
10月の上白糖小袋の地域間の価格差は最大で23.1円
　KSP−POSデータ（全国535店舗）によると、スーパーにおける10月の上白糖小袋（1キログラム）の平均小売価格は、192.3円（前年同月差2.2円高、前月差3.6円高）であった。最も高かったのは中国・四国で、最も安かった関東などとの価格差は23.1円であった。

　同月の地域別^（注）の平均小売価格は、次の通りであった（表6）。

（注）地域の内訳は、次の通りである（以下同じ）。 関東など：茨城県、栃木県、群馬県、長野県、山梨県、静岡県 首都圏：東京都、千葉県、埼玉県、神奈川県 中　部：新潟県、富山県、石川県、福井県、岐阜県、三重県、愛知県 関　西：大阪府、兵庫県、京都府、滋賀県、和歌山県、奈良県

10月のグラニュー糖小袋の地域間の価格差は最大で73.5円 　
　KSP−POSデータ（全国535店舗）によると、スーパーにおける10月のグラニュー糖小袋（1キログラム）の平均小売価格は、244.2円（前年同月差0.8円高、前月差1.1円高）であった。最も高かったのは東北で、最も安かった北海道との価格差は73.5円であった。

　同月の地域別の平均小売価格は、次の通りであった（表7）。

10月の三温糖小袋の地域間の価格差は最大で55.3円
　KSP−POSデータ（全国535店舗）によると、スーパーにおける10月の三温糖小袋（1キログラム）の平均小売価格は、228.2円（前年同月差4.9円安、前月差6.9円安）であった。最も高かったのは東北で、最も安かった九州・沖縄との価格差は55.3円であった。

　同月の地域別の平均小売価格は、次の通りであった（表8）。

【購入金額および購入量】
9月の砂糖の支出金額は前年同月と比べかなりの程度下落
　総務省「家計調査」によると、2020年9月における100世帯当たりの砂糖の購入頻度は30、1世帯（2人以上）当たりの支出金額は75円（前年同月比6.3％安、前月比7.4％安）であった（図10）。また、同月の1世帯当たりの砂糖の購入数量は、317グラム（同12.7％減、同13.4％減）であった（図11）。