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食品メーカーにおける加糖調製品およびその他甘味料の利用形態

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最終更新日:2021年2月10日

食品メーカーにおける加糖調製品およびその他甘味料の利用形態
〜令和元年度甘味料およびでん粉の仕入動向等調査の概要(2)〜

2021年2月

調査情報部

【要約】

 加糖調製品およびその他甘味料の仕入量は総じて安定しているが、需要の減少などにより「減少」とする回答が見られた。仕入価格については、その他甘味料は総じて安定している一方、加糖調製品については、為替の変動や主原料の生産量の変動などにより「上昇」または「下落」と回答する企業が一定数存在した。今後の仕入見込みについては、加糖調製品、その他甘味料ともに、「横ばい」が過半を占めたが、全ての品目で「減少」とする回答が見られた。

はじめに

 加糖調製品は、主に砂糖と他の原料を混合した食品加工原料を指し、多くはパン、飲料、チョコレート菓子、和菓子、水産練り製品などの食品製造で使用される。種類は、ソルビトール調製品、ココア調製品、ミルク調製品、加糖あん(調製した豆)、小麦粉調製品などがあり、日本で使用されるもののほとんどはシンガポール、韓国、中国、タイなどの海外から輸入されている。国内の甘味料全体の需要が減少傾向の中、加糖調製品の需要量は微増減を繰り返しながら近年は横ばい傾向で推移している(図1)。

 果糖は、でん粉由来の甘味料で、低温であるほど甘みが強まることに加え、低温下でも結晶化しにくい特性があることからアイスクリームなどの冷菓や清涼飲料などの製造で用いられることが多い。ソルビトールは、糖アルコール類の一つで、タンパク質やアミノ酸と加熱しても変色しないことや消化・吸収されにくいなどの性質を持つことから加工食品や低カロリー甘味料としても使用されている。

 当機構では、実需者の甘味料に対するニーズを把握し、甘味料の需給動向の判断に資す基礎的な情報を収集するため、食品製造事業者を対象としたアンケート調査を毎年実施している。

 本稿では、令和元年度を対象に実施した「甘味料およびでん粉の仕入動向等調査」のうち、加糖調製品(ソルビトール調製品、ココア調製品、ミルク調製品、加糖あん、小麦粉調製品)およびその他甘味料(果糖〈結晶果糖〉、ソルビトール)の調査結果について報告する。なお、砂糖類および人工甘味料については本誌2021年1月号を参照されたい。また、天然でん粉および化工でん粉の調査結果については次号報告予定である。

 

1.調査の方法

(1)調査期間

令和2年9〜10月

(2)調査対象

甘味料を使用する食品製造事業者

(3)調査項目

令和元年度(4月〜翌3月)の加糖調製品およびその他甘味料の用途、仕入状況などに関する事項

(4)調査方法

郵送などによる調査票の発送および回収を実施

(5)回収状況

配布企業数     240社
回収企業数      65社
調査票回収率   27.1%

(6)集計区分
 

(7)集計結果についての留意事項

ア.図中の「n」は有効回答数を表す。
イ.端数処理の関係により、図中の内訳の合計が100%にならないことがある。
ウ.「不明・無回答」は比較対象から除外する。
エ.ソルビトールは食品の他、化粧品などの日用品や医療品などの用途で幅広く使用されているが、
  本調査は食品製造企業のみを対象に集計を行ったことに留意されたい。

(8)調査企業の概要

 加糖調製品を使用する企業50社およびその他甘味料を使用する企業37社の資本金の額と業種のそれぞれの構成比は、図2および図3の通り。

(注1)複数の加糖調製品を使用する企業があるため、1(6)の集計区分の内訳の合計と一致しない。
(注2)複数のその他甘味料を使用する企業があるため1(6)の集計区分の内訳の合計と一致しない。

 

 

2.集計結果

(1)加糖調製品

ア.加糖調製品の用途

 加糖調製品の用途を見ると、「和生菓子・洋生菓子」が25件と最も多く、次いで「スナック菓子・米菓・油菓子・ビスケット類」が22件、「パン類(菓子パンを含む)」が19件と続く(図4)。その他に分類される用途には、冷凍食品やシリアルなどが挙げられた。

 また、種類別に用途数を見ると、ミルク調製品が12種類と最も多くの用途で使用されており、次いでソルビトール調製品が10種類、ココア調製品および小麦粉調製品が6種類、加糖あんが5種類となっている。ミルク調製品は「アイスクリーム類」、ソルビトール調製品は「キャンディー類・グミ・チューインガム」、ココア調製品は「チョコレート類」、小麦粉調製品および加糖あんは「和生菓子・洋生菓子」への使用割合がそれぞれ最多であった。



