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ウフスマ・プロジェクトの終了とさとうきびスマート農業時代の幕開け

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最終更新日:2021年7月9日

ウフスマ・プロジェクトの終了とさとうきびスマート農業時代の幕開け

2021年7月

南大東スマート農業実証コンソーシアム        
亜熱帯バイオマス利用研究センター 上野 正実
琉球大学 農学部 川満 芳信、渡邉 健太

【要約】

 ウフスマ・プロジェクトでは、南大東島の水不足や熟練オペレータ不足を解消して、さとうきび農業振興と持続可能性の向上のために、スマート農業技術の開発と実証を行った。(1)GNSS自動操舵による3作型の省力化と南大東島全域の自動操舵化(2)各種データのGISベース営農支援システムへの統合および高度活用(3)生育データ・生育環境データに基づく精密自動かん水による収量確保・品質向上―に取り組み、大きな成果を挙げることができた。

はじめに

 本誌2019年9月号1)で紹介した「ウフスマ(UFSMA)・プロジェクト」は、令和3年3月で2年間の実証期間を終えた。本プロジェクトは、課題番号「畑H06:さとうきびの生育情報に基づく精密管理によるスマート農業体系の実証」で、国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構からの委託を受けて南大東島で実施したものである(図1)。農業生産法人アグリサポート南大東株式会社(以下「アグリ」という)を生産者とし、琉球大学を代表機関とする南大東スマート農業実証コンソーシアム(以下「コンソーシアム」という)で実証に当たった。

 本プロジェクトでは、南大東島の限られた水資源や深刻な熟練オペレータ不足問題を解消してさとうきび農業の持続可能性向上を図るスマート農業技術の開発・実証を目的に、次の3目標を掲げて取り組んだ。

(1)3作型(春植え・夏植え・株出し)の省力化率を春植え20%、夏植え15%、株出し10%とすることおよび南大東島全域の自動操舵化。
(2)各種データの地理情報システム(GIS)ベース営農支援システムへの統合および高度活用。
(3)生育データ・生育環境データに基づく精密自動かん水による収量確保・品質向上。

 これらを達成するために全球測位衛星システム(GNSS)自動操舵およびドローンの活用、微気象観測システムやモバイル近赤外(NIR)などによる生育環境および生育情報の収集と活用、さらに遠隔かん水技術などを開発・実証した。本報では、スマート農業普及によるさとうきび農業振興への一助となることを期待してこのプロジェクトの概要を紹介する。

 

1.具体的な成果

(1)GNSS自動操舵技術

 農作業に必要な精度(数センチメートル、最小基準精度±2センチメートル)でトラクタなどの走行を制御するには、RTK–GPSを使用するのが一般的である。GPSはスマホやカーナビでなじみのツールとなっているが、単一GPSではこの精度は出せない。RTK方式では、定置したGPS(以下「基地局」という)とトラクタに装着したGPS(以下「移動局」という)のセットを用い、基地局からの補正信号で必要な測位精度を得る。1台のトラクタに基地局と移動局をそれぞれセットで装備すると農家の負担が非常に大きくなるので、可搬式の基地局を島内4カ所の高い構造物に固定(写真1)し、島中に補正信号を送るインフラを整備した。補正信号が届きにくい地域が一部残ったものの、ほぼ島内全域の自動操舵作業が可能になった。補正信号の届きにくさは地形の影響が強いが、電波が弱いことも原因となっている。基地局の代わりにインターネット経由で補正信号を配信する方式もあり、並行して実証を行っている。


 
 次に、さとうきび作の主な作業すなわち耕起・整地、植え付け、中耕、収穫、株出し管理などの自動操舵作業を実施した。ビレットプランタ用大型トラクタ1台、大型トラクタ1台、小型トラクタ1台、ハーベスタ1台に移動局アンテナと自動操舵システムを装着して実証に当たった。各作型で圃場(ほじょう)を固定し、各作業を一気通貫で実施してデータを取るのが理想的であるが、限られた2年間の期間と機器数ではそれもできず、可能な圃場で個々にデータ取得を行った。機器類の整備が完了したのは令和元年10月で、そこからが本格的な実証期間となった。初年度の収穫は、手動操舵による植え付けおよび株出し栽培圃場しかなく厳密には自動操舵栽培とは言えない問題があった。幸いなことに、アグリではいち早くGNSS自動操舵システムを1セット導入し、植え付け前の線引き作業を実施していた2)。線引きされた圃場を自動操舵植え付けと見なして、準自動操舵収穫および同株出し管理が実現した(写真2)。
 

