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3. 世界の砂糖需給に影響を与える諸国の動向(2021年7月時点予測)

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最終更新日:2021年8月10日

3. 世界の砂糖需給に影響を与える諸国の動向(2021年7月時点予測)

2021年8月

ブラジル
2021/22年度の砂糖生産量はかなり大きく、輸出量は大幅に減少する見込み  
 LMC International(農産物の需給などを調査する英国の民間調査会社)による2021年7月時点の予測によると(以下、特段の断りがない限り同予測に基づく記述)、2021/22年度(4月〜翌3月)のサトウキビ収穫面積は、863万ヘクタール(前年度比0.8%減)とわずかに減少すると見込まれる(表2)。サトウキビ生産量は、生育期間における降雨量が少なく、単収が減少することで、5億9100万トン(同10.1%減)とかなりの程度減少すると見込まれる。砂糖生産量は、国際価格の上昇や新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によるバイオエタノール需要の不透明感などを背景に、前年度に引き続き多くの製糖業者が砂糖の生産割合を高めると予想されるものの、原料の減産を受けて、3881万トン(粗糖換算〈以下、特段の断りがない限り砂糖に係る数量は粗糖換算〉、同13.0%減)とかなり大きく減少すると見込まれる。輸出量も、砂糖の減産を背景に、2749万トン(同19.0%減)と大幅に減少すると見込まれる。
表2
(参考)ブラジル
インド
2020/21年度は増産するも、輸出促進策の発表の遅れなどを受け、輸出量はわずかに減少する見込み  
 2020/21年度(10月〜翌9月)のサトウキビの収穫面積は、豪雨による大規模な圃場(ほじょう)の浸水被害に見舞われた前年度からの反動で、489万ヘクタール(前年度比5.3%増)とやや増加すると見込まれる(表3)。ウッタル・プラデーシュ州で赤腐病(red rot)(注1)の被害が確認されているものの、マハラシュトラ州では、年間降雨量が集中するモンスーン期(6〜9月)における降雨が潤沢であったことから、サトウキビ生産量は4億198万トン(同8.8%増)とかなりの程度、砂糖生産量は3343万トン(同13.6%増)とかなり大きく増加すると見込まれる。輸出量は、COVID-19による物流の混乱は解消しつつあることで、足元の輸出は復調傾向にあるものの、輸出促進策の政府発表の遅延も影響するなどして、結果として前年度ほどの輸出水準には届かず、822万トン(同0.8%減)とわずかに減少すると見込まれる。

(注1)真菌の感染によって引き起こされる病気で、茎の内部が腐り、赤色に変色する。サトウキビの単収や砂糖の回収率に深刻な影響を与えるとされている。
(注2)インド政府の2020/21年度における砂糖の輸出政策の経緯については、『砂糖類・でん粉情報』2020年11月号のインドの項「ISMA、2020/21年度における砂糖の輸出政策の早期発表を首相官邸に要請」(https://www.alic.go.jp/joho-s/joho07_002327.html)も参照されたい。


インド製糖協会、輸出補助金政策の早期決定を政府に要請  
 インド製糖協会(ISMA)の事務局長は現地紙の取材に対し、10月から始まる2021/22年度(10月〜翌9月)は、インド政府が速やかに輸出補助金政策を発表することで、600万トンの砂糖輸出が可能となると述べた。  

 2021/22年度の世界の砂糖需給は、砂糖の国際価格が堅調な推移が見込まれる中で、主産国であるブラジルとタイでは干ばつの影響による減産が見込まれ、その結果、世界全体で生産量は1500万トン減少し、500万トンの供給不足が生じると予測されている。  

 このような見通しがある中、同事務局長によると、インドには現在、400万トン程度の砂糖の余剰在庫があるとされ、来年度も引き続き余剰生産となる可能性が高いと見込まれている。余剰在庫により製糖業者は経営難に直面し、サトウキビ代の支払い遅延といった数々の問題を抱えている。輸出促進により余剰在庫が削減できるため、同国政府が輸出補助金政策を早急に発表することで、世界的な需要見込に応えることができるとしている。前年度は、財政状況の悪化などから政策の決定が年度開始後の12月にずれ込んだことで、同国内の製糖企業は対応に出遅れ、砂糖輸出の拡大が図れなかったとしている。
表3
(参考)インド
中国
2020/21年度の輸入量は、かなりの程度増加する見込み  
 2020/21年度(10月〜翌9月)のサトウキビの収穫面積は、雲南省では面積の増加が見られるものの、広西チワン族自治区と広東省での面積減少を受けて、116万ヘクタール(前年度比1.6%減)とわずかに減少し、サトウキビ生産量も、7360万トン(同3.5%減)とやや減少すると見込まれる(表4)。また、同年度のてん菜の収穫面積は、内モンゴル自治区において、てん菜の買い取り価格が引き上げられたことから、生産者は作付面積を拡大し、収穫面積は23万ヘクタール(同8.8%増)とかなりの程度増加すると見込まれ、てん菜生産量も、単収の増加に伴い、1238万トン(同13.6%増)とかなり大きく増加すると見込まれる。  

 砂糖生産量は、1153万トン(同2.4%増)とわずかに増加すると見込まれる。輸入量は、713万トン(同6.7%増)とかなりの程度増加すると見込まれる。

中国、2020/21年度の砂糖輸入量は過去最高水準に  
 中国税関総署は6月18日、2021年5月の砂糖輸入量は前月同の18万トンであると発表した。これは、前年同月の輸入数量との比較で30万トンの減少(前年同月比38.5%減)となるが、2020/21年度(10月〜翌9月)5月までの累計では411万トンと、前年度同期の182万トンから大幅に増加し、年度当初の8カ月間の砂糖輸入量としては過去最高となった。  

 同国では、2020年5月21日に砂糖のセーフガード措置が失効し、関税割当外の砂糖に対する追加関税(35%)が解除された(注)ことにより、2020年8月以降、毎月の砂糖輸入量は前年同月を上回って推移していた。

(注)追加関税の解除の詳細については、2020年6月12日付海外情報「関税割当枠外の砂糖への追加関税を撤廃(中国)」(https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_002725.html)を参照されたい。
表4
(参考)中国
EU
2020/21年度の輸出量は、かなり大きく減少する見込み  
 2020/21年度(10月〜翌9月)のてん菜の収穫面積は148万ヘクタール(前年度比2.8%減)とわずかに減少すると見込まれる(表5)。てん菜生産量は、EU最大のてん菜生産国であるフランスで感染が広がる()黄病(おうびょう)(注)の被害を受けて、9931万トン(同9.7%減)とかなりの程度減少すると見込まれる。てん菜生産量の落ち込みにより、砂糖生産量は1519万トン(同10.4%減)とかなりの程度減少すると見込まれる。輸出量は、砂糖生産量の減少によって輸出余力が低下し、122万トン(同15.0%減)とかなり大きく減少すると見込まれる。

(注)アブラムシによって媒介されるウイルス性の病気で、葉が黄色く変色し、てん菜の単収や砂糖の回収率の低下を引き起こすとされている。
表5
(参考)EU
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農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
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