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3.世界の砂糖需給に影響を与える諸国の動向(2022年1月時点予測)

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最終更新日:2022年2月10日

3.世界の砂糖需給に影響を与える諸国の動向(2022年1月時点予測)

2022年2月

ブラジル
2021/22年度の生産量と輸出量は、前月予測から上方修正
 LMC International(農産物の需給などを調査する英国の民間調査会社)による2022年1月時点の予測によると(以下、特段の断りがない限り同予測に基づく記述)、2021/22年度(4月〜翌3月)のサトウキビ収穫面積は、868万ヘクタール(前年度比0.3%増)と横ばいで推移すると見込まれる(表2)。サトウキビ生産量は、中南部地域において乾燥気候が継続している上、7月などに霜害も発生したことにより5億8250万トン(同11.4%減)とかなり大きく減少すると見込まれる。砂糖生産量は、サトウキビの減産を受けて3810万トン(粗糖換算〈以下、特段の断りがない限り砂糖に係る数量は粗糖換算〉、同14.6%減)と、前月予測から改善されたものの、依然としてかなり大きく減少すると見込まれる。輸出量も同様に、砂糖の減産や、コロナ禍における物流の混乱を背景とした海上運賃の高騰を受けて、インドネシアやアフリカ諸国などで同国産の粗糖需要が低下していることから、2756万トン(同19.1%減)と依然として大幅に減少すると見込まれる。
表2
(参考)ブラジル
インド
2021/22年度の砂糖輸出量は、前月予測から上方修正
 2021/22年度(10月〜翌9月)のサトウキビの収穫面積は、499万ヘクタール(前年度比2.0%増)とわずかに増加すると見込まれる(表3)。主産地の降雨量は平年並みまたは平均を上回っており、生育状況は順調であることから、サトウキビ生産量は4億1063万トン(同2.1%増)とわずかな増加が見込まれる。砂糖生産量は、北部で発生した10月頃の大雨によるサトウキビの品質低下や、エタノールやグル(注1)の生産に仕向けられるサトウキビの増加により、3321万トン(同0.6%減)とわずかに減少すると見込まれる。輸出量は、粗糖の輸出が伸び悩む一方、精製糖の輸出は粗糖と比べて順調に行われている状況を受けて、前月予測から上方修正されたものの、依然として731万トン(同14.4%減)とかなり大きな減少が見込まれる。近年、インドの在庫状況が改善される中、2021年12月、世界貿易機関(WTO)紛争処理委員会(パネル)が公表したインド政府の砂糖政策に関する報告書では、同国のサトウキビの最低買い取り価格や砂糖の輸出補助金がWTO協定に違反していると結論付けられた(注2)。現時点において2021/22年度の輸出補助金政策は実施されていないものの、同国産砂糖の輸出価格が上昇基調にある中、今後の同国産砂糖輸出の動向が注目される。

(注1)グルとは、サトウキビの搾り汁を清浄化した後、オープンパン(釜炊き)で煮詰め、固形状にした含みつ糖のことで、現地では一般にジャガリーと称される。グルの製造の様子については、当機構Facebookの動画投稿欄(https://www.facebook.com/alicjapan/videos/?ref=page_internal)の【インドの伝統的な含みつ糖「グル」〜砂糖類・でん粉情報5月号に掲載しました〜】を参照されたい。
(注2)WTO紛争解決委の裁定については、2022年1月13日付海外情報「WTO紛争解決委、インドの砂糖政策を協定違反と裁定」(本誌60ページまたはhttps://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_003153.html)を参照されたい。


2020/21年度のエタノール供給量、前年度比7割増
 インド消費者問題・食糧・公共配給省は2021年12月17日、2020/21エタノール年度(12月〜翌11月)に、国内のエタノール工場が公営石油販売会社(OMC)に供給したガソリン混合用エタノールは、302万キロリットル(前年度比74.7%増)に達したと発表した。なお同省は、エタノールの生産や活用を促進するためにさまざまな施策が実施されているとして、具体的に以下六つの取り組みを挙げた。

(1)エタノール生産能力の向上を目的とした設備投資への借入金に対する利子補給を実施
(2)エタノール生産に利用できる原料の対象品目(注1)を拡大
(3)エタノール買取価格の設定
(4)エタノールの国内流通を自由に行えるようにするための法律改正(注2)
(5)ガソリン混合用エタノールの物品サービス税(GST)の減税(注3)
(6)エタノールを最大12%または15%含む混合ガソリン(E12およびE15)の規格および排出基準(注4)の設定

 また、現地報道によると、同年度のガソリンへのエタノール混合率は8.1%(前年度比約3ポイント増)とされているが、同政府は、施策の実施を通じ、エタノール混合率を2021/22エタノール年度には10%、25年中には20%までの引き上げを目指している。

