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3.世界の砂糖需給に影響を与える諸国の動向(2022年4月時点予測)

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最終更新日:2022年5月10日

3.世界の砂糖需給に影響を与える諸国の動向(2022年4月時点予測)

2022年5月

ブラジル
2022/23年度の砂糖生産量は前年度並みで推移し、輸出量はわずかに減少する見込み
 LMC International(農産物の需給などを調査する英国の民間調査会社)による2022年4月時点の予測によると(以下、特段の断りがない限り同予測に基づく記述)、2022/23年度(4月〜翌3月)のサトウキビ収穫面積は、大規模な植え替えが計画されているものの、前年度の不作による苗不足から、853万ヘクタール(前年度比1.7%減)とわずかに減少すると見込まれる(表2)。一方でサトウキビ生産量は、中南部地域において平年より乾燥したものの、サトウキビの生育に好条件が続いたことにより6億250万トン(同4.3%増)とやや増加すると見込まれる。一方で砂糖生産量は、エタノールの価格動向に影響を受けるため、現状、エタノール価格が高いことから製糖業者のエタノール製造への仕向量が増えると見込まれ、3756万トン(同0.1%減)と、かなり大きく減少した前年度並みで推移すると見込まれる。輸出量も同様に、コロナ禍における物流の混乱を背景とした海上運賃の高騰を受けて、インドネシアやアフリカ諸国などでブラジル産の粗糖需要が低下していることから、2692万トン(同1.7%減)とわずかな減少が見込まれる。

カリウムの価格が1年で3.7倍に高騰
 ブラジルの投資銀行が公表した報告書によると、ロシアによるウクライナ侵攻などの影響を受けて、肥料の三大要素の一つであるカリウムの2022年2月の価格は、1トン当たり1100米ドル(13万5729円)(注)程度と推定され、前年同月の同300米ドル(3万7017円)から3.7倍に上昇したと、3月23日付けの現地報道が伝えた。

 同国では肥料の大半を輸入品に依存しているが、サトウキビ生産者の間では、カリウムの輸出量世界第2位であるロシアによる軍事侵攻が始まって以来、肥料の確保が懸念されている。今般、ロシアは国際的な輸入規制や銀行間取引が制限され、同第3位であるベラルーシも同じく禁輸措置によって、国際市場への輸出が難しくなっている。

 カリウムについては、これらの原料供給国での問題のほかに、コンテナや船舶の不足による物流上の問題で、軍事侵攻の前から、供給量不足により価格が上昇傾向にあった。

(注)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の3月末TTS相場である1米ドル=123.39円を使用。
表2
(参考)ブラジル
インド
2021/22年度の砂糖生産量と輸出量は、かなり大きく増加する見込み
 2021/22年度(10月〜翌9月)のサトウキビの収穫面積は、509万ヘクタール(前年度比3.7%増)とやや増加すると見込まれる(表3)。主産地の降雨量は平年並みまたは平均を上回っており、生育状況は順調であることから、サトウキビ生産量は4億3754万トン(同3.8%増)とやや増加すると見込まれる。砂糖生産量は、北部で発生した10月頃の大雨の影響が当初の見込みより小さいとみられるほか、主産地のマハラシュトラ州やカルナータカ州のサトウキビ生産量が予想を上回っていることを要因に前月予測から上方修正され、3743万トン(同11.3%増)とかなり大きく増加すると見込まれる。輸出量は、砂糖の国際価格の上昇による輸出意欲の高まりを受けて先月予測の857万トンから上方修正され、973万トン(同13.4%増)とかなり大きく増加すると見込まれる。なお、バングラデシュでは、国内消費量の9割以上を輸入で賄っており、平時と比べて砂糖消費量が増加するラマダン(イスラム教徒の断食月)が始まる4月に向けて、国内の在庫を確保する動きがあると現地報道は伝えている。
表3
(参考)インド
中国
2021/22年度の砂糖生産量と輸入量は、いずれもかなり大きく減少する見込み
 2021/22年度(10月〜翌9月)のサトウキビの収穫面積は、112万ヘクタール(前年度比3.6%減)とやや減少すると見込まれる(表4)。サトウキビ生産量は、主産地である広西チワン族自治区や雲南省の天候が良好であったため、7389万トン(同0.4%増)とわずかに増加すると見込まれる。一方、同年度のてん菜の収穫面積は、トウモロコシへの転作の増加により(注)、14万ヘクタール(同37.8%減)と大幅に減少すると見込まれる。てん菜生産量も、収穫面積の減少や冬季の寒波などを背景に、712万トン(同42.5%減)と大幅な減少が見込まれる。

 砂糖生産量は、原料の減産に加え、てん菜収穫期間中に発生した大規模停電による製糖工場の操業停止や、降雨によるサトウキビ収穫の遅滞などを受けて993万トン(同13.9%減)と1000万トンを割り込む減少が見込まれる。輸入量は、2020年に引き続き2021年も国内生産の不足分を上回る量が輸入されていることで、国内在庫の積み増しが想定されることから、704万トン(同14.6%減)とかなり大きく減少すると見込まれる。

(注)同国では、アフリカ豚熱からの回復による豚飼養頭数の増加を受けて、飼料用トウモロコシなどの需要が高まりを見せている。詳細は、2021年6月17日付海外情報「中国農業展望報告(2021–2030)を発表(飼料編)(中国)」https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_002967.htmlを参照されたい。
表4
(参考)中国
EU
2021/22年度の輸出量は、かなりの程度増加する見込み 
 2021/22年度(10月〜翌9月)のてん菜の収穫面積は、146万ヘクタール(前年度比1.4%減)とわずかな減少が見込まれる(表5)。てん菜生産量は、干ばつの影響を受けた前年と比べ、今期は生育期間の降雨量が多く、生育状況が順調であることから、1億1021万トン(同12.0%増)とかなり大きく増加すると見込まれる。砂糖生産量は、2021年末以降スペイン南部で発生している干ばつの影響があるものの、干ばつを記録した前年と比べて生育期の降雨量が多く、大規模な病虫害も発生していないため、1711万トン(同13.1%増)とかなり大きく増加すると見込まれる。輸出量は、前年同期と比較して輸入ペースが鈍化しているため前月予測から下方修正され、135万トン(同6.9%増)とかなりの程度増加すると見込まれる。

フランス国内でのてん菜の播種(はしゅ)がほぼ完了 
 
現地報道によると、フランス国内のほぼすべての地域で、今期のてん菜の播種が行われたという。てん菜生産者組合(CGB)によれば)場の95%以上で播種が完了し、作付面積は39万ヘクタール(前年度比3.2%減)とやや減少すると見込まれる。 てん菜生産において、()(おう)(注)を媒介するアブラムシの防除に最も有効な薬剤とされているネオニコチノイド系農薬の使用は禁止されているが、例外的な措置として、てん菜種子のコーティング処理への一時的な利用が2022年2月1日に認可された。例年、播種作業は3月初旬から行われる中、認可が直前となったにもかかわらず、処理済の種子は各生産者へ迅速に配達されたとされ、種苗会社の関係者によると、今期播種された種子の80%から85%は処理済の種子であったと推定されている。

 3月初旬から行われた播種作業は、降雨による一時的な中断があったものの、3月17日頃には再開され、それ以降は好天が持続する中で作業は円滑に行われた。その後、播種がほぼ完了した3月30日からは降雨が続いたことで、種子が均一に発芽することが期待されるという。

(注)アブラムシによって媒介されるウイルス性の病気で、てん菜の単収減少を引き起こす。
表5
(参考)EU
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
Tel:03-3583-9272