2020/21年度は増産するも、輸出促進政策の発表の遅れなどを受け、輸出量はかなりの程度減少する見込み
2020/21年度(10月〜翌9月)のサトウキビの収穫面積は、豪雨による大規模な
圃場の浸水被害に見舞われた前年度からの反動で、489万ヘクタール(前年度比5.3%増)とやや増加すると見込まれる(表3)。ウッタル・プラデーシュ州で赤腐病(red rot)
(注1)の被害が確認されているものの、マハラシュトラ州では、年間降雨量が集中するモンスーン期(6〜9月)における降雨が潤沢であったことから、サトウキビ生産量は4億249万トン(同8.9%増)とかなりの程度、砂糖生産量は3300万トン(同12.1%増)とかなり大きく増加すると見込まれる。輸出量は、COVID-19による物流の混乱は解消しつつあることで、足元の輸出は復調傾向にあるものの、輸出促進政策の政府発表の遅延
(注2)も影響するなどして、結果として前年度ほどの輸出水準には届かず、768万トン(同7.3%減)とかなりの程度減少すると見込まれる。
(注1)真菌の感染によって引き起こされる病気で、茎の内部が腐り、赤色に変色する。サトウキビの単収や砂糖の回収率に深刻な影響を与えるとされている。
(注2)インド政府の2020/21年度における砂糖の輸出政策の経緯については、『砂糖類・でん粉情報』2020年11月号のインドの項「ISMA、2020/21年度における砂糖の輸出政策の早期発表を首相官邸に要請」(https://www.alic.go.jp/joho-s/joho07_002327.html)を参照されたい。
砂糖200万トン相当の圧搾汁や糖みつ、エタノールの原料となる見込み
5月4日付の現地報道によると、インド国内の製糖工場と公営石油販売会社(OMC)との間で2020/21年度(12月〜翌11月)分の燃料用エタノール約300万キロリットルの供給契約が締結されている中、4月19日時点で前年度供給量の約66%に当たる約118万キロリットルがOMCに供給された。インド製糖協会によると、すでに供給されたエタノールの約77%は、サトウキビの圧搾汁または糖みつ(Bモラセス)を原料としており、圧搾汁や糖みつの一部がエタノール生産に仕向けられることで、過剰傾向にある同国内の砂糖生産量約200万トン相当が削減できると見込まれている
(注)。現在、同国内におけるガソリンへのエタノール混合率は平均で7.36%に達し、製糖工場が多いウッタル・プラデーシュ州やマハラシュトラ州、また、首都デリーを含む11の州ではこの平均値より高い10%近くまで上昇している。
(注)砂糖の製造工程では、サトウキビの圧搾汁を煮詰めて結晶化させ、これを遠心分離機で脱水し、砂糖と糖みつを分離する。このとき得られる糖みつをAモラセスと呼び、これを再度煮詰め、脱水する作業を繰り返して取り出した糖みつをBモラセスと呼ぶ。インドでは2018年7月、砂糖の余剰在庫削減などを目的に、圧搾汁およびBモラセスを直接バイオエタノール生産に仕向けることが認められた。