現在、私どもはこの壮大なミッションを達成するための第一フェーズにあると考えています。それは日本の皆さんに、まず「あんこへの意識」を高めてもらうことです。あんこへの意識を高めるとは、あんこの存在に改めて向き合い、より深く知ろうとすることです。
そのために協会として行う活動は、大きく四つの分野に分かれます。
一つめは、「あんこの発掘」です。わが国には、まだまだ地方に眠る絶品あんこスイーツがたくさんあります。それらは、特定の地域だけで食べられ、残念ながら、全国的に知られる機会が少ないものもあります。そこで、当協会の協会員(2021年4月時点で約6500名)のネットワークを生かし、そのような地域で愛されるあんこスイーツの情報を発掘し、広く一般の皆さんに紹介することで、あんこへの興味を高めてもらうというものです。具体的には地元のあんこ銘菓の食べ比べイベントを開催したり、全国の百貨店やショッピングモールなどの商業施設におけるあんこの催事の監修、協力などをしています(写真2)。
二つめは、「あんこの歴史」です。日本の食文化の代表格と言ってもよいあんこですが、その歴史はあまり深く知られていません。例えば、あんこはもともと塩味が主流であったことや、最中には初めあんこが入っておらず、皮の部分だけで、せんべいのような餅菓子として食べられていたこと、ようかんは、中国大陸から伝わった時には羊肉のスープであったこと、他にも、まんじゅうは奈良と福岡の二つのルートで日本に伝わったこと(諸説あり)など、非常に興味深いトピックがたくさんあります。このようなあんこにまつわる歴史を古文書や文献などを紐解き、皆さんに分かりやすく伝えていくことも私どもの仕事です。
三つめは、「あんこの健康」です。あんこにはサポニンやポリフェノール、食物繊維など健康に良いとされる成分が豊富に含まれています。また、あんこは脂質が少なく、エネルギー補給に向くことから、トレーニング中の補助食としてスポーツようかんが発売されるなど、アスリートやボディビルダーの間でも注目を集めています。これは小豆に含まれるビタミンB1が糖質の代謝に関わる補酵素として働き、糖質のエネルギー転換を助けるからです。ちなみに、私自身も筋トレ前には必ず大福を食べます。生涯現役であんこを食べるためには、いかに健康的にあんこと付き合うかが極めて重要です。あんこと健康に関する情報を伝えていくのも当協会の活動の一環です。
四つめの活動領域として「あんこの可能性」があります。これは、あんこと他の食べ物や飲み物の組み合わせを、レシピ開発などを通じて研究し、新しいあんこの食べ方や楽しみ方について、世の中に提案するという活動です(写真3)。最近ではアロマ分子レベルでのペアリング研究や、世界の伝統菓子や郷土菓子にあんこを組み合わせ、グローバルなコラボレーションあんこスイーツを考案するなど、より斬新であんこの可能性を広げるチャレンジを進めています(写真4)。