2021/22年度の輸出量は、かなりの程度増加する見込み
2021/22年度(10月〜翌9月)のてん菜の収穫面積は、146万ヘクタール(前年度比1.0%減)とわずかな減少が見込まれる(表5)。てん菜生産量は、干ばつの影響を受けた前年と比べ、今期は生育期間の降雨量が多く、生育状況が順調であることから、1億1176万トン(同13.6%増)とかなり大きく増加すると見込まれる。砂糖生産量は、てん菜の増産を受けて1715万トン(同13.3%増)とかなり大きく増加すると見込まれる。輸出量は、生産量の増加などを踏まえ、139万トン(同9.8%増)とかなりの程度増加するものの、依然として100万トン台前半で推移すると見込まれる。
フランス、2022年播種期のネオニコチノイド系農薬の緊急使用を許可
2022年のてん菜の
播種期に向けて、
萎黄病を媒介するアブラムシを防除する効果のあるネオニコチノイド系農薬(イミダクロプリドおよびチアメトキサム)で処理されたてん菜種子の緊急使用を許可するフランスの政令が、2月1日付けの官報に掲載された。EUでは、ミツバチなどに与える影響が懸念されるとして同農薬の
圃場散布が制限されており、同国でも18年以降、使用が禁止されていた。しかし、20年に萎黄病が流行したことを受けて、同年末に同農薬のてん菜種子への使用を、21年から最大23年まで許可する法案が可決されていた。
同国のてん菜生産者組合(CGB)は、「てん菜生産者や業界全体が待ち望んでいたこの政令を歓迎する」とのコメントを発表した。一方、ミツバチやその他昆虫への影響を軽減するために、処理済てん菜種子を播種した圃場においては、翌年から3年間にわたり、栽培品目が制限されたことに対し、「生産者が当該制限を嫌悪し、他の高収益性作物に移行することで、てん菜栽培面積の減少や不十分な輪作を引き起こす可能性がある」として懸念を示した。
欧州製糖業界団体、英国政府による精製用粗糖の関税免除枠延長を懸念
欧州砂糖製造者協会(CEFS)の2022年1月17日付けの声明によると、英国政府は、21年1月に設定した粗糖に対する26万トンの自主的関税割当(ATQ)
(注1)の期限を24年12月31日まで延長すると発表した。ATQを利用できる国の制限はなく、輸入量がATQの割当量に達した場合は、最恵国待遇(MFN)関税である100キログラム当たり28.00ポンド(4452円)
(注2)が適用される。英国政府は、ATQが国内のてん菜生産者に影響を及ぼさないと分析しているものの、全英農業者組合(NFU)は、同国で許可されていない農薬や栽培技術を用いた粗糖、また、輸出国の補助を受けた粗糖が世界中から輸入されるとして、反対の姿勢を示している。
また、ATQの期限延長についてCEFSは、この度の延長は、EU、ACP諸国(EUの旧植民地であるアフリカ、カリブ、太平洋諸国)およびLDC諸国(後発開発途上国)の砂糖生産者のみに適用される譲歩(特恵関税)
(注3)の棄損につながることから危機感を覚えるとして、NFUと同様に懸念を示した。
(注1)Autonomous tariff quotas(自主的関税割当)は、数量を限定して関税を免除するもの。詳細は下記参照(英国政府HP:https://www.gov.uk/guidance/duty-suspensions-and-tariff-quotas)。
(注2)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の1月末TTS相場である1ポンド=159(158.72)円を使用。
(注3)英国は、EU、ACP諸国およびLDC諸国産の粗糖および白糖を無税で輸入する措置をとっている。