1978年から2020年にかけて、中国のてん菜生産は大きく変化した。1978年以降の作付面積を見ると、1990年代前半にかけて増加傾向で推移し、1991年には過去最高となる78万3000ヘクタールに達した(図2)。しかし、1990年代後半から減少に転じ、2003年以降は10〜20万ヘクタール台で推移している。
中国の研究者である韓秉進ほかが中国のてん菜生産について行った四つの段階分けによると、1978〜1987年を「急速な発展」、1988〜1998年を「生産のピーク」、1999〜2003年を「急激な減少」、2003年〜報告書公表時までを「生産の低調」
[1]の各段階に区分することができ、現在も作付面積の少ない状態が継続している。また、1990年代にはてん菜が糖料作物(てん菜およびサトウキビ)の作付面積の中で一定の割合を占めていたのに対し、2000年代初頭から、糖料作物の作付面積に占めるてん菜の割合は下降を続けている。てん菜の作付面積減少の主な理由としては、てん菜の栽培コストが競合作物のトウモロコシより高く利益が少ないため、トウモロコシへの転作が進んだことや、てん菜糖より生産コストの低い甘しゃ糖がてん菜糖の市場を奪ったことなどが挙げられる
(注)。なお、中国糖業協会の最新情報によると、2020/21製糖期(9月末〜翌5月末)の同国のてん菜作付面積は約23万1400ヘクタールで、直近5年間では最大であった。
(注)中国のサトウキビおよび甘しゃ糖の最近の生産動向については、本誌「砂糖の国際需給 3.世界の砂糖需給に影響を与える諸国の動向(2021年10月時点予測)」の中国の項(12ページ)を参照されたい。
てん菜生産量は1978年以降、増加傾向で推移し、1996年に過去最高の1673万トンに達した(図3)。その後、作付面積の減少に伴い1999年と2003年に著しい減少が見られ、2004年には近年では最低となる586万トンまで減少した。てん菜生産量はその後かなり大きく変動しているが、そこにはある程度の周期性も見られ、7〜8年が一つの周期となっていることが分かる。
一方、てん菜の単収はてん菜生産量と異なり、1978年から2019年にかけて安定的に増加した。1978年の単収は1ヘクタール当たり8トンであったが、2015年には同58.6トンに達しており、この40年間の年平均増加率
(注)は4.93%であった。これは、てん菜生産において、栽培技術の向上や、品種改良で顕著な進歩を遂げてきたことが理由と考えられる。
なお、2016年以降の単収は減少傾向で推移したものの、2019年には再び増加して同56トンの水準まで回復している。