 
イ.加糖調製品を使用する商品の数

 加糖調製品を使用する商品の数を種類別に見ると、ソルビトール調製品、ココア調製品、加糖あんおよび小麦粉調製品は1企業当たり「5点以下」が最多であった(図5)。ミルク調製品は「6〜20点」が最も多かったが、「101点以上」も比較的多く見られた。



 
ウ.加糖調製品を使用する理由

 加糖調製品を使用する理由としては、前年度調査と同様に「製造原価(製造コスト)を抑えるため」が最も多かった(図6)。次いで「品質が安定しているため」「自社で調製する技術や設備を有していないため」という回答が多かった。

 種類別に見ると、加糖あんは「自社で調製する技術や設備を有していないため」が、加糖あん以外の調製品は「製造原価(製造コスト)を抑えるため」が使用理由として最も多かった。



 
エ.仕入量の動向

(ア)直近1年間の仕入量

 令和元年度の仕入量を見ると「50トン未満」が26%で最も多く、次いで「50トン以上200トン未満」(16%)、「1000トン以上2000トン未満」(13%)、「500トン以上1000トン未満」(11%)となった(図7)。

 種類別に見ると、ソルビトール調製品は「500トン以上1000トン未満」、ココア調製品は「50トン未満」「50トン以上200トン未満」が同数で最も多かった(図8)。ミルク調製品は「50トン未満」「200トン以上500トン未満」が同数で多く、加糖あんおよび小麦粉調製品については「50トン未満」が最も多くなっている。

 

 

(イ)前年度と比較した仕入量の動向

 平成30年度と比較した令和元年度の仕入量の動向は、いずれの種類も「横ばい」が約半数を占めた(図9)。ソルビトール調製品では「大幅に増加」「やや増加」が3割程度、加糖あんにおいては「やや増加」が2割程度を占めた一方、ミルク調製品および加糖あんにおいて、前年度調査では回答の見られなかった「大幅に減少」が1割程度を占めた。ココア調製品については、前年度調査では「大幅に増加」「やや増加」が4割以上であったが、今年度調査では1割程度にとどまった。

 仕入量の増減の理由としては「需要の変動による商品の出荷数の増減」「商品アイテム数の増減」などが挙げられた。


 
(ウ)今後の仕入量の見込み

 今後の仕入量の見込みは、小麦粉調製品を除いたいずれの種類も「横ばい」が6〜8割程度を占めた(図10)。ソルビトール調製品、加糖あんおよび小麦粉調製品については、前年度調査では「やや増加する見込み」の回答が見られたが、今年度調査ではこの回答が見られなかった。ソルビトール調製品および加糖あんでは「やや減少する見込み」「大幅に減少する見込み」が全体の3割程度を占め、小麦粉調製品においては半数を占めている。

 「やや増加する見込み」の理由としては、「需要の増加により商品の出荷数量が増えるため」などが挙げられ、業種では菓子などの製造業であった。一方、「大幅に減少する見込み」「やや減少する見込み」の理由としては、「需要の減少により商品の出荷数量が減るため」「商品アイテム数を減らすため」「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響」などが挙げられ、業種は乳飲料・乳製品、パン、菓子などの製造業などであった。
 

オ.仕入価格の動向

(ア)直近の仕入価格

 1キログラム当たりの仕入価格(令和2年3月時点)を見ると、「100円以上140円未満」が18%で最も多く、次いで「300円以上400円未満」(14%)、「400円以上」(12%)となっている(図11)。

 種類別に見ると、ソルビトール調製品と小麦粉調製品は「100円以上140円未満」が圧倒的に多く、ココア調製品は「140円以上200円未満」が、ミルク調製品は「200円以上240円未満」が最も多い(図12)。加糖あんは「300円以上400円未満」が33%と最多であったが、その他の価格帯も一定数見られ、価格帯が分散されていた。

 

 

(イ)前年度と比較した仕入価格

 平成30年度と比較した令和元年度の仕入価格の動向は、いずれの種類も「横ばい」が最も多く、全ての種類で「やや上昇」の回答が見られた(図13)。ミルク調製品については、「大幅に上昇」「やや上昇」で3割程度を占めた。また、加糖あんを除いた全ての種類で「やや下落」の回答が1割程度見られた。

