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3. 世界の砂糖需給に影響を与える諸国の動向(2022年8月時点予測)

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最終更新日:2022年9月12日

3. 世界の砂糖需給に影響を与える諸国の動向(2022年8月時点予測)

2022年9月

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2022/23年度の砂糖生産量と輸出量は、わずかに増加する見込み
 LMC International(農産物の需給などを調査する英国の民間調査会社)による2022年8月時点の予測によると(以下、特段の断りがない限り同予測に基づく記述)、2022/23年度(4月〜翌3月)のサトウキビ収穫面積は、大規模な植え替えが計画されている中で、前年度の不作による苗不足から848万ヘクタール(前年度比2.3%減)とわずかに減少すると見込まれる(表2)。一方でサトウキビ生産量は、中南部地域が平年より乾燥したものの、その他の地域ではサトウキビの生育に良好な条件が続いたことから5億9500万トン(同3.2%増)とやや増加すると見込まれる。砂糖生産量は、7月にブラジルさとうきび産業協会(UNICA)による減産見込みが発表されたものの、同月には相次ぐガソリンの卸売価格引き下げを受けて、相対的にバイオエタノール需要が減少し、砂糖仕向けの増加が見込まれることから3825万トン(同1.7%増)とわずかに増加すると見込まれる。輸出量は砂糖の増産を背景に2759万トン(同1.8%増)とわずかに増加すると見込まれる。
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2021/22年度の砂糖生産量はかなり大きく、輸出量は大幅に増加する見込み
 2021/22年度(10月〜翌9月)のサトウキビの収穫面積は、517万ヘクタール(前年度比5.3%増)とやや増加すると見込まれる(表3)。主産地では平年以上の降雨により生育状況は順調であることから、サトウキビ生産量は4億4481万トン(同5.5%増)とやや増加すると見込まれる。砂糖生産量は、北部で発生した収穫期前の大雨の影響が想定より軽微であったことや、主産地のマハラシュトラ州やカルナータカ州のサトウキビ生産量が過去最多を記録するとみられることから、3860万トン(同14.7%増)とかなり大きく増加すると見込まれる。輸出量は、インド政府が5月に実施した輸出制限に対し、8月に輸出枠を拡大(注)したことから、1203万トン(同40.1%増)と大幅に増加すると見込まれる。

(注)当初の1000万トンの制限を1120万トンまで上限を拡大した。詳細は、2022年8月19日付け海外情報「砂糖輸出制限を緩和し、120万トンの追加輸出を許可(インド)」(https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_003336.html)を参照されたい。
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2021/22年度の砂糖生産量はかなりの程度、輸入量は大幅に減少する見込み
 2021/22年度(10月〜翌9月)のサトウキビの収穫面積は、112万ヘクタール(前年度比3.6%減)とやや減少すると見込まれる(表4)。サトウキビ生産量は、7225万トン(同0.3%減)と前年度並みに留まると見込まれる。一方で、同年度のてん菜の収穫面積は、トウモロコシへの転作の増加により14万ヘクタール(同37.8%減)と大幅に減少すると見込まれる。てん菜生産量も、収穫面積の減少に加え冬季の寒波などを背景に707万トン(同42.7%減)と大幅に減少すると見込まれる。

 砂糖生産量は、原料の減産に加え、降雨によるサトウキビ収穫の遅滞や前年のてん菜収穫期間中に発生した大規模停電による製糖工場の操業停止などを受けて1036万トン(同10.2%減)とかなりの程度減少すると見込まれる。輸入量は、2020年に引き続き21年も国内生産の不足分を上回る量が輸入され、国内在庫が積み増されたことから605万トン(同24.2%減)と大幅に減少すると見込まれる。
 
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ツマジロクサヨトウによる影響を懸念  
 中国農業農村部は7月27日、ツマジロクサヨトウの防除に関わる会議を開催し、中国国内で6月末からツマジロクサヨトウの北上が加速したため、雲南(うんなん)湖南(こなん)安徽(あんき)()(せん)貴州(きしゅう)河南(かなん)および(せん)西(せい)の七省で、前年よりも深刻な被害が発生していると報告した。ツマジロクサヨトウは2019年1月に初めて中国に上陸し、東北部の(りょう)(ねい)省や南西部の四川省でサトウキビをはじめ、トウモロコシ、ソルガム、小麦などでの被害が報告されている。

 また同部は、南方さび病、すす紋病、茎腐病など他の病虫害の増加も作物生産に対する脅威となっているが、現状では発生予測と予防措置が困難であるとしている。今秋の豊作を確保するため、病虫害発生後の事後対応よりも、でき得る範囲での予防措置を講ずることが重要であるとし、病虫害の発生予測と早期防除の強化を図るとともに、病虫害の発生状況の把握や予防・防除の励行を促した。
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2021/22年度の輸出量は、増産を背景にやや増加する見込み
 2021/22年度(10月〜翌9月)のてん菜の収穫面積は、145万ヘクタール(前年度比1.4%減)とわずかに減少すると見込まれる(表5)。てん菜生産量は、干ばつを記録した前年と比べて生育期の降雨量が多く、今期は大規模な病虫害も発生していないため、1億1057万トン(同12.2%増)とかなり大きく増加すると見込まれる。砂糖生産量は、てん菜の増産見込みを受けて1725万トン(同14.1%増)とかなり大きく増加すると見込まれる。輸出量は、消費量の増加も見込まれる中で、それを上回る砂糖の増産などを背景に131万トン(同3.8%増)とやや増加すると見込まれる。
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熱波と干ばつによる砂糖減産の懸念
 7月に欧州全域で発生した記録的な熱波と干ばつの影響により、今年度のてん菜収穫量が大幅に減少する可能性がある。英国のコンサルタント会社が7月21日に発表したレポートによると、欧州のほぼ全域で少雨により土壌の水分が不足しており、多くの地域で農作物の生育が平年を下回り、今後、十分な降雨がなければ熱波と干ばつによる生育不良の拡大が懸念されている。

 また、現状、特にドイツで土壌の水分が不足し、この状況はてん菜収穫量が11%減少した2018年夏のデータと類似しており、他国でも同規模のてん菜収量の低下が発生した場合、今年度の欧州の砂糖生産量は平年から200万トン近い減産が見込まれるとしている。欧州では今期、作付面積の縮小によるてん菜生産量の減少が見込まれており、熱波と干ばつによる影響がさらに追い打ちをかけると懸念されている。
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