有機農業における持続可能性をさらに向上させるため、アニマルウェルフェアの向上、有機種子(有機で栽培された作物由来のもの)の供給確保、有機部門の二酸化炭素排出量の削減、プラスチック・水・エネルギーの使用を最低限とすることに焦点を当てた行動を行うこととしている。
今回の行動計画の発表に関して、欧州委員会のボイチェホフスキ農業・農村開発担当委員は、「有機農業は、持続可能な農法と資源利用を行うものと認識されており、欧州グリーンディールの目標達成のための中心的な役割を担う。有機農業の取組面積の割合を全農地の25%以上にするという目標を達成するためには、有機部門の加盟国間における違いを考慮しつつ、需要がこの分野の成長をけん引することを確保する必要がある。今回の行動計画は、同部門のバランスの取れた成長を促すための方策や考え方を提供しており、CAP、研究、技術革新、さらにはEU、加盟国、地域レベルでの主要関係者の協力によって支えられることになる」と述べた。
また、欧州連合最大の農業生産者団体である欧州農業組織委員会・欧州農業協同組合委員会(Copa-Cogeca
(注5))は同日、今回の市場主導型の戦略を歓迎すると発表した。
Copa-Cogecaは、「有機農業の取組面積は着実に増加しており、2010年の850万ヘクタールから2019年の1380万ヘクタールまで10年間で62%増加した。これと同時に、この10年間で消費者の有機生産に対する関心も高まっている。消費者の関心の高まりは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によって助長されたと考えられる。しかし、現在、EUにおける有機農業の取組面積は、全農地の8.5%にとどまっており、「Farm to Fork(農場から食卓まで)」戦略の野心的目標である25%からはほど遠い状況にある」としている。また、Copa-Cogecaは、有機農畜産物の振興は市場の求めに応じたものであるべきとして、従来から欧州委員会による有機偏重の予算配分による振興策を批判していた。このため、今回の行動計画が消費促進を通じた有機振興であることを歓迎している。
なお、Copa-Cogecaの有機作業部会のロウン・アンデルセン議長は、「欧州委員会のアプローチは、最も持続可能な方法である。有機農業の取組面積を全農地の25%以上にするという目標は非常に野心的であり、目標達成までに残された時間も9年弱しかないが、市場の混乱を回避しながら、この数値に可能な限り近づけられるよう、欧州委員会などと協力していきたい。そして、今回の決定により、欧州委員会の市場観測サイト
(注6)の分析対象に有機農畜産物が含まれたことを歓迎する」と述べている。
(注5)Copa-Cogecaとは、EU加盟国の農業生産者によって構成されるCopa(欧州農業組織委員会)および農業協同組合により構成されるCogeca(欧州農業協同組合委員会)により組織された農業生産者団体。CopaおよびCogecaは、独立した組織であるものの、両者は共同で事務局を設置し、主にロビー活動を行っている。
(注6)欧州委員会、需給動向の情報提供を行う果樹・野菜市場観測サイトを開設(EU)(海外情報〈令和元年10月24日発〉)https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_002533.htmlを参照されたい。