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沖縄県における令和3年産さとうきびの生産状況について

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最終更新日:2022年10月11日

沖縄県における令和3年産さとうきびの生産状況について

2022年10月

沖縄県 農林水産部 糖業農産課

【要約】

 沖縄県の令和3年産さとうきびは、生産量81万5426トン(前年比100.2%)と、ほぼ前年並みの81万トンを超える豊作となった。収穫面積は1万3791ヘクタール(同107.2%)で前年と比較すると拡大し、台風などの大きな災害もほとんど無く気象条件などにも恵まれたことにより、10アール当たりの単収は豊作であった昨年を下回るものの、平年を上回る5913キログラム(同93.5%)となったことで生産量は平年より多くなった。先島地域において、収穫期の2月および5月の記録的な降雨によって収穫作業が遅れ、製糖工場の操業が7月までずれこむ地域があった。また、平均甘しゃ糖度は15.2度(前年14.6度、平年14.3度)と過去10年で最高の実績となり、品質的にも充実した年となった。

1.さとうきびの位置付け

 さとうきび栽培経営体は県農業経営体の約6割、さとうきび栽培面積は経営耕地総面積の約5割、農業産出額の約2割を占める基幹作物であり、特に多くの離島を抱える本県において製糖業とともに地域経済、社会を支える重要な作物となっている。また、さとうきびは他作物に比べて比較的台風や干ばつに強く、離島地域においては代替の利かない作物である。

 沖縄県では、国の「さとうきび増産プロジェクト基本方針」に基づき、平成18年に策定した各島別および県段階における生産目標や取り組み方向を示した「さとうきび増産プロジェクト計画」を27年に改定した。さらに、令和4年度から新たにスタートした「沖縄振興特別措置法」に基づき、「新・沖縄21世紀ビジョン基本計画」を4年5月に策定し、この二つの計画によって生産基盤の整備、安定生産技術の開発および普及、機械化や地力増強、病害虫防除対策の推進、生産法人など担い手の育成、優良品種の開発・普及など総合的な施策展開による生産振興を推進している。

2.令和3年産さとうきびの生育概況

(1)沖縄地域(沖縄本島、伊平屋島、伊是名島、伊江島、粟国島、久米島、南大東島、北大東島)

 生育初期にあたる3月、5月の気温は平年よりも1度以上高く、少雨傾向であった。生育旺盛期前半は雨が多かったが、8月以降になると少雨傾向になった。特に南大東島では9月に平年の18%しか降雨に恵まれず、干ばつに見舞われた。6〜9月に5個の台風が接近したが、いずれもさとうきびへの被害は大きくなかった。10月以降は平年並みの気温で、降水量は少なめで推移し、さとうきびの成熟に有利な天候であった。製糖期になり2月は平年より多い降雨があったものの、他の期間は平年並みの天候で収穫も順調に進んだ。

(2)宮古地域(宮古島、伊良部島、多良間島)および八重山地域(石垣島、小浜島、西表島、波照間島、与那国島)

 4〜5月は少雨傾向で、特に宮古地域の降水量は4月に平年の21%、5月は33%と少なく、生育の鈍化が見られた。生育旺盛期は気温が高く平年並みの降雨に恵まれ、順調に生育した。6〜9月にかけて5個の台風が接近したが、いずれもさとうきびにとって大きな被害にはならなかった。11〜12月には干ばつ傾向になり、宮古島では12月の降水量が平年の18%になった一方で、成熟には有利な天候となった。収穫期になると2月に平年の2倍の降雨があり、収穫機械が稼働することができず、製糖工場の操業が滞った。その後は順調な天候であったが、5月に入り平年の3倍以上の記録的な大雨によって再び収穫作業が滞った。

3.令和3年産さとうきびの生産状況

 令和3年産さとうきびの収穫面積は1万3791ヘクタールとなり、令和2年産と比較して921ヘクタール増加した(前年比107.2%)。生産量は1572トン増加し81万5426トン(同100.2%)、10アール当たり収量は5913キログラムと、前年に比較して10アール当たり411キログラム減少した(同93.5%)(図1、表1、2、3)。
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 沖縄地域では収穫面積は58ヘクタール減少し、10アール当たり収量も前年に比較して428キログラム減少したことから、生産量は減少した。宮古地域では10アール当たり収量が699キログラム減少したものの、収穫面積が746ヘクタール増加したため、生産量は増加した。八重山地域では収穫面積が232ヘクタール増加し、10アール当たり収量も前年に比較して264キログラム増加したことから、生産量は増加した。