 
 これらも含めてひと通りの自動操舵作業データがそろったので、この結果を組み合わせて、標準的なGNSS自動操舵機械化一貫作業体系を策定した。これよりシミュレーションを行い、作業能率、圃場作業効率などを求めた。手動操舵との比較で省力化率やオペレータコスト低減率を求め、手動操舵との比較を行った。この比較において、手動操舵は熟練オペレータ、自動操舵は熟練度の低いオペレータが実施した。表1に示すように、各作型とも作業時間による省力化率は目標に達しなかった。南大東島では機械化一貫作業体系が普及し、大区画圃場であるために、作業時間は限界に近い状態にまで短縮されている。データ取得数が少ないので、結論を出すには早すぎるが、自動操舵による大幅な省力化は南大東島では期待しにくいと推察される。一方、オペレータの時給に熟練度による差をつけて算出したコスト低減率は大きく目標を超えた。さらに、自動操舵と手動操舵による走行軌跡の直線からのずれで作業精度を評価すると、両者には顕著な差が表れた(表1)。ただし、自動操舵に関してはまだ「慣らし運転」の段階で、信頼性の高いデータを得るにはもう少し時間を要する。

 

(2)作業用ドローン利用技術の開発

 ドローンの利用法として取り上げられるのは農薬散布による防除である。残念ながらスタート当時は利用できる農薬の種類が少なく、防除作業には不向きな状況であった。本プロジェクトでは、毎年春先に島全体に設置されているハリガネムシの防除のためのフェロモンチューブをドローンで散布する技術の開発を行った。周知のように、フェロモンチューブは性フェロモンによる交信かく乱が代表的な防除技術の一つである。通常の農薬を使用しない優れた防除技術であるが、ハリガネムシの頭数を低密度に維持するには、毎年の交尾期に合わせた設置が必要である。人力による設置が中心で、人が入れない海岸林などには有人ヘリで散布してきた。現地の関係者からこれをドローン作業に置き換えたいという強い要望があり、1巻き80メートルのフェロモンチューブを空中で1メートル程度の長さにカットして散布する散布装置を開発した。この開発は暗中模索の状態で難航したが、プロジェクト終了間際の令和3年3月18日に現地試験を実施して成功を収めた。試験には関係者に交じって南大島村の仲田村長も参加され、好評を得た(写真3)。今後、散布装置のさらなる改良を進め、ドローンの運用も含めた散布法を確立する予定である。

 この他に2年9月に襲来した大型台風10号の被害からの回復促進のために、尿素の葉面散布を試みた。データ取得には至らなかったが、この他に粒状肥料の散布などを含め、工夫次第でドローンの用途は広がると思われる。なお、3年4月1日現在、散布に適した農薬も増え、ドローンの可能性は広がりつつある3)

 

(3)微気象観測ネットワークの構築と微気象データの配信

 降雨の片降りは夏場を中心に良く知られた現象で、降雨の少ない時期には生育に大きな影響を与える。また機械作業の可否に係るために、農家にとって自分の畑の降雨は大きな関心事である。このような背景の下で、降雨などの偏りを測定できる微気象観測ネットワークの構築を行った。台風にも耐え得る本格的なメインポスト6基と、より簡易で移動可能なミニポスト3基を配置した。これら9基のポストで測定したデータをクラウドに集約し、農家のスマホやPCに配信するシステム(図2)を構築し、令和元年10月より配信を開始した。この配信システムは2年10月に大幅に改良し、グラフや画像を追加して利便性の向上を図った。観測データの一例として、2年9月の大型台風10号襲来時の観測データの一部を図3に示す。本ネットワークは大型台風にもよく耐えてデータ収集を継続した。農家はこのような画面をいつでも見ることができ、表2に示すアクセス状況のようによく利用されている。後述のように、栽培や作業などに微気象データをどこまで利用できるかが重要な課題である。

 

 

 

