種子島は、九州本土の最南端である佐多岬から南方40キロメートル地点に位置している。同島は種子島、屋久島、口永良部島、馬毛島の4島から成る熊毛地域に属しており、西之表市、中種子町、南種子町の一市二町で構成されている(図4)。総面積は4万5259ヘクタールであり、県全体の4.9%を占めている。比較的平坦な地形が多いことから農耕地に恵まれており、耕地面積は8690ヘクタールと、島全体の19%を占めている。
主な品目はサトウキビ、かんしょ、肉用牛であり、これら三つで、農業生産額全体の6割以上を占めている。
耕種部門のうちサトウキビは、作付面積、生産額が最も大きく、同島における基幹的な作物である。これら上位3品目のほか、酪農、茶、米も盛んであり、茶、米については、温暖な気候を生かした早出し出荷が行われており、日本一早い新米、新茶の産地として有名である。また、近年では、フラワーアレンジメントに用いられるレザーリーフファンの産地化も進んでいる(表3)。
サトウキビ産地として種子島は、国内の主要な産地の中では北限地といわれており、他の生産地と比較して、年間平均気温は低くなっている。冬季にはこの温度差がさらに顕著となり降霜による被害が発生することもある(表4)。そのため、種子島では、低温や降霜による被害を受けやすい夏植えは避けられる傾向にあり、作付面積に占める夏植え面積の割合は他の地域と比較して小さくなっている(図5)。
また、種子島では低温による発芽や
萌芽不良を防ぐため、新植時や株出し管理の際に、マルチ被覆が行われている。マルチ被覆は単収の増加に大きな効果があることが知られていることから、株出し栽培の場合、収穫後可能な限り早期に実施することが望ましいとされているものの、労働力不足などにより、株出し栽培においてマルチ被覆を行っている
圃場は全体の3割弱にとどまっている(表2)。
栽培品種は農林8号と18号が多く、この二つの品種が収穫面積全体の約8割を占めている(図6)。種子島では長年の間、農林8号が主要品種として、高い作付割合を維持していたが、ハーベスターの普及に伴い、収穫時の株の引き抜きなどにより、株出し栽培での単収低下が問題となったことから、近年は作付割合が減少している。
そのため種子島では、ハーベスターによる収穫を行っても引き抜きが発生しにくく、株出し栽培における単収に優れる新品種が求められていた。
こうした状況の中、令和元年に、熊毛地域向けの推奨品種として選定された新品種「はるのおうぎ」は、機械収穫による引き抜きが発生しにくく、萌芽性に優れるといった特徴を有しており、今後、同品種の普及による単収回復が期待されている。