(ア) 医薬品(傷薬)としての利用
砂糖は古くから万能の医薬品として尊重されてきたとされる。「白糖」および「精製白糖」については、
日本薬局方に登録され、甘味剤やシロップ剤などとして利用されている。
傷薬としての砂糖利用は、ハチミツと共に古くから用いられており、アルゼンチンでは牧童の常備薬として、アフガニスタンでは昭和54年の旧ソビエト連邦の同国侵攻に伴う内戦で負傷した際の傷薬として利用されたとされている。米国では昭和56年に56カ月の臨床試験の結果、砂糖とポビドンヨードを含有する軟こうが傷薬として有効なことが発表された(参考文献)。
現在、わが国では「精製白糖・ポビドンヨード」(一般名)として、主に
褥瘡(床ずれ)の外用薬として、
滲出液が多い場合、感染を伴う場合、
肉芽の形成を促進させる場合などに利用されている。ポビドンヨードに殺菌作用が認められている一方で、精製白糖には
創傷治癒作用が認められている。創傷治癒には、(1)肉芽形成作用(2)
表皮再生作用(3)
創面(傷口)の収縮作用−が重要とされるが、精製白糖には(1)および(2)に加えて、血管の新生作用が確認されている。また、
浮腫(むくみ)の軽減作用も確認されている。
(イ) 乳用児に対する北海道産てん菜糖のスキンケアとしての効果
上記のように、砂糖が皮膚の傷に対する治療薬として有効と認められる中で、当誌平成22年8月号で北海道産てん菜糖を主原料としたスキンケア製品としての利用に注目し、乳幼児(生後から小学校入学まで)に対するスキンケアの効果
(注)を取り挙げている(参考文献)。
これによると、乳幼児は生後2カ月を過ぎると、分泌される皮脂量が極めて少なくなるため、2歳までの乳幼児は、角質層が薄くなり簡単に皮膚が傷つく。そして、かき傷からは雑菌などが侵入、感染しやすい状態になる。容易に肌のトラブルを起こしアレルギーの肌状態が作られることになる。
そこで、平成20年度の夏期1カ月間、皮膚にトラブルのある乳幼児39人に対して、
沐浴時に北海道産てん菜糖を主原料としたシュガースクラブを使用し、使用前と使用30分後を比較したところ、
頬部(ほおの部分)、胸部、背部、頭部の4カ所の皮脂量が軒並み大幅に上昇したことが確認された。乳幼児の最初の肌の状態は、「カサカサした肌」「かき傷」「アトピー性皮膚炎と思われる関節や
頸部(首の部分)の湿疹」「
臀部(お尻の部分)のただれ」があったが、1カ月後にはしっとりした肌になったとの報告である。
(注)詳細については、以下のHPを参照。
https://www.alic.go.jp/joho-s/joho07_000141.html