(4)節水型遠隔かんがいシステムの開発

 南大東島は水資源に厳しい制限があるので点滴かんがいが実施されている。ポンプによる圧送が中心で、一部自然流下式が利用されている。ポンプは農用ディーゼルエンジンもしくは電動モータで駆動されている。ここでは、農用ディーゼルエンジンのオン・オフを遠隔で実施する制御システムを開発した。オンとオフは別々の方式で制御し、エンジン音を検知して稼働の確認を行っている。オン・オフはスマホを使用して行う。先ほどの微気象配信システムから送られてくる土壌水分データ(pF)をスイッチングデータとして、かん水開始を農家に通知する。これを見て遠隔からスマホのスイッチをオンにすると、エンジンポンプが稼働してかん水を開始する。圃場でのかん水試験は令和2年7月に3回実施した。試験期間にたまたま降雨が多く、単収などの差は見られなかった。図4に、試験期間中のかん水のタイミングと土壌水分、降水量を示す。今回はpF3.5をスイッチングデータとし、スマホのオンとオフは島外から手動操作した。完全自動化も容易であるが、スイッチ操作は当面、手動が良いと思われる。

 

(5)過去の生育データに基づくかん水効果の評価

 このように圃場でのかん水試験は微気象に大きく左右され、期待通りのかん水効果が得られないことも少なくない。これを補うために、琉球大学でポット試験を実施するとともに、過去の生育データおよび収穫実績(大東糖業株式会社提供)と気象データ(ここでは気象庁データを使用)から干ばつの影響を推定した。水ストレスと塩ストレスを与えたポット栽培試験によって、対照区に対して生育および糖収量が著しく抑制された(写真4)。さとうきびが根から吸水し、葉から大気中に放出する蒸散量と地表面からの蒸発量を合わせた蒸発散量(FAOに準拠)を気象データから算出した。夏場は1日に10アール当たり約8トンの水を消費することを示した。


 
 蒸発散量以上の降水量があれば成長は順調であるが、これより少ない状態では、かん水によって補給しない限り生育に悪影響が出る。蒸発散量と降水量の差から毎月の不足水量を求めた。生育旺盛期を含む6月から10月における不足水量は単収に、11月から3月の登熟期の値が糖度に影響するものと想定して、上述の過去の生育データとの相関を求めた。その結果、単収や糖度とそれぞれの不足水量の間には相関関係が認められた。さらに、風速25メートル以上の台風が接近した年度のデータを除くとより高い相関係数が得られた。

 図5は不足水量と単収の負の相関を示すもので、夏場には平年で300ミリメートル程度の不足水量があり、この時の10アール当たり単収は約5.6トンである。かん水によって不足水量を150ミリメートルまで減らせば、単純に10アール当たり7.6トンで2トン増収することが読み取れる。もちろん、他の要因も関与するのでこのように単純ではないが、長年の実績データに基づくもので信頼性はかなり高いと思われる。このように、(微)気象データはさとうきびの収量や糖度を予測する際に重要な因子となる。

 

(6)生理・生育・群落情報の効率的な収集と高度活用

 最初に述べたように、本プロジェクトのタイトルは「さとうきびの生育情報に基づく精密管理によるスマート農業体系の実証」で、キーワードは生育情報と精密管理である。スマート農業技術ではGNSS自動操舵農機・ロボット農機やドローンなどが目立つが、生育情報(微気象なども含む)の収集とその活用は古くから営々と続く最重要課題である。筆者らは、「精密農業」や「IT農業」が取り上げられるようになった20年以上前から、品質取引データの活用、ICPによる蔗汁や土壌の元素分析などに取り組み、GISによるマッピング、GPSの活用、衛星リモートセンシングなどを進めてきた。この流れの延長上に本プロジェクトのタイトルがある。すなわち、さとうきびの生育や生育環境に関する情報を正確に把握して的確な栽培管理システムを開発することを目的としている。

 この目的に合わせて、光合成分析装置(LI−6800)で光合成・蒸散などの生理特性を、モバイルNIRでは茎の糖度などを測定し、ドローン空撮で群落情報の把握を行った(写真5)。これらの相互関係を把握して、最終的にドローンによってさとうきびの生育状況、収量、糖度などを迅速に推定する技術開発を試みた(図6)。これらの測定は月1回をめどに実施し、それに合わせて従来の生育調査も実施した。圃場でさとうきびの光合成速度を経時的に測定した例は世界的にも珍しく、極めて貴重なデータを得ることができた。その結果およびLAI(葉面積指数)などに基づいてCO2吸収量の推移も推定し、モバイルNIRによる立毛茎の糖度などを現場で測定できるようになった。また、従来のBrix測定のような茎を傷つけての蔗汁採取は不要で、測定データはアンドロイドのアプリでサーバに転送・記録される。数回の改良で性能が向上し、現場で実用できることを確認できた。

