欧州連合(EU)最大の農業者団体を含む4団体(下記参照)は12月9日、英国のEU離脱(BREXIT)移行期間が終了する2020年12月31日を間近に控え、移行期間後の措置に関する五つの緊急要請を共同声明で発表した。
4団体は、最優先事項として雇用維持を挙げ、衛生植物検疫(SPS)措置や貿易の技術的障害(TBT)といった貿易上の障壁となり得る規則の統一および関税や関税割当のない協定を求めるとともに、労働者の権利、公平な競争条件の確保のため、協定合意の有無に係わらず、下記の五つの緊急要請があるとした。
1.新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によりすでに影響を受けている部門において、経済的な混乱を避け、安定的に雇用が継続されるよう、交渉に関する結論が判明次第、直ちに詳細なルールを定めること。
2.関税や通関のため複雑な手続きの復活が想定される合意なきBREXITは、特に農業・食品事業者に大きな影響を与える可能性があり、円滑な移行のための具体的な措置の他、EUのBREXIT調整準備金(本年7月に新たに措置)による支援が必要。
3.事業者が円滑に新たな規則へ移行できるよう、行政機関による迅速かつ効果的な情報提供が必要。
4.労働者の権利保護は必須であり、EUの農業・食品等関係部門が雇用する何百万人もの従業員の雇用を維持するための事業者への支援も必要。
5.移行期間終了後に予測される混乱などに対応するため、欧州委員会と英国当局との対話の継続と共に、部門の関係者との対話も行う必要。
4者は共同声明の最後に、交渉の結果がどのようなものであっても、すべての人の利益のために強固かつ生産性のある関係を築くために、英国とEUが禍根を一切残さないよう求めるとしている。
また、EU最大の乳製品貿易団体である欧州乳製品貿易協会(EUCOLAIT)は12月14日、英国・EUの交渉に対し、すでに多くの混乱を招いているとして声明を発表した。
1.事業者らはすでに対応策を講じてきてはいるものの、移行期間終了のわずか2週間前にあっても2021年1月1日以降に関税などがどのようになるか分からないという状況にあっては万全の準備を行うことは不可能。
2.合意なきBREXITが現実味を増す中、英国との間でWTOの最恵国待遇(WTO加盟国間の貿易にかかる一般的関税率)での取引を意味する交渉決裂は可能な限り避けるべきであり、2021年1月1日から協定発効までの間を現状維持とすることに合意すべきである。
なお、先の共同声明の4団体は以下のとおり。
欧州農業組織委員会・欧州農業協同組合委員会(COPA-COGECA)
欧州農業組織委員会・欧州農業協同組合委員会(COPA-COGECA)とは、EU加盟国の2300万人以上の農業生産者によって構成されるCopa(欧州農業組織委員会)および2万2000の農業共同組合により構成されるCogeca(欧州農業協同組合委員会)により組織されたEU最大の農業生産者団体。CopaおよびCogecaは、独立した組織であるものの、両者は共同で事務局を設置し、主にロビー活動を行っている。
欧州食品飲料産業連盟(Food Drink Europe)
欧州食品飲料産業連盟(Food Drink Europe)とは、EU加盟国の29万4000社の事業者と470万人の労働者で構成されるEU最大の食品製造業団体。取引量はEU全農産物の70%を占める。
欧州農産品貿易連絡委員会(CELCAA)
欧州農産品貿易連絡委員会(CELCAA)とは、EU加盟国の3万5000社の農産物貿易事業者で構成されるEU団体。穀物、飼料、砂糖、ワイン、食肉、乳製品、青果、卵などの農産物を対象としている。
欧州食品・農業・観光関係労働組合連合会(EFFAT)
欧州食品・農業・観光関係労働組合連合会(EFFAT)とは、食品・農業・観光業の2200万人以上の労働者の利益ために活動する、欧州35カ国の120の労働組合(組合員260万人)の連合組織である。
(国際調査グループ)