2020/21年度は増産するも、輸出促進策の発表の遅れなどを受け、輸出量はわずかに減少する見込み
2020/21年度(10月〜翌9月)のサトウキビの収穫面積は、豪雨による大規模な
圃場の浸水被害に見舞われた前年度からの反動で、489万ヘクタール(前年度比5.3%増)とやや増加すると見込まれる(表3)。ウッタル・プラデーシュ州で赤腐病(red rot)
(注1)の被害が確認されているものの、マハラシュトラ州では、年間降雨量が集中するモンスーン期(6〜9月)における降雨が潤沢であったことから、サトウキビ生産量は4億198万トン(同8.8%増)とかなりの程度、砂糖生産量は3343万トン(同13.6%増)とかなり大きく増加すると見込まれる。輸出量は、COVID-19による物流の混乱は解消しつつあることで、足元の輸出は復調傾向にあるものの、輸出促進策の政府発表の遅延も影響するなどして、結果として前年度ほどの輸出水準には届かず、822万トン(同0.8%減)とわずかに減少すると見込まれる。
(注1)真菌の感染によって引き起こされる病気で、茎の内部が腐り、赤色に変色する。サトウキビの単収や砂糖の回収率に深刻な影響を与えるとされている。
(注2)インド政府の2020/21年度における砂糖の輸出政策の経緯については、『砂糖類・でん粉情報』2020年11月号のインドの項「ISMA、2020/21年度における砂糖の輸出政策の早期発表を首相官邸に要請」(https://www.alic.go.jp/joho-s/joho07_002327.html)も参照されたい。
インド製糖協会、輸出補助金政策の早期決定を政府に要請
インド製糖協会(ISMA)の事務局長は現地紙の取材に対し、10月から始まる2021/22年度(10月〜翌9月)は、インド政府が速やかに輸出補助金政策を発表することで、600万トンの砂糖輸出が可能となると述べた。
2021/22年度の世界の砂糖需給は、砂糖の国際価格が堅調な推移が見込まれる中で、主産国であるブラジルとタイでは干ばつの影響による減産が見込まれ、その結果、世界全体で生産量は1500万トン減少し、500万トンの供給不足が生じると予測されている。
このような見通しがある中、同事務局長によると、インドには現在、400万トン程度の砂糖の余剰在庫があるとされ、来年度も引き続き余剰生産となる可能性が高いと見込まれている。余剰在庫により製糖業者は経営難に直面し、サトウキビ代の支払い遅延といった数々の問題を抱えている。輸出促進により余剰在庫が削減できるため、同国政府が輸出補助金政策を早急に発表することで、世界的な需要見込に応えることができるとしている。前年度は、財政状況の悪化などから政策の決定が年度開始後の12月にずれ込んだことで、同国内の製糖企業は対応に出遅れ、砂糖輸出の拡大が図れなかったとしている。