 現場で生育情報を効率よく収集・利用する手段としてドローンモニタリングが期待されている。本プロジェクトでもドローンモニタリング技術の開発に注力した。ここでは、生理特性や茎の情報とドローン画像をどのように関連付けて群落情報を得るかがポイントになる。水稲や麦のように、草高が比較的短く、実が上部に付く作物では、画像解析による収量などの推定が可能である。一方、さとうきびは草高が高く、葉が繁茂して収穫物である茎を覆うので、空撮画像で解析できる情報は限られる。現時点でドローンモニタリングの可能性のある項目として、生育初期の雑草、欠株の判別、植被率、倒伏前の草丈、仮茎長、倒伏率、糖度、見かけの体積などが挙げられる。これらのドローンモニタリングを有用な技術として確立するには、空撮、画像編集、画像解析とその結果の解読という一連の作業をシステム化する必要がある。上記の可能性を収量予測などに拡張するには、さとうきびの形態、群落構造に関する知見を深める必要がある。

 

 

(7)GISベース営農支援システムによる各種データの統合と高度活用

 スマート農業の本領は情報の活用にある。それにはデータの収集、解析によるデータの情報化、情報の効果的な表示などをシステム化する必要がある。大東糖業株式会社では早い時期からGISをベースとするシステムが導入・活用されている。農業では圃場に付随する情報が中心となるのでGISが大きな威力を発揮する。アグリではそのバリエーションとして作業管理などに活用しており、今回、このシステムをスマート農業向けに大幅に改修した(図7)。主に自動操舵データ、作業日報、微気象データ、生育データ、ドローンデータなどを統合できる。アグリではこれらのデータを地図上で見ながら、作業計画の立案などに利用することができた。

 本システム利用の成果のひとつにGNSS自動操舵の基準データ(ABラインデータ)の保管と再利用がある。株出しを前提とするさとうきびの栽培では、植え付け時に設定したABラインデータを収穫などの後続の作業に一貫して利用することが望まれる。言い換えると、最初のABラインデータを株の更新まで4、5年間継続して利用する必要がある。そこで移動局の自動操舵システムからデータを取り出してUSBに保管し、別の農機の自動操舵システムに移植して使えるかの確認試験を行った(写真6)。データの取り出しから移植の操作はかなり煩雑であり、作業中のオペレータには難しいこともある。これを防ぐためにわかりやすい操作マニュアルを作成した。また、作業時の走行軌跡を記録することによって作業解析が可能になった。現状では解析にかなりの時間を要するので、解析の簡易化・自動化が今後の課題である。

 

 

(8)経営の見える化

 スマート農業プロジェクトでは各コンソーシアムにおける生産者の経営データを提出することが義務付けられている。その対応には上述の営農支援情報システムが大きな威力を発揮した。本システムの最大の機能の一つは「見える化」である。例えば、労働時間を見ると、プロジェクト以前の平成30年度より令和元年度の方が増える結果となった。従業員の作業日報の記帳が正確になったことと、作業名の統一を図ったこと、実証圃場ということで作業が丁寧に行われたことなどが主な要因となっている。このように内容を具体的に把握でき、経営や栽培の効果的な改善策を検討できるようになった。さとうきびのサイクルは会計年度をまたぐことが多く、3年4月現在収穫が続いており、2年間のプロジェクト期間では経営データをすべて収集・分析するには至っていない。今後の経営内容の詳細な分析において、本システムは強力なツールとして利用できるものと期待される。また、プロジェクトに参加している従業員の意識変化も見られ、好ましい効果が表れている。 