(注1)現在、同国では、農作物残さ(綿の茎、トウモロコシの穂軸、おがくず、バガスなど)、でん粉を含む農作物(キャッサバなど)、傷んでしまった穀物(小麦や米)、その他糖分を含む作物(てん菜、スイートソルガム)などが原料として許可されている。
(注2)Industries(Development & Regulation)Act, 1951の改正によって14の州でエタノールの流通が自由化されたが、デリーやウッタル・プラデーシュ州など一部のガソリンの主要消費州では未だ改正されていない。
(注3)21年12月16日、ガソリン混合用エタノールのGSTは18%から5%に引き下げられた。
(注4)これらの設定により、E12やE15対応車を同国内で製造できるようになった。
表3
(参考)インド
中国
2021/22年度の砂糖生産量はかなりの程度減少し、輸入量は大幅に減少する見込み  
 2021/22年度(10月〜翌9月)のサトウキビの収穫面積は、112万ヘクタール(前年度比3.6%減)とやや減少が見込まれる(表4)。サトウキビ生産量は、主産地である広西チワン族自治区や雲南省の天候が良好であるため、7389万トン(同0.4%増)とわずかに増加すると見込まれる。一方、同年度のてん菜の収穫面積は、トウモロコシへ転作する農家の増加により(注1)、14万ヘクタール(同37.8%減)と大幅に減少すると見込まれる。てん菜生産量も、810万トン(同34.6%減)と大幅な減少が見込まれており、2021年11月末時点ですでに今期の操業を終了した工場数が前年度よりも多い(注2)ことから、さらなる減少の可能性も考えられる。  

 砂糖生産量は、てん菜糖生産量の減少を受けて1084万トン(同6.0%減)とかなりの程度減少すると見込まれる。輸入量は、2021年の砂糖輸入が前年を上回るペースで推移し、国内の在庫の積み増しが想定されることから、605万トン(同26.9%減)と大幅に減少すると見込まれる。

(注1)同国では、アフリカ豚熱からの回復による豚飼養頭数の増加を受けて、飼料用トウモロコシなどの需要が高まりを見せている。詳細は、2021年6月17日付海外情報「中国農業展望報告(2021–2030)を発表(飼料編)(中国)」(https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_002967.html)を参照されたい。
(注2)操業を終了した製糖工場数は7(前年度は2)。なお、てん菜収穫期間中に発生した大規模停電による製糖工場の操業停滞や新型コロナウイルス感染症(COVID–19)の感染抑制策の実施、相次ぐ寒波の到来などが重なり、一部のてん菜は収穫されずに凍ったまま圃場に放置されている状況となっている。


広西チワン族自治区のサトウキビ産地、「三品一標」産地に選出  
 中国農業農村部は2021年12月28日付のプレスリリースで、各省の推薦と専門家による審査を経て、この度、国内の100拠点が「三品一標」産地として選出されたと発表した。砂糖の原料作物については、広西チワン族自治区来賓(らいひん)()(こう)(ひん)(のサトウキビ産地が選ばれた。三品一標とは、中国政府が定めた安全かつ高品質な農産物のことを指し、有機農産品、緑色農産品、無公害農産品(注1)の三品と農産物の地理的表示を総称して三品一標と呼ばれている。  

 農業農村部によると、今回選出された100拠点は四つの特徴を有するとしている。

 ・高い生産管理レベル (優良品種の栽培や、節水や肥料、農薬のコスト低減に優れた最先端の環境   配慮型生産技術モデルの普及)
 ・大規模圃場での生産 (砂糖の原料作物や野菜、果物などは5000ムー〈334ヘクタール(注2)〉以上)
 ・農産物の地理的表示または農産物の原産地認定といったブランド力のある認証の取得
 ・大手企業や専門協同組合、大規模農家などによる生産や経営の標準化

(注1)有機農産品とは、生産過程において化学合成農薬、化学肥料などを使用しないことで環境負荷の低減を図り、政府機関がその品質を認証したものを指す。緑色農産品とは、国立緑色食品発展センターによって認証された高品質かつ栄養価の高い農産品のことを指す。無公害農産品とは、政府の安全管理基準に基づき生産、加工されており、人の健康に害を及ぼすことのない農産品のことを指す。
(注2)1ムー=0.0667ヘクタール。
表4
(参考)中国
EU
2021/22年度の輸出量は、増加見込みに転じる
 2021/22年度(10月〜翌9月)のてん菜の収穫面積は、146万ヘクタール(前年度比1.0%減)とわずかな減少が見込まれる(表5)。てん菜生産量は、過去の干ばつの影響を受けた状況と比べ、今期は生育期間の降雨量が多く、生育状況が順調であることから、1億1039万トン(同11.9%増)とかなり大きく増加すると見込まれる。砂糖生産量は、てん菜の増産を受けて1726万トン(同14.0%増)とかなり大きく増加すると見込まれる。輸出量は、EU域内における砂糖需要の回復や現状の在庫水準などを踏まえ、138万トン(同9.7%増)と前月予測から上方修正されたものの、依然として100万トン台前半の水準となるものと見込まれている。
表5
(参考)EU
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農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
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