 なお、各地域別生産量では、沖縄地域(周辺離島を含む)が全体の38.5%、宮古地域が44.5%、八重山地域が16.9%となっている。

 作型別では、夏植え栽培が前年に比較して228ヘクタール増加し3643ヘクタール(全収穫面積に占める割合26.4%)、春植え栽培が62ヘクタール減少し1353ヘクタール(同9.8%)、株出し栽培が754ヘクタール増加し8796ヘクタール(同63.8%)となった(図2)。
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 品種構成は、Ni27(農林27号)が全収穫面積の48.9%を占め、次いでRK97-14が6.0%、NiH25(農林25号)が5.8%、Ni22(農林22号)が5.7%、Ni21(農林21号)が5.3%、NiF8(農林8号)が3.4%、Ni15(農林15号)が1.3%となった(図3)。Ni27(農林27号)は茎の揃いや収量性がよく、株出し性や糖度についても安定しており、栽培性に大きな欠点がなくバランスの取れた品種であることから、近年生産が拡大している。しかしながら、早期の台風では被害が大きくなることや株出し栽培で黒穂病の発生が見られることから、一部産地ではNi27(農林27号)の品種割合を抑制して危険分散を図る動きがみられる。
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(1)沖縄地域

 収穫面積は5742ヘクタールで令和2年産に対して58ヘクタール減少し、10アール当たり収量は5473キログラム(前年比92.7%)と前年に対して減少し、生産量は31万4271トン(同91.8%)で2万7993トン減少した。
 
 作型別では、夏植え栽培は561ヘクタールで前年から131ヘクタール減少し、春植え栽培は814ヘクタールで同21ヘクタール減少、収穫面積の約8割を占める株出し栽培は4367ヘクタールで同94ヘクタールの増加となった。株出し栽培の収穫面積はやや増加したものの、夏植えの収穫面積が減少したため全体的な収穫面積は前年並みであった。さらに、夏植えと株出し栽培で10アール当たり収量がやや減少したことにより、減収となった。

 品種構成は、Ni27(農林27号)が30.2%、Ni29(農林29号)が7.9%、RK97-14が7.8%、Ni28(農林28号)が7.5%を占めてい

(2)宮古地域

 収穫面積は5927ヘクタールで令和2年産に対して746ヘクタール増加し、10アール当たり収量は6124キログラム(前年比89.8%)と減少したものの、生産量は36万3006トン(同102.7%)と9491トン増加した。

 作型別では、基盤整備事業の進展によって夏植え栽培の収穫面積が2304ヘクタールになり前年より324ヘクタール増加し、春植え栽培は321ヘクタールで同31ヘクタール減少、近年増加傾向にある株出し栽培では3303ヘクタールで同454ヘクタール増加した。

 品種構成は、Ni27(農林27号)が67.2%と最も多く、次いでNiH25(農林25号)が5.8%となっている。

(3)八重山地域

 収穫面積は2122ヘクタールで令和2年産に対して232ヘクタール増加し、10アール当たり収量は6510キログラム(前年比104.2%)、生産量は13万8148トン(同117.0%)で2万0074トン増加した。

 作型別では、夏植え栽培で前年より35ヘクタール増加、春植え栽培で同9ヘクタール減少、株出し栽培は同206ヘクタール増加した。10アール当たり収量が全作型で前年を上回ったため、生産量は全作型で前年を上回った。

 品種構成は、Ni27(農林27号)が48.5%と最も多く、次いでNi22(農林22号)が17.1%、NiH25(農林25号)が15.3%となっている。

4.ハーベスタによる収穫状況

 さとうきびの労働時間の大半を占める収穫作業の省力化を図るため、これまで国庫補助事業などを活用したハーベスタの導入を推進してきた。さらに、県では既存のハーベスタの導入に加え、脱葉施設などの導入を進め、地域に応じた収穫体系を含む機械化一貫作業体系の確立を推進している。

 令和3年産では、県内全域において大型、中型、小型の各機種合計388台のハーベスタが稼働し、ハーベスタ、刈倒機および脱葉機を利用した機械収穫率は収穫面積の84.6%(前年収穫率81.8%)となっている。

5.製糖工場の操業状況

 沖縄県の製糖工場は、分みつ糖工場が8社9工場(8島)、含みつ糖工場が4社8工場(8島)操業している(表4)。

 分みつ糖工場の令和3年産原料処理量は、2年産より9618トン減少し73万2615トン(前年比98.7%)となり、買入糖度は、前年より高い15.1度となった。

 含みつ糖工場の3年産原料処理量は、2年産より1万1190トン増加し8万2811トン(同115.6%)となった。

 
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6.おわりに

 沖縄県では令和7年産を目標とする「さとうきび増産プロジェクト」および令和13年を目標とする「新・沖縄21世紀ビジョン基本計画」に基づき、各種の生産振興施策・事業を展開している。3年産さとうきびは、宮古島を中心に収穫面積が増加したことに加え、台風干ばつなどの気象災害が少なく10アール当たり収量が豊作であった昨年に近くなったことで、生産量は2年連続81万トンを超える結果となった。

 今回の増産は、気象条件に恵まれたことのほか、生産者や関係機関・団体の地道な取り組みが実を結んだ結果である。

 しかしながら、本県は台風常襲地域で、気象条件などは年変動も大きいことから、これまで同様の取り組みの継続と強化が必要である。

 今後も継続して目標を達成していくため、気象災害と病害虫被害などに対応したセーフティネット(さとうきび増産基金)などを活用することにより、関係機関・団体が一体となって増産への取り組みを強化し、本県さとうきび生産農家と製糖企業の経営の安定化に向けて取り組んでいるところである。
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
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