 「大幅に上昇」「やや上昇」の回答理由としては「仕入先の価格改定」が多く挙げられているが、「主原料の生産量の変動」「為替の変動」といった理由も見られた。業種は、乳飲料・乳製品、菓子が多くパンなどの製造業も見られた。「大幅に下落」「やや下落」の回答の理由としては、「仕入先の価格改定」「為替の変動」などが挙げられ、業種は、パンの製造業が多く、一部に乳飲料・乳製品の製造業も見られた。
 


 
カ.加糖調製品に対する評価

 加糖調製品に対する評価を「満足」「やや満足」「普通」「やや不満」「不満」の5段階評価で尋ねたところ、品質面については、全ての種類で「満足」「やや満足」の合計がおおむね5割程度となった(図14)。また、ソルビトール調製品において「やや不満」の回答が6%見られ、理由としては「製造企業により品質にぶれがあるため」などが挙げられた。

 調達面については、ソルビトール調製品、ココア調製品、小麦粉調製品では「満足」「やや満足」の合計が過半数を超えたが、ミルク調製品および加糖あんは5割弱にとどまった(図15)。また、加糖あんにおいて「やや不満」の回答が6%見られ、理由としては「国産の小豆の供給が不安定であるため」などが挙げられた。なお、これら調製品において、各調製品から砂糖への切り替えの意向に関する問いについては、「切り替え意向は無い」という回答が多くを占めた一方、「砂糖の仕入価格によっては切り替え意向あり」「商品の見直しによっては砂糖への切り替え意向あり」などの回答も見られた。

 

 

(2)その他甘味料

ア.その他甘味料の用途

 その他甘味料の用途を見ると、「水産練り製品」が8件で最も多く、次いで「スナック菓子・米菓・油菓子・ビスケット類」が7件、「和生菓子・洋生菓子」が5件と続いた(図16)。

 また、種類別の用途数を見ると、果糖は「はっ酵乳・乳酸菌飲料」「スナック菓子・米菓・油菓子・ビスケット類」など14種類、ソルビトールは「水産練り製品」「スナック菓子・米菓・油菓子・ビスケット類」「和生菓子・洋生菓子」など12種類であった。その他に分類される用途には、冷凍食品やミント系のタブレット菓子、即席麺、シリアルなどが挙げられた。



イ.その他甘味料を使用する商品の数

 その他甘味料を使用する商品の数を種類別に見ると、果糖は「6〜10点」「11~20点」が同数で、これらを合計すると半数を占めた(図17)。ソルビトールは「5点以下」が最も多い一方、「101点以上」という回答も見られ、使用する商品数が多いこともうかがえる。

 

ウ.その他甘味料を使用する理由

 その他甘味料を使用する理由としては、「甘さを抑えるため」が8件と最多である。次いで、「離水を防ぐため」「商品を日持ちさせるため」「商品に風味を加えるため」が同数で6件、「商品の付加価値を高めるため」「口当たりを良くするため」「甘味料そのものの味、風味が良いため」が同数で5件と続く(図18)。

 種類別に見ると、果糖は「甘味料そのものの味、風味が良いため」「商品に風味を加えるため」「商品の付加価値を高めるため」「口当たりを良くするため」が主な理由であり、ソルビトールについては「甘さを抑えるため」「商品を日持ちさせるため」「離水を防ぐため」が主な理由であった。


エ.仕入量の動向

(ア)直近1年間の仕入量

 令和元年度の仕入量を見ると、「5トン以上30トン未満」が21%、次いで「1トン以上5トン未満」「90トン以上」が同数で19%となっている(図19)。

 種類別に見ると、果糖は「30トン以上60トン未満」「90トン以上」が同数で21%と最も多く(図20)、ソルビトールは「5トン以上30トン未満」が最も多く、次いで「1トン以上5トン未満」が21%となったが、他の仕入量も一定数存在している。

 

 

(イ)前年度と比較した仕入量の動向

 平成30年度と比較した令和元年度の仕入量の動向は、ともに「横ばい」が5割程度を占め、比較的安定しているが、「やや減少」「大幅に減少」がともに2〜3割程度を占めており、前年度調査より増加した(図21)。

 「大幅に増加」「やや増加」の理由としては、「需要の増加により商品の出荷数量が増えたため」「新商品を開発したため」が挙げられ、業種はパン、菓子の製造業であった。「大幅に減少」「やや減少」の理由としては「需要の減少により商品の出荷数量が減ったため」「商品アイテム数を減らしたため」「COVID-19の影響」などが挙げられ、業種としては清涼飲料・酒類、乳飲料・乳製品、水産練り製品、菓子の製造業などであった。
 