(9)普及啓発のための活動

 プロジェクトを円滑に遂行し、実証課題に対する着実な成果を得るための推進会議および農家や関係者に情報を幅広く発信するための実演会などを実施した。1年目は、キックオフ推進会議、現地検討会(写真7)、アグリビジネス創出フェアなどによる情報発信を順調に進めることができた。ホームページ「UFSMA」の開設に加え、微気象データの配信も開始した。NHKなどの取材もあり、プロジェクトの使命の一つである啓発活動に力を入れた。令和2年2月には、徳之島のさとうきびスマート農業プロジェクト(畑H05)チームと沖縄本島および南大東島で研修会を実施し、5月頃に徳之島で合同シンポジウムを開催する話もあり、大いに盛り上がった。ところが、新型コロナウイルス感染症(COVID–19)の感染拡大に伴って状況は一変した。イベントはもとより実証活動にも支障が出る事態となったが、この中でも毎月実施していた月例会はオンライン開催も含めて継続することができた。人を集めてのイベントも人数制限を行うことで辛うじて実施することができ、2年目に沖縄県立農業大学校でスマート農業に関する特別講義を開催したことは特筆すべきである。講義の他にスマート農機やドローンのデモンストレーションも行い、好評を博した(写真8)。学生の声を聞き、「かっこいい」という意味の「スマート」も大事な要素であることがわかった。若い学生への教育は今後の展開に大きな力を発揮するものと期待している。
 

 

 

2.総括

(1)3作型における主要作業のGNSS自動操舵作業データを用いて「自動操舵標準作業体系」を策定し、シミュレーションによって各作型の省力化率、オペレータコスト低減率を評価した。

(2)スマート農機の導入は持続可能な経営の保証につながることを確認できた。高精度な植え付けや収穫が可能な熟練オペレータは1人しかいなかったが、スマート農機によって複数人がそれに近い能力を獲得した。これは地域の生産力維持の観点から本プロジェクトの最大の効果の一つと言える。

(3)GNSSインフラとして4カ所に固定基地局を設置し、島内全域で自動操舵できる体制を構築した。RTK-GPSが不安定化する課題には引き続き取り組む必要がある。

(4)生育情報および生育環境情報の効率的収集およびGISベース営農支援システムによるそれらの統合については所期の目標を達成できた。今後、これらの情報利用とデータ収集・解析の継続によって、さとうきびの増収と高品質化、経営改善への本格的活用が期待される。

 個々の成果に関する詳細な報告は学術誌を中心に公表する予定である。また、ウフスマ・プロジェクトのホームページ「UFSMA」は当面継続して情報発信を続けたい。これはウフスマ・プロジェクトの活動を継続するために設立した「さとうきびスマート農業研究ネットワーク」のホームページとしても機能する。

3.普及に向けた課題

(1)さとうきびのスマート農業の普及・定着に向けた足掛かりはできたが、農家だけでは実現が難しいため、これを外部から支える仕組みづくりが重要な課題であることを認識できた。

(2)さとうきびのスマート農業技術は、5項目(ロボット系、自動化・リモート化施設系、ドローン系、情報系T、情報系U)に分類できる。普及に向けて農家の観点から各項目を評価し、外部支援を必要とする内容を整理した。

 本プロジェクトで明らかになったこれらの課題については別報で紹介したい。

謝辞

 さとうきびのスマート農業はまさに夢物語であったが、本プロジェクトで身近な手の届くものになった。これはさとうきびスマート農業時代の幕開けを告げる画期的なもので、今後の普及と展開に大きな力を発揮しよう。最後に、本プロジェクト実施の機会と支援をいただいた農林水産省および国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構、また、実証の遂行に的確なアドバイスをもらった九州沖縄農業研究センター研究推進部研究推進室の相原貴之氏に深く感謝申し上げます。

参考文献

1)南大東スマート農業実証コンソーシアム(2019)「ウフスマ・プロジェクトが始動〜南大東村におけるスマート農業技術の開発・実証に向けて〜」『砂糖類・でん粉情報』(2019年9月号)独立行政法人農畜産業振興機構
2)佐藤哲史、岡久季(2019)「自動操舵システムを活用した作業受託の取り組み〜農業生産法人アグリサポート南大東株式会社〜」『砂糖類・でん粉情報』(2019年4月号)独立行政法人農畜産業振興機構
3)農林水産省「ドローンで使用可能な農薬」
https://www.maff.go.jp/j/kanbo/smart/nouyaku.html〉(2021年6月11日アクセス)

 
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
Tel:03-3583-9272