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4.世界の砂糖需給に影響を与える諸国の動向(2021年12月時点予測)

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最終更新日:2022年1月11日

4.世界の砂糖需給に影響を与える諸国の動向(2021年12月時点予測)

2022年1月

ブラジル
2021/22年度の砂糖生産量はかなり大きく減少し、輸出量は大幅に減少する見込み
 2021/22年度(4月〜翌3月)のサトウキビ収穫面積は、877万ヘクタール(前年度比0.8%増)とわずかに増加すると見込まれる(表2)。サトウキビ生産量は、中南部地域において乾燥気候が継続している上、7月などに霜害も発生したことにより5億7900万トン(同11.9%減)とかなり大きく減少すると見込まれる。砂糖生産量は、サトウキビの減産を受けて3801万トン(同14.8%減)とかなり大きく減少すると見込まれる。輸出量も、砂糖の減産や、コロナ禍における物流の混乱を背景とした海上運賃の高騰を受けて、インドネシアやアフリカ諸国などで同国産の粗糖需要が低下していることから、2735万トン(同19.7%減)と大幅に減少すると見込まれる。

サンパウロ州政府農業研究所、サトウキビの新品種の商業利用を承認
 サンパウロ州政府農業研究所(IAC:Instituto Agronômico)は11月23日、3種のサトウキビ新品種の商業利用を承認したと発表した。これらの品種は、単収の向上に加え、機械による植え付けや刈り取りへの適応性(注)に焦点を当てて開発されたもので、主要な病害への耐性も高いとしている。IACによると、うち2種(IACSP04–6007、IACCTC05–9561)は、初期の成長速度が速く、早期に根元が日陰になることで雑草の生育が抑制されるため、除草剤使用量の削減が期待されている。残りの1種(IACCTC05–2562)は、初期の成長速度は遅いものの葉の量が少なく、葉からの水分蒸発量が少ないとされ、干ばつ発生時においても高い収量が期待されている。なお、これらの新品種は、それぞれの地域の事情や特徴に合わせて、サンパウロ州、ミナスジェライス州、ゴイアス州、マットグロッソ州、マットグロッソドスル州、パラナ州の6州での栽培が予定されている。

(注)サトウキビが倒伏せず垂直に伸びることや、茎の太さや高さの均一性を指す。
表2
(参考)ブラジル
インド
2021/22年度の砂糖生産量はわずかに減少し、輸出量は大幅に減少する見込み
 2021/22年度(10月〜翌9月)のサトウキビの収穫面積は、499万ヘクタール(前年度比2.0%増)とわずかに増加すると見込まれる(表3)。主産地の降雨量は平年並みまたは平均を上回っており、生育状況は順調であることから、サトウキビ生産量は4億1063万トン(同2.1%増)とわずかな増加が見込まれる。砂糖生産量は、北部で発生した大雨によるサトウキビの品質低下や、エタノールやグルの生産に仕向けられるサトウキビの増加により、3321万トン(同0.6%減)とわずかに減少すると見込まれる。輸出量は、国際価格の上昇を期待して、国内製糖業者が年度後半の輸出契約を見極めている状況にあることや、海上運賃の高騰による粗糖の輸入量減少を受けて、海外産粗糖を原料とした精製糖の輸出量が減少するとの予測などから、687万トン(同19.9%減)と大幅な減少が見込まれる。
表3
(参考)インド
中国
2021/22年度の砂糖生産量はかなりの程度減少し、輸入量は大幅に減少する見込み
 2021/22年度(10月〜翌9月)のサトウキビの収穫面積は、112万ヘクタール(前年度比3.6%減)とやや減少が見込まれる(表4)。サトウキビ生産量は、主産地である広西チワン族自治区や雲南省の天候が良好であるため、7389万トン(同0.4%増)とわずかに増加すると見込まれる。一方、同年度のてん菜の収穫面積は、トウモロコシへ転作する農家の増加により(注)、14万ヘクタール(同37.8%減)と大幅に減少し、てん菜生産量も、810万トン(同34.6%減)と1000万トンを大幅に下回ると見込まれる。

 砂糖生産量は、てん菜糖生産量の減少を受けて1084万トン(同6.0%減)とかなりの程度減少すると見込まれる。輸入量は、2021年の砂糖輸入が前年を上回るペースで推移し、国内の在庫の積み増しが想定されることから、598万トン(同27.7%減)と大幅に減少すると見込まれる。