(ウ)今後の仕入量の見込み

 今後の仕入量の見込みは、ともに「横ばい」が最多となった(図22)。また、「やや減少する見込み」「大幅に減少する見込み」が果糖では4割程度、ソルビトールでは2割程度を占めており、前年度調査より増加した。前年度調査と同様に、「大幅に増加する見込み」と回答した企業は見られなかったが、ソルビトールにおいて前年度調査では見られなかった「やや増加する見込み」の回答が4%見られた。

 「やや増加する見込み」の理由としては、「需要の増加により商品の出荷数量が増えるため」などが挙げられ、業種は菓子、乳飲料・乳製品の製造業であった。「大幅に減少する見込み」「やや減少する見込み」の理由としては「需要の減少により商品の出荷数量が減るため」「商品アイテム数を減らすため」「COVID-19の影響」などが挙げられ、業種は清涼飲料・酒類、乳飲料・乳製品、菓子などの製造業であった。

 

オ.仕入価格の動向

(ア)直近の仕入価格


 1キログラム当たりの仕入価格(令和2年3月時点)を見ると、果糖は「200円以上250円未満」が43%、「200円未満」「250円以上300円未満」いずれも同数で14%であった(図23)。ソルビトールは、「130円以上150円未満」「200円以上」がいずれも同数で25%、次いで「110円未満」「110円以上130円未満」「150円以上200円未満」がいずれも同数で11%であった。


 
(イ)前年度と比較した仕入価格

 平成30年度と比較した令和元年度の仕入価格の動向は、ともに「横ばい」が8割程度と圧倒的に多く、安定した価格推移になっている(図24)。ソルビトールで「やや上昇」と回答した企業の理由としては、「仕入先の価格改定」などが挙げられた。


カ.その他甘味料に対する評価

 その他甘味料に対する評価を「満足」「やや満足」「普通」「やや不満」「不満」の5段階評価で尋ねたところ、品質面については、果糖は過半数を「普通」が占め、「不満」とする回答も一部見られた。ソルビトールは「満足」「やや満足」の合計と「普通」の割合が同数となった(図25)。

 調達面についても同様に、ソルビトールでは「満足」「やや満足」の合計と「普通」の割合が同数となった(図26)。一方、果糖においては「普通」が7割を占め、「満足」が3割程度となった。

 

 

おわりに

 仕入量については、加糖調製品およびその他甘味料ともに横ばいが過半を占め、総じて安定していると言える。一方で、前年度調査よりも「減少」と回答する企業の増加も見られた。

 仕入価格について、加糖調製品はすべての調製品で横ばい回答が最多である中、品目によっては上昇と下落の傾向が一部見られた。加糖調製品から砂糖への切り替え意向については、切り替え意向は無いとした企業が最も多かったものの、「砂糖の仕入価格によっては切り替え意向あり」「商品の見直しによっては切り替え意向あり」とする回答が見られ、ココア調製品、ミルク調製品および小麦粉調製品については「砂糖以外の原料によっては切り替え意向あり」とする回答もあった。ソルビトール調製品を除いた調製品では「砂糖への切り替え意向は無い」とする回答のほうが多く、特に加糖あんで回答数が多かった。

 平成30年12月30日に「環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定」(TPP11協定)が発効し、同協定参加国(注)から輸入する加糖調製品については、関税割当枠内の低関税率が適用されることとなった。協定発効後の加糖調製品の需要量についてはほぼ横ばいで推移しており(図1)、輸入量は30年以降、減少傾向にあるが、年間50万トン程度で推移している(図27)。
 

 

 今年度調査では一部でCOVID-19による影響も見られ、TPP11協定発効による影響とともに、COVID-19が今後の需要動向にどのような影響を及ぼしてくるか、注視していく必要がある。

 最後にお忙しい中、本調査にご協力いただいた企業の皆さまに、改めて厚く御礼申し上げます。

(注)TPP11協定の参加国は、豪州、ブルネイ、日本、マレーシア、メキシコ、ニュージーランド、ペルー、シンガポール、ベトナム、カナダ、チリ。

【参考文献】
・脇谷和彦、菊池美智子(2007)「砂糖以外の甘味料について」『砂糖類情報』(2007年7月号)独立行政法人農畜産業振興機構
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
Tel:03-3583-9272