2021/22年度の輸出量は、わずかに減少する見込み
2021/22年度(10月〜翌9月)のてん菜の収穫面積は、146万ヘクタール(前年度比0.9%減)とわずかな減少が見込まれる(表5)。てん菜生産量は、干ばつの影響を受けた過去2年に比べ、今期は生育期間の降雨量が多く、生育状況が順調であることから、1億981万トン(同11.3%増)とかなり大きく増加すると見込まれる。砂糖生産量は、てん菜の増産を受けて1724万トン(同13.9%増)とかなり大きく増加すると見込まれる。輸出量は、EU域内における砂糖需要の回復や現状の在庫水準などを踏まえ、124万トン(同1.6%減)とわずかに減少すると見込まれる。
欧州食品安全機関、ネオニコチノイド系農薬の緊急使用の正当性を容認
欧州食品安全機関(EFSA)は11月18日、2020年および2021年のEU域内におけるてん菜に対するネオニコチノイド系農薬の緊急使用の正当性評価が完了したと発表した。
従来ネオニコチノイド系農薬は、てん菜生産において
萎黄病 (注1)を媒介するアブラムシの防除に最も有効な薬剤とされていたが、ミツバチなど生態系に悪影響を及ぼす可能性から、EUでは2018年に屋外での使用が禁止されるなど、同農薬の規制強化が進んでいる
(注2)。しかしながら、萎黄病の流行する中、同農薬に代わる有効な防除策がないことから、主産国であるフランスをはじめ多くのEU加盟国で同農薬の緊急使用が認められている。このため、欧州委員会は2020年10月、規則(EC)No 1107/2009に基づき、各加盟国における同農薬のてん菜への緊急使用の正当性(他の合理的な手段では阻止することのできない危機的状況によるものであったか)について検証するよう、EFSAに対して要請していた。
今回の評価は、この2カ年の間に11カ国
(注3)で緊急使用された4種類のネオニコチノイド系農薬(クロチアニジン、イミダクロプリド、チアメトキサム、チアクロプリド)計17件を対象としたもので、評価結果としては、代替農薬や他の駆除方法が存在しなかったことや、アブラムシが代替農薬へ耐性を持つ可能性があったことを理由に、全ての緊急使用は正当化されるものであったと結論付けた。
(注1)アブラムシによって媒介されるウイルス性の病気で、てん菜の単収減少を引き起こす。
(注2)クロチアニジン、イミダクロプリドおよびチアメトキサムの使用禁止の経緯については、2018年5月18日付け海外情報「欧州委員会、3種類のネオニコチノイド系農薬の屋外での使用禁止を決定(EU)」
https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_002218.html、チアクロプリドの使用禁止の経緯については、『砂糖類・でん粉情報』2020年6月号「砂糖の国際需給 3. 世界の砂糖需給に影響を与える諸国の動向」のEUの項
https://www.alic.go.jp/joho-s/joho07_002228.htmlを参照されたい。
(注3)ベルギー、クロアチア、デンマーク、フィンランド、フランス、ドイツ、リトアニア、ポーランド、ルーマニア、スロバキア、スペイン。
ドイツ、2022年はネオニコチノイド系農薬の緊急使用が許可されず
11月12日付けの現地報道によると、ドイツ連邦消費者保護・食品安全庁(BVL)は、ドイツの製糖協会(WVZ)から申請のあった、ネオニコチノイド系農薬によるてん菜種子のコーティング処理について、2022年は緊急事態が見込まれないため許可を行わなかったとしている。ただし、局地的にアブラムシが発生した場合は、同農薬の緊急使用を許可する可能性もあると報じられている。
同国では、2021年に同農薬のてん菜種子への緊急使用が国内約3分の1(約12万7000ヘクタール)の
圃場 で許可されたが、天候が良好だったことから、萎黄病を媒介するアブラムシの発生数が前年より減少していた。
なお、WVZの予測(11月15日時点)によると、2021/22年度(10月〜翌9月)の同国のてん菜生産量は約2900万トン(前年度比14.2%増
(注))と見込まれている。
(注)2020/21年度の生産量は、2020年11月16日時点の予測値。