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3. 世界の砂糖需給に影響を与える諸国の動向(2021年11月時点予測)

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最終更新日:2021年12月10日

3. 世界の砂糖需給に影響を与える諸国の動向(2021年11月時点予測)

2021年12月

ブラジル
2021/22年度の砂糖生産量はかなり大きく、輸出量は大幅に減少する見込み    
 LMC International(農産物の需給などを調査する英国の民間調査会社)による2021年11月時点の予測によると(以下、特段の断りがない限り同予測に基づく記述)、2021/22年度(4月〜翌3月)のサトウキビ収穫面積は、869万ヘクタール(前年度比0.2%減)と横ばいで推移すると見込まれる(表2)。サトウキビ生産量は、中南部地域において乾燥気候が継続している上、7月頃に霜害も発生したことにより、5億7000万トン(同13.3%減)とかなり大きく減少すると見込まれる。砂糖生産量は、原料の減産を受けて3771万トン(粗糖換算〈以下、特段の断りがない限り砂糖に係る数量は粗糖換算〉、同15.4%減)とかなり大きく減少すると見込まれる。輸出量も、砂糖の減産や、コロナ禍における物流の混乱を背景とした海上運賃の上昇を受けて、インドネシアやアフリカ諸国などで同国産の粗糖需要が低下していることから、2673万トン(同21.5%減)と大幅に減少すると見込まれる。
表2
 
インド
2021/22年度の砂糖生産量はわずかに増加し、輸出量はかなり大きく減少する見込み  
 2021/22年度(10月〜翌9月)のサトウキビの収穫面積は、500万ヘクタール(前年度比2.3%増)とわずかに増加すると見込まれる(表3)。主産地の降雨量は平年並みまたは平均を上回っており、生育状況は順調であることから、サトウキビ生産量は4億2227万トン(同5.0%増)とやや増加が見込まれる。砂糖生産量は、サトウキビの一部がエタノール生産に仕向けられることを踏まえ、3407万トン(同1.9%増)とわずかに増加すると見込まれる。輸出量は、さらなる国際価格の上昇を期待して、国内製糖業者が年度後半の輸出契約を見極めている状況にあることや、海上運賃の高騰による粗糖の輸入量減少を受けて、海外産粗糖由来の精製糖輸出量の減少が見込まれることから、720万トン(同14.8%減)とかなり大きな減少が見込まれるものの、今後の相場などの輸出環境の好転により、輸出量の減少幅が縮小する可能性も示されている。

インド政府、今年度の砂糖輸出契約が180万トン分に達したと公表  
 現地報道によると、全インド砂糖貿易協会(AISTA:All India Sugar Trade Association)(注1)が10月26日に開催したウェビナーにおいて、インド政府の消費者問題・食糧・公共配給省次官は、2021/22年度(10月〜翌9月)の砂糖輸出契約が180万トン分に達したことを明らかにした。また、同次官は、主要輸出先であるアフガニスタンの国内情勢の不安定さはインドの砂糖輸出に打撃を与える可能性があるとして、製糖業者に対し輸出先の新規開拓に取り組むよう進言した。さらに、スリランカの外貨不足(注2)や、インドネシアでのタイ産砂糖との競合についても言及したうえで、スリランカ向け砂糖輸出の拡大に向けて業界内での新たな取り決めの構築が必要であるとAISTA関係者に提言した。  

 インド政府は、同国の砂糖の需給バランスを改善するため、同年度に最低600万トン分の砂糖を輸出に回すよう、製糖業者に要請している(注3)。また、同政府はサトウキビの内需拡大に向け、サトウキビの搾り汁や糖みつのエタノール生産への利用も推進しており、同年度には約250万トン分の砂糖がガソリン混合用のエタノール生産に仕向けられると見込まれている。

