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4. 日本の主要輸入先国の動向(2021年2月時点予測)

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最終更新日:2021年3月10日

4. 日本の主要輸入先国の動向(2021年2月時点予測)

2021年3月

 近年、日本の粗糖(甘しゃ糖・分みつ糖〈HSコード1701.14−110〉および甘しゃ糖・その他〈同 1701.14−200〉の合計)の主要輸入先国は、豪州およびタイで、2020年の主要輸入先国ごとの割合を見ると、豪州が86.6%(前年比5.2ポイント増)、タイが10.5%(同8.1ポイント減)となっており、2カ国でほとんどを占めている(財務省「貿易統計」)。

豪州

2020/21年度の砂糖生産量は、わずかに増加する見込み
 2020/21年度(4月〜翌3月)のサトウキビの収穫面積は、36万ヘクタール(前年度比1.0%減)とわずかに減少すると見込まれる(表6)。サトウキビ生産量は、記録的な干ばつに見舞われた2019年ほど極端な天候にはならないとの前提の下、3112万トン(同3.6%増)とやや増加すると見込まれる。

 砂糖生産量は、前年度の減産からの反動が押し上げ要因となり、サトウキビ生産量の増加も受けて、438万トン(同2.1%増)とわずかに増加すると見込まれる。一方で、前年度の減産により期末在庫量(当期期首在庫量)が減少したことを受け、今年度の増産が輸出量の落ち込みをある程度補完するものと想定されるものの、輸出量は336万トン(同2.5%減)と、依然減少傾向が続くと見込まれている。

砂糖(ブドウ糖)を含むゼリーが新生児低血糖発生を軽減
 低血糖は新生児にはよく見られる一般的な症状ではあるが、発症時には脳損傷を引き起こし、その後、発達遅延などの影響が出る可能性があるとされている。そこでリギンズ研究所は、新生児低血糖の発生減少を目指し、口腔内(頬の内側)へのブドウ糖含有ゼリー(デキストロースゲル)の塗布効果について研究を進め、上記結果は豪州とニュージーランドの産院18カ所で行われた4年間にわたる試験で明らかになったとしている。

 本研究所は、新生児集中治療室(NICU)入院の兆候のない新生児低血糖のリスクがある新生児(糖尿病を持つ母親、後期早産、高または低出生体重に該当する子)を対象として試験を行い、NICUへの入院数の減少には至らなかったものの、低血糖の発生率を減少させることが確認できたとし、今後、研究の有用性を結論付けるために、長期的なフォローアップが必要であるとしている。

表6 豪州の砂糖需給の推移

タイ

2020/21年度の輸出量は、大幅に減少する見込み
 2020/21年度(10月〜翌9月)のサトウキビ収穫面積は、前期作でのキャッサバなどの代替作物の収益性が高かったことから、今期作では代替作物がより多く作付けされたことにより、139万ヘクタール(前年度比14.4%減)とかなり大きく減少すると見込まれる(表7)。加えて今期のサトウキビ生産量は、前期に続き干ばつの影響を受け、6300万トン(同15.9%減)とかなり大きく減少すると見込まれる。

 サトウキビ生産の落ち込みにより、砂糖生産量は741万トン(同15.9%減)とかなり大きく減少すると見込まれる。砂糖の減産や在庫量の減少に伴い輸出余力が低下し、輸出量は441万トン(同46.0%減)と大幅に減少すると見込まれる。

焼き畑による大気汚染が悪化する恐れ
 タイでは、サトウキビ圃場の至る所で焼き畑による収穫が行われており、これによる微小粒子状物質(PM2.5)の増加が、毎年12月から翌年4月頃まで続くとされている。2021年1月29日付けの現地報道によると、同国内では大気中のPM2.5の数値が、同国天然資源・環境省公害管理局(PCD)が定める安全基準の1立方メートル当たり50マイクログラムを連日超えている状況が確認されている。

 世界有数の砂糖輸出国であるタイでは、砂糖産業の拡大に伴い、焼き畑収穫が10年ほど前から続いているが、サトウキビ生産者の間では、焼き畑収穫がサトウキビの品質を低下させ、買い取り価格を引き下げることが広く認識されている。しかし、収穫時の余分な葉茎や梢頭部を取り除く時間と人件費の節約の観点から、依然として国内で広く行われているのが実情である。現地報道は、今年度は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染防止に伴う移動制限による影響で、収穫作業の主要な担い手である移民労働者が不足していることから、焼き畑収穫が増加し、大気汚染がより深刻化する可能性があると伝えている。

 また、タイ製糖協会(TSMC)によると、現在サトウキビの収穫量の50%程度は焼き畑によるものであるという。タイ政府は国内の大気汚染悪化を受けて、2022年までに焼き畑収穫を5%以下にする計画を策定し、ハーベスタ導入のための融資制度の新設や、副産物の梢頭部や葉茎の再生可能エネルギー源としての販売奨励といった対策を打ち出しているものの、進捗状況は芳しくなく、目標達成が疑問視されている。

表7 タイの砂糖需給の推移

(参考) タイの砂糖(粗糖・精製糖別)の輸出量および輸出単価の推移

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