(注)同国では、アフリカ豚熱からの回復による豚飼養頭数の増加を受けて、飼料用トウモロコシなどの需要が高まりを見せている。詳細は、2021年6月17日付海外情報「中国農業展望報告(2021−2030)を発表(飼料編)(中国)」https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_002967.htmlを参照されたい。
表4
(参考)中国
EU
2021/22年度の輸出量は、わずかに減少する見込み  
 2021/22年度(10月〜翌9月)のてん菜の収穫面積は、146万ヘクタール(前年度比0.9%減)とわずかな減少が見込まれる(表5)。てん菜生産量は、干ばつの影響を受けた過去2年に比べ、今期は生育期間の降雨量が多く、生育状況が順調であることから、1億981万トン(同11.3%増)とかなり大きく増加すると見込まれる。砂糖生産量は、てん菜の増産を受けて1724万トン(同13.9%増)とかなり大きく増加すると見込まれる。輸出量は、EU域内における砂糖需要の回復や現状の在庫水準などを踏まえ、124万トン(同1.6%減)とわずかに減少すると見込まれる。

欧州食品安全機関、ネオニコチノイド系農薬の緊急使用の正当性を容認  
 欧州食品安全機関(EFSA)は11月18日、2020年および2021年のEU域内におけるてん菜に対するネオニコチノイド系農薬の緊急使用の正当性評価が完了したと発表した。  

 従来ネオニコチノイド系農薬は、てん菜生産において萎黄病いおうびょう (注1)を媒介するアブラムシの防除に最も有効な薬剤とされていたが、ミツバチなど生態系に悪影響を及ぼす可能性から、EUでは2018年に屋外での使用が禁止されるなど、同農薬の規制強化が進んでいる(注2)。しかしながら、萎黄病の流行する中、同農薬に代わる有効な防除策がないことから、主産国であるフランスをはじめ多くのEU加盟国で同農薬の緊急使用が認められている。このため、欧州委員会は2020年10月、規則(EC)No 1107/2009に基づき、各加盟国における同農薬のてん菜への緊急使用の正当性(他の合理的な手段では阻止することのできない危機的状況によるものであったか)について検証するよう、EFSAに対して要請していた。  
 今回の評価は、この2カ年の間に11カ国(注3)で緊急使用された4種類のネオニコチノイド系農薬(クロチアニジン、イミダクロプリド、チアメトキサム、チアクロプリド)計17件を対象としたもので、評価結果としては、代替農薬や他の駆除方法が存在しなかったことや、アブラムシが代替農薬へ耐性を持つ可能性があったことを理由に、全ての緊急使用は正当化されるものであったと結論付けた。

(注1)アブラムシによって媒介されるウイルス性の病気で、てん菜の単収減少を引き起こす。
(注2)クロチアニジン、イミダクロプリドおよびチアメトキサムの使用禁止の経緯については、2018年5月18日付け海外情報「欧州委員会、3種類のネオニコチノイド系農薬の屋外での使用禁止を決定(EU)」
https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_002218.html、チアクロプリドの使用禁止の経緯については、『砂糖類・でん粉情報』2020年6月号「砂糖の国際需給 3. 世界の砂糖需給に影響を与える諸国の動向」のEUの項
https://www.alic.go.jp/joho-s/joho07_002228.htmlを参照されたい。
(注3)ベルギー、クロアチア、デンマーク、フィンランド、フランス、ドイツ、リトアニア、ポーランド、ルーマニア、スロバキア、スペイン。


ドイツ、2022年はネオニコチノイド系農薬の緊急使用が許可されず  
 11月12日付けの現地報道によると、ドイツ連邦消費者保護・食品安全庁(BVL)は、ドイツの製糖協会(WVZ)から申請のあった、ネオニコチノイド系農薬によるてん菜種子のコーティング処理について、2022年は緊急事態が見込まれないため許可を行わなかったとしている。ただし、局地的にアブラムシが発生した場合は、同農薬の緊急使用を許可する可能性もあると報じられている。  

 同国では、2021年に同農薬のてん菜種子への緊急使用が国内約3分の1(約12万7000ヘクタール)の圃場ほじょう で許可されたが、天候が良好だったことから、萎黄病を媒介するアブラムシの発生数が前年より減少していた。  

 なお、WVZの予測(11月15日時点)によると、2021/22年度(10月〜翌9月)の同国のてん菜生産量は約2900万トン(前年度比14.2%増(注))と見込まれている。

(注)2020/21年度の生産量は、2020年11月16日時点の予測値。
表5
(参考)EU
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農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
Tel:03-3583-9272