3. 世界の砂糖需給に影響を与える諸国の動向(2021年8月時点予測)
最終更新日:2021年9月10日
3. 世界の砂糖需給に影響を与える諸国の動向(2021年8月時点予測)
2021年9月
2021/22年度の砂糖生産量はかなり大きく、輸出量は大幅に減少する見込み
LMC International(農産物の需給などを調査する英国の民間調査会社)による2021年8月時点の予測によると(以下、特段の断りがない限り同予測に基づく記述)、2021/22年度(4月〜翌3月)のサトウキビ収穫面積は、863万ヘクタール(前年度比0.8%減)とわずかに減少すると見込まれる(表2)。サトウキビ生産量は、生育期間における降雨量が少なく、単収が減少することで、5億9100万トン(同10.1%減)とかなりの程度減少すると見込まれる。砂糖生産量は、国際価格の上昇や新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によるバイオエタノール需要の不透明感などを背景に、前年度に引き続き多くの製糖業者が砂糖の生産割合を高めると予想されるものの、原料の減産を受けて、3829万トン(粗糖換算〈以下、特段の断りがない限り砂糖に係る数量は粗糖換算〉、同14.1%減)とかなり大きく減少すると見込まれる。輸出量も、砂糖の減産を背景に、2732万トン(同19.7%減)と大幅に減少すると見込まれる。
一部のサトウキビ産地で、大寒波による霜害が発生
現地報道によると、現在冬季のブラジルの一部地域では、6月末以降、南極からの寒波に見舞われ、一部のサトウキビ産地で霜害が発生した。UNICAによると、霜害を受けたサトウキビの早刈りの影響により、中南部地域における7月前半のサトウキビの単収は1ヘクタール当たり68.2トン(前年同期比13.7%減)となった。最初の霜害は6月30日から7月1日にかけて発生し、7月20日に発生した2回目の霜は、1994年以降で最も深刻なものとされ、UNICAはこの度のサトウキビの霜害は甚大な可能性があるとコメントした。
同国では、前年から続く干ばつの影響でサトウキビやトウモロコシ、コーヒーなど多くの農産物の減産が予測されていたが、今回の霜害は砂糖産業にとってさらなる追い打ちとなる可能性が懸念されている。
2020/21年度は増産するも、輸出促進策の発表の遅れなどを受け、輸出量はやや減少する見込み
2020/21年度(10月〜翌9月)のサトウキビの収穫面積は、豪雨による大規模な
圃場の浸水被害に見舞われた前年度からの反動で、489万ヘクタール(前年度比5.3%増)とやや増加すると見込まれる(表3)。ウッタル・プラデーシュ州で赤腐病(red rot)
(注1)の被害が確認されているものの、マハラシュトラ州では、年間降雨量が集中するモンスーン期(6〜9月)における降雨が潤沢であったことから、サトウキビ生産量は4億198万トン(同8.8%増)とかなりの程度、砂糖生産量は3343万トン(同13.6%増)とかなり大きく増加すると見込まれる。輸出量は、輸出促進策の政府発表の遅延
(注2)が影響するなどして、結果として前年度ほどの輸出水準には届かず、793万トン(同3.9%減)とやや減少すると見込まれる。
(注1)真菌の感染によって引き起こされる病気で、茎の内部が腐り、赤色に変色する。サトウキビの単収や砂糖の回収率に深刻な影響を与えるとされている。
(注2)インド政府の2020/21年度における砂糖の輸出政策の経緯については、『砂糖類・でん粉情報』2020年11月号のインドの項「ISMA、2020/21年度における砂糖の輸出政策の早期発表を首相官邸に要請」(https://www.alic.go.jp/joho-s/joho07_002327.html)も参照されたい。
2020/21年度の輸入量は、かなりの程度増加する見込み
2020/21年度(10月〜翌9月)のサトウキビの収穫面積は、雲南省では増加が見られるものの、広西チワン族自治区と広東省での減少を受けて、116万ヘクタール(前年度比1.6%減)とわずかに減少し、サトウキビ生産量も、7360万トン(同3.5%減)とやや減少すると見込まれる(表4)。また、同年度のてん菜の収穫面積は、内モンゴル自治区において、てん菜の買い取り価格が引き上げられたことから、生産者は作付面積を拡大し、収穫面積は23万ヘクタール(同8.8%増)とかなりの程度増加すると見込まれ、てん菜生産量も、単収の増加に伴い1238万トン(同13.6%増)とかなり大きく増加すると見込まれる。
砂糖生産量は、1153万トン(同2.4%増)とわずかに増加すると見込まれる。輸入量は、714万トン(同6.8%増)とかなりの程度増加すると見込まれる。
2020/21年度の輸出量は、大幅に減少する見込み
2020/21年度(10月〜翌9月)のてん菜の収穫面積は148万ヘクタール(前年度比2.8%減)とわずかに減少すると見込まれる(表5)。てん菜生産量は、EU最大のてん菜生産国であるフランスで感染が広がる萎黄病(注)の被害を受けて、9890万トン(同10.1%減)とかなりの程度減少すると見込まれる。てん菜生産量の落ち込みにより、砂糖生産量は1520万トン(同10.4%減)とかなりの程度減少すると見込まれる。輸出量は、砂糖生産量の減少によって輸出余力が低下し、112万トン(同22.4%減)と大幅に減少すると見込まれる。
(注)アブラムシによって媒介されるウイルス性の病気で、葉が黄色く変色し、てん菜の単収や砂糖の回収率の低下を引き起こすとされている。
欧州食品安全機関、糖類摂取量の削減に関する見解を発表
欧州食品安全機関(EFSA)は7月22日、糖類の摂取に関する科学的な見解の草案を公表した。EFSAは、デンマーク、フィンランド、アイスランド、ノルウェー、スウェーデンの5カ国から2010年に実施した糖類の安全性評価を更新するよう要望を受け、糖類の摂取とさまざまな疾病(注1)との関連性について、近年発表された3万件以上の論文に基づき改めて調査した。その結果、糖類摂取の耐容上限量(UL)(注2)の設定は不可能であるものの、可能な限り摂取量を削減することが望ましいと結論づけた。EFSAは、草案に対するパブリック・コメントの募集を9月30日まで行うと共に、9月21日に草案について公に議論を行う予定であるとしている。
これに対し欧州砂糖製造者協会(CEFS)は、草案の発表に当たりEFSAが十分な時間をかけて科学的な調査を実施したことに謝意を示しつつも、パブリック・コメント募集に対し同協会からの意見を提出する予定であると述べた。
(注1)肥満、2型糖尿病、心血管疾患、痛風、虫歯など。
(注2)健康障害をもたらす危険がないとみなされる習慣的な摂取量の上限値。
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