(注1)製糖業者、貿易業者、砂糖の大口仕入れ先など、インド国内の砂糖産業関係者で構成される団体。
(注2)スリランカでは、対外債務の拡大に加えて、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大によって主要産業の観光業が低迷したことで、輸入に使用する外貨が不足している状況にあり、インド産粗糖の輸入量は6月以降、精製糖の輸入量は7月以降大幅に減少している。
(注3)インド政府は、砂糖の余剰在庫の解消に向けて砂糖の輸出とエタノール生産を促進している。詳細については、2021年10月20日付海外情報「政府目標達成に向け、サトウキビ由来のエタノール生産を推進(インド)」(https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_003077.html)を参照されたい。
表3
(参考)インド
中国
2021/22年度の砂糖生産量はやや減少し、輸入量は大幅に減少する見込み  
 2021/22年度(10月〜翌9月)のサトウキビの収穫面積は、116万ヘクタール(前年度比0.6%増)とわずかな増加が見込まれる(表4)。サトウキビ生産量は、主産地である広西チワン族自治区や雲南省の天候が良好であるため、7475万トン(同1.6%増)とわずかに増加すると見込まれる。一方、同年度のてん菜の収穫面積は、トウモロコシへ転作する農家の増加により(注)、17万ヘクタール(同27.1%減)と大幅に減少し、てん菜生産量も、883万トン(同28.7%減)と1000万トンを下回ると見込まれる。  

 砂糖生産量は、てん菜糖生産量の減少を受けて1094万トン(同5.1%減)とやや減少すると見込まれる。輸入量は、9月の輸入が前年同月を上回るペースで推移し、国内の砂糖在庫がさらに積み増しされたことを受けて前月予測から下方修正され、525万トン(同35.4%減)と大幅に減少すると見込まれる。

(注)同国では、アフリカ豚熱からの回復による豚飼養頭数の増加を受けて、飼料用トウモロコシなどの需要が高まりを見せている。詳細は、2021年6月17日付海外情報「中国農業展望報告(2021-2030)を発表(飼料編)(中国)」(https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_002967.html)を参照されたい。

広西チワン族自治区、気象災害対策として人工降雨技術の改善などを発表  
 中国最大のサトウキビ産地である広西チワン族自治区(図3)の砂糖産業開発局は10月19日、同自治区気象局との連名で、同自治区内の地方自治体や製糖業者、気象関係組織などに対し、気象サービスの強化に関する通知を発出した。今回の通知においては、近年、サトウキビの主産地で干ばつなどの気象災害が多発し、地域の砂糖産業の発展に深刻な影響を与えている中、気象災害によるサトウキビ生産への影響を抑制し、砂糖産業の発展や農村の活性化などを図ることを目的に、次の3項目の強化策が打ち出された。

(1)人工降雨技術の改善および干ばつ対策の強化
(2)砂糖産業へ提供する気象予報サービスの品質向上
(3)砂糖産業と気象部門の連携  

 中でも人工降雨については、これまで干ばつの緩和という重要な役割を果たしてきたものの、同自治区のサトウキビほ場は広範囲に分布しており、現状では人工降雨の適用範囲が不十分であるため、さらなる技術改善が必要であると説明している。


 
表4
 
EU
2021/22年度の輸出量は、大幅に増加する見込み  
 2021/22年度(10月〜翌9月)のてん菜の収穫面積は、減少傾向の継続が予測される中、146万ヘクタール(前年度比0.9%減)とわずかな減少が見込まれる(表5)。てん菜生産量は、干ばつの影響を受けた過去2年に比べ、今期は生育期間の降雨量が多く、生育状況が順調であることを受けて、1億1033万トン(同11.8%増)とかなり大きく増加すると見込まれる。砂糖生産量は、てん菜の増産を受けて1715万トン(同13.3%増)とかなり大きく増加すると見込まれる。輸出量は、砂糖生産量の増加や国際価格の堅調な推移に伴い、153万トン(同22.6%増)と大幅に増加すると見込まれる。
表5
(参考)EU
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
Tel:03-3583-9272