3. 世界の砂糖需給に影響を与える諸国の動向(2021年4月時点予測)
最終更新日:2021年5月10日
3. 世界の砂糖需給に影響を与える諸国の動向(2021年4月時点予測)
2021年5月
本稿中の為替レートは2021年3月末日TTS相場の値であり、1ブラジルレアル=21.18円である。
2021/22年度の砂糖生産量および輸出量は、かなりの程度減少する見込み
LMC International(農産物の需給などを調査する英国の民間調査会社)による2021年4月時点の予測によると(以下、特段の断りがない限り同予測に基づく記述)、2021/22年度(4月〜翌3月)のサトウキビ収穫面積は、860万ヘクタール(前年度比0.5%減)とわずかに減少すると見込まれる(表2)。サトウキビ生産量は、生育期間における降雨量の減少による単収の低下が影響し、6億3000万トン(同4.1%減)とやや減少すると見込まれる。砂糖生産量は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によるバイオエタノール需要の不透明感などを背景に、前年度に引き続き多くの製糖業者が砂糖の生産割合を高めると予想されるものの、原料の減産や、1トン当たりの平均回収糖分(ATR)が平年並みに落ち着くことを受けて、4189万トン(粗糖換算〈以下、特段の断りがない限り砂糖に係る数量は粗糖換算〉、同6.2%減)とかなりの程度減少すると見込まれる。輸出量も、砂糖の減産に伴い3056万トン(同9.5%減)とかなりの程度減少すると見込まれる。
3月中旬の砂糖価格、前年度から大幅に上昇
ブラジル国家食糧供給公社(CONAB)は3月23日、国内のサトウキビ需給や砂糖価格などに関する月次レポートを公表した。これによると、サンパウロ州の製糖工場における3月15日〜19日の砂糖(注1)の週平均価格は100キログラム当たり213.6レアル(4524円、前年度比31.3%高、前週比0.5%安)と、前年度から大幅に上昇した。また、主要輸出港である同州サントス港における砂糖(注2)の週平均価格は、同207.7レアル(4399円、同29.5%高、同1.1%安)となり、製糖工場での価格と同様の動きを見せた。
3月に入り、中南部地域の一部の製糖工場では2021/22年度(4月〜翌3月)のサトウキビ収穫が進む中、収穫が本格化する4月には、多くの製糖工場でサトウキビの圧搾が開始されると見込まれている。同国ではレアル安や砂糖の国際価格の回復などによる砂糖輸出量増加の影響を受け、足元の国内供給量は限られると見込まれるが、工場が本格稼働する同年度第1四半期には、砂糖の増産により国内価格は下落するものと予想されている。
(注1)ICUMSA(国際砂糖分析法統一委員会)色価130〜180の砂糖。
(注2)同色価最大150の砂糖。
2020/21年度の砂糖生産量はかなりの程度増加するものの、輸出量はわずかに減少する見込み
2020/21年度(10月〜翌9月)のサトウキビの収穫面積は、豪雨による大規模な圃場の浸水被害に見舞われた前年度からの反動で、483万ヘクタール(前年度比4.1%増)とやや増加すると見込まれる(表3)。ウッタル・プラデーシュ州で赤腐病(red rot)の被害が確認されているものの、マハラシュトラ州では、年間降雨量が集中するモンスーン期(6〜9月)における降雨が潤沢であったことから、サトウキビ生産量は3億9463万トン(同6.8%増)、砂糖生産量も3256万トン(同10.6%増)といずれもかなりの程度増加すると見込まれる。砂糖の国際価格が堅調に推移している状況の下、製糖業者は砂糖輸出を促進するとみられるが、コロナ禍におけるコンテナ不足などの物流の混乱による影響で輸出ペースが鈍化しており、輸出量は822万トン(同0.8%減)とわずかに減少すると見込まれる。
2020/21年度の輸入量は、かなりの程度増加する見込み
2020/21年度(10月〜翌9月)のサトウキビの収穫面積は、雲南省では面積の増加が見られるものの、広西チワン族自治区と広東省での面積減少を受けて、116万ヘクタール(前年度比1.6%減)とわずかに減少し、サトウキビ生産量も、7360万トン(同3.5%減)とやや減少すると見込まれる(表4)。また、同年度のてん菜の収穫面積は、内モンゴル自治区において、てん菜の買い取り価格が引き上げられたことから、生産者は作付面積を拡大し、収穫面積は23万ヘクタール(同8.8%増)とかなりの程度増加すると見込まれ、てん菜生産量も、単収の増加に伴い、1238万トン(同13.6%増)とかなり大きく増加すると見込まれる。
砂糖生産量は、1124万トン(同0.2%減)とわずかに減少すると見込まれる。輸入量は、液糖輸入量の大幅な減少によって輸入糖の需要が高まり、721万トン(同7.9%増)とかなりの程度増加すると見込まれる(注)。
(注)LMC Internationalによると、中国政府は液糖の輸入禁止を正式に発表していないものの、現在税関において液糖の通関手続きの遅滞が発生しており、輸入液糖の賞味期限切れなどの事態が発生するなど、事実上液糖輸入に制約がかかっている。
2020/21年度の輸出量は、かなり大きく減少する見込み
2020/21年度(10月〜翌9月)のてん菜の収穫面積は147万ヘクタール(前年度比2.9%減)とわずかに減少すると見込まれる(表5)。てん菜生産量は、EUの主要てん菜生産国であるフランスで感染が広がる萎黄病の被害を受けて、9913万トン(同9.9%減)とかなりの程度減少すると見込まれる。てん菜生産量の落ち込みにより、砂糖生産量は1515万トン(同10.6%減)とかなりの程度減少すると見込まれる。輸出量は、砂糖生産量の減少によって輸出余力が低下し、125万トン(同12.8%減)とかなり大きく減少すると見込まれる。
仏バイオテクノロジー企業、大手製糖企業とてん菜糖副産物の供給契約を締結
フランスのバイオテクノロジー企業AFYREN社は3月23日、EUの大手製糖企業Südzucker社と、てん菜糖副産物の供給に関する長期契約を締結したことを発表した。
AFYREN社は2012年に設立されたスタートアップ企業で、今回の契約により、調達するSüdzucker社のてん菜糖副産物(ビートパルプや糖みつ)を原料に、2022年上半期の本格操業を予定している有機酸製造工場(注)において、7種類の有機酸の生産を計画している。
今回の契約では、こうしたてん菜糖副産物そのものの付加価値を高める効果が期待できる他、通常は石油から製造される有機酸の原料として、食品副産物であるてん菜糖副産物を利用することで、食料供給に影響を与えることなく、資源を持続可能な方法で活用する事業を行うことができ、Südzucker社にとっては2050年までにカーボンニュートラル(温室効果ガスの実質排出量をゼロにすること)を目指す目標を達成することができるとしている。
(注)有機酸とは炭素原子を含むカルボン酸で、酢酸、プロピオン酸、酪酸などがあり、食品添加物の他、化粧品や医薬品などの原料として幅広く使用されている。同工場は、フランスのドイツ国境付近に位置し、生産能力は年間1万6000トン。工場周辺にはSüdzucker社の製糖工場が複数存在し、てん菜糖副産物の安定的な供給が見込まれる状況にある。
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