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eスポーツの世界で糖のチカラを生かす

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最終更新日:2021年7月9日

eスポーツの世界で糖のチカラを生かす
〜持続エネルギー イソマルツロース〜

2021年7月

三井製糖株式会社 ライフ・エナジー事業本部
ライフ・エナジー営業部 営業課 稲葉 千裕

はじめに

 eスポーツとは「エレクトロニック・スポーツ」の略称であり、ビデオゲームを用いて対戦を行い、勝敗および順位を競うものである。日本のゲームタイトルにおいては、「太鼓の達人」や「ぷよぷよ」「鉄拳」などが大会でのプレイタイトルである。

 毎年20%以上の成長率を見せていた2019年以前よりは鈍化したものの、2020年におけるeスポーツの国内市場は対前年比109%の66億8000万円となり1)、コロナ禍で苦戦しているリアルスポーツとは対照的に市場拡大を続けている。さらに、eスポーツで開催されるイベントがオンライン化し、より視聴がしやすくなったことで、試合観戦や動画視聴をするeスポーツファンも国内で対前年比142%の686万人と増加を続けている。株式会社KADOKAWA Game Linkageのプレスリリース(2021年4月16日)によると、今後2024年には市場規模180億円、eスポーツファン1461万人に成長することが見込まれている。

 今回はこのeスポーツの世界において、糖が重要な役割を担うポテンシャルを秘めていること、そして「持続エネルギー」として注目を集めている、イソマルツロース(以下「パラチノース」〈三井製糖株式会社の登録商標〉という)について紹介する。

1.糖と脳の関係

 「脳のエネルギーは糖」というイメージは、多くの方に持っていただけているのではないだろうか。実際に脳の重さが身体の約2%であるのに対して、1日の総エネルギーの約20%は脳が消費しているといわれている。つまり脳は非常に食いしん坊な器官なのである。eスポーツにおいて糖は、例えば戦術を組み立てたり、とっさに判断をしたり、複雑な操作をするときなど、脳の働きを内側からサポートする重要な役割を担っている。

 そして、脳が利用するエネルギー源の中で、通常最も利用しやすいのはグルコース(ブドウ糖)である。しかしながら、脳が貯蔵できるグルコースの量はその消費量と比較すると極端に少なく、脳は持続的に血液からのグルコースの供給を必要とする。集中が切れたなと感じたときに甘いものが欲しくなるのは、脳がエネルギーを欲しているサインである。

 そのようなとき、糖を含む食品や飲料でエネルギー補給することが重要となるが、糖の種類を変えることで、実際に脳の働きに違いが見られる。例えば、低GI(注)な糖を含む朝食の摂取は朝食抜きの場合よりも注意力や集中力が高く、高GIな糖を含む朝食の摂取よりも120分後の短期記憶能力が有意に向上し、正答率も高かったという報告2)がある。そのため、脳にとってのエネルギー源である糖の「質」を見直すことでeスポーツにおいて自身のパフォーマンスを向上させることが期待されるのである。

注)GIとはグライセミック・インデックス(Glycemic Index)の略で、食後血糖値の上昇を表す指標。

2.糖の使い分け

 eスポーツにおいて糖をどのように使い分けると良いのか。注目すべきは糖の「消化吸収のスピード」である。

 ショ糖(砂糖)やグルコースは消化吸収の速い糖であり、瞬発的にパフォーマンスを上げたいときに役に立つ。しかしながら、eスポーツの大会では連戦になり長時間にわたりプレーすることも少なくない。また1日の練習時間も選手によっては7時間を超えるほどである。そういった中、今回紹介するパラチノースは消化吸収がゆっくりな糖であり、持続エネルギーとして注目を集めている(図1)。 
 

3.持続エネルギー「パラチノース」とは?

 パラチノースはグルコースとフルクトース(果糖)の結合位置を変えることで作られる二糖類であり(図2)、自然界では、ハチミツの中に微量存在する。現在、当社が取り扱うパラチノースはドイツで製造されており、基原原料はてん菜である。食品添加物ではなく、分類は「食品」である。ショ糖と同様に1グラム当たり4キロカロリーのエネルギー量を持つが、結合位置の違いにより、消化吸収速度がショ糖の約5分の1になり、ゆっくりと消化吸収されることが特徴である3)
 

 ここからは、パラチノースの脳機能試験の例をいくつか紹介する。

 図3は注意力に関する試験の結果である。健康な成人男女を20グラムパラチノース摂取群と20グラムグルコース摂取群に分け、認知機能測定ツール(Cognitrax)を用いて評価を行ったところ、パラチノース群において単純注意力のスコアが60分後、180分後においてグルコース群よりも高い値を示した4)

 パラチノースは血糖値の乱高下を防ぎ、中程度の血糖値をショ糖よりも長時間にわたり維持するという「エネルギーの持続性」が、脳にグルコースを送りやすい状態を長く作り出し脳機能に関するスコアを高く維持した一つの要因と考えられている。

 この試験では集中を阻害する要因にもなる眠気に関するデータも測定している。図4は図3の注意力に関する試験と同時に、眠気に関するアンケートを実施した結果であり、パラチノース群ではグルコース群よりもスコアが低値で推移しており、眠気が抑えられていることがわかる。

 このように、パラチノースを活用することで、持続的に集中状態を維持できるのである。
 
 
 

4.三井製糖の取り組み

 当社では、eスポーツにおける食の重要性を知ってもらうため、2021年5月にeスポーツコースを有するルネサンス高等学校で、「糖と脳の関係」について食育授業を実施した(写真)。生徒にはパラチノース含有製品の試食をしてもらいながら、eスポーツトレーニングソフトを活用し、パラチノースの摂取前・摂取後の自身のパフォーマンスの変化を体験してもらった。実際にプロのeスポーツ選手の中にはパフォーマンスを向上させるために食事サポートを受けている選手もいるように、プロの世界で戦っていくためには食に意識を向け内側から強くなっていくことも重要である。当社の取り組みが、将来を背負って立つ若者らの健康な成育と、競技力向上に寄与することを願っている。

おわりに

 eスポーツはニッチな若者向けの分野と思われがちであったが、近年では地方創生の一貫として商店街で大会が行われ、シニア向けに老人ホームで取り入れられ、今や政府も盛り上げようと取り組む成長市場となっている。今後もさまざまな産業とのコラボレーションや、競技人口と視聴人口の増加が期待される中、糖はプレイヤーが強くなり、よりeスポーツが盛り上がっていくためにも欠かせない素材である。特にパラチノースは他の糖とは一線を画する持続性で差別化ができることから、筆者らは今後もパラチノースの可能性の研究と啓発を続け、多くの選手のパフォーマンスに寄与していきたいと考えている。
 
引用文献

1)株式会社KADOKAWA Game Linkage「2020年日本eスポーツ市場規模は66.8億円。2024年には180億円超に拡大と予測。〜ファミ通発表〜」〈https://kadokawagamelinkage.jp/news/pdf/news210416.pdf〉(2021年6月4日アクセス)
2)Simon B C et. al.(2012)「Breakfast glycaemic index and cognitive function in adolescent school children」『Br J Nurt』107(12)pp.1823–1832.
3)樫村淳、永井幸枝、清水健夫、江橋正(2003)「パラチノースに関する新たな知見」『精糖技術研究会誌』51.pp.19–25.
4)Sakazaki M et. al.(2019)「The effect of Palatinose Intake on Cognitive Function –A Randomized Double-blind Placebo-controlled Crossover study-」『Jpn Pharmacol Ther』 47(3)pp.437–443.
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