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3. 世界の砂糖需給に影響を与える諸国の動向(2022年11月時点予測)

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最終更新日:2022年12月9日

3. 世界の砂糖需給に影響を与える諸国の動向(2022年11月時点予測)

2022年12月



2022/23年度の砂糖生産量はわずかに、輸出量はやや増加する見込み

 LMC International(農産物の需給などを調査する英国の民間調査会社)による2022年11月時点の予測によると(以下、特段の断りがない限り同予測に基づく記述)、2022/23年度(4月〜翌3月)のサトウキビ収穫面積は、前年度の歴史的不作による苗不足から850万ヘクタール(前年度比2.4%減)とわずかに減少すると見込まれる(表2)。一方でサトウキビ生産量は、中南部地域が平年より乾燥した後、9月以降は降雨が続いて収穫作業が遅れたものの、その他の地域ではサトウキビの生育に良好な条件が続いたことから6億400万トン(同4.7%増)とやや増加すると見込まれる。砂糖生産量は、7月から相次ぐガソリンの卸売価格引き下げを受けて相対的に同国内でのバイオエタノール需要が減少したことや、サトウキビの収穫の遅延により、砂糖仕向けの増加が見込まれることから3868万トン(同2.8%増)とわずかに増加すると見込まれる。輸出量も砂糖への仕向け増を背景に2818万トン(同4.0%増)とやや増加すると見込まれる。

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エネルギー危機を背景にブラジル産エタノールの欧州向け輸出が加速
 10月20日付けの現地報道によると、欧州各国はロシアのウクライナ侵攻に端を発したエネルギー危機に対処するため、安価なブラジル産エタノールの買い付けが進み、輸出が増えているとされている。欧州ではガスや電気などの光熱費が高騰し、9月までの同国の欧州向け輸出量は前年比で3倍に達し、特に政策変更によってブラジルのバイオ燃料価格が急落した7月以降、買い付けが活発化している(注)
 

(注)『砂糖類・でん粉情報』2022年9月号「世界の砂糖需給に影響を与える諸国の動向(2022年8月時点予測)」https://www.alic.go.jp/joho-s/joho07_002771.htmlを参照されたい。


 同国の製糖企業は欧州での旺盛な需要に応えるべく、エタノールの増産を図っている。同国産エタノールの多くはサトウキビの搾り汁から製造されるが、搾汁後の残渣(ざんさ)であるバガスも原料として活用できる。残渣由来のエタノールは食料消費と競合せず、資源の有効活用と収益化に寄与するものである。ある大手製糖企業はバガス由来エタノール生産量を2024年までに現状の8倍とするため、現在三つのプラントの増設を進めており、この新プラントの生産量の8割がすでに契約済となっているとのことである。

 これらの動きに対しある製糖企業は、現在、欧州ではわれわれが提供できる以上の需要があると語り、また別の企業は、今後同国でトウモロコシ由来バイオ燃料への投資が増加することで、欧州への輸出増加の動きは来年も続くだろうと述べた。

 

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2022/23年度の砂糖生産量は横ばい、輸出量は大幅に減少する見込み

 2022/23年度(10月〜翌9月)のサトウキビの収穫面積は、前年が豊作だったことに加えサトウキビ価格の上昇によりさらに拡大するとの予測から、546万ヘクタール(前年度比5.7%増)とやや増加すると見込まれる(表3)。主産地のマハラシュトラ州やカルナータカ州では雨季の雨量が平年を大きく上回っているものの、生育は順調でありサトウキビ生産量は4億6875万トン(同5.3%増)とやや増加すると見込まれる。一方で、砂糖生産量は、最大生産地ウッタル・プラデーシュ州では雨季の雨量が平年を大きく下回り減産が懸念されたものの、10月以降に続いた降雨に後押しされ、3858万トン(同0.1%減)と横ばいで推移すると見込まれる。輸出量は、同国政府が11月上旬に2022/23年度の砂糖輸出枠を600万トンと発表したものの、昨年度と同程度の生産が見込まれる中で2021/22年度と同様に追加輸出枠を承認する可能性も想定される。このため、2021/22年度の1120万トンには及ばないものの、近年と同程度となる898万トン(同26.9%減)が見込まれる。

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バイオエタノールの政府買上価格を引き上げ
 インド政府は11月2日、2025年までのE20(バイオエタノール混合率20%のガソリン)の普及目標を達成するため、供給促進を目的にサトウキビ原料に由来するバイオエタノールの政府買上価格の引き上げを発表した。これによると、製糖副産物である糖みつ(モラセス)(注1)のうち、商業的に回収可能な砂糖をほとんど含まないCモラセス由来のエタノール価格は、1リットル当たり46.66ルピー(91.45円:1ルピー=1.96円)(注2)から49.41ルピー(96.84円)に、Bモラセス由来は、同59.08ルピー(115.80円)から60.73ルピー(119.03円)に引き上げられる。また、サトウキビの搾り汁や砂糖などを原料としたエタノール価格は、同63.45ルピー(124.36円)から65.61ルピー(128.60円)に引き上げられ、これら新価格は12月1日から始まる次年度のエタノール混合計画(EBP)から適用される。

 インド製糖協会(ISMA)は、CモラセスとBモラセス由来の価格引き上げに対し、歓迎の意を示すものの、搾り汁や砂糖などを原料としたエタノール価格に対して、新価格では生産強化への追加投資を促進するには不十分であるとし、さらなる引き上げを政府に要請した。ISMAは、これまで業界は投資回収期間5年間の自己資本利益率に基づいたエタノール価格を要求してきたとし、搾り汁や砂糖などを原料としたエタノールの新価格は、同69.85ルピー(136.91円)が妥当であるとしている。

(注1)甘しゃ糖の製造工程では、サトウキビの搾り汁を煮詰めることで砂糖を結晶化させる。結晶化した砂糖は遠心分離により糖みつと分離されるが、ここで得られた糖みつをAモラセスと呼ぶ。しかし、Aモラセスには回収可能な砂糖が含まれるため、再度煮詰め、結晶化を繰り返す。Aモラセスを分離して得られた糖みつをBモラセス、Bモラセスを分離して得られた糖みつをCモラセスと呼ぶ。含糖量はA、B、Cの順に多く、Aモラセスには搾り汁から回収可能な砂糖のうち約23%、Bモラセスには約10%が残留している。
(注2)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2022年10月末TTS相場。

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2022/23年度の砂糖生産量はやや増加し、輸入量はかなり大きく減少する見込み
 2022/23年度(10月〜翌9月)のサトウキビの収穫面積は、113万ヘクタール(前年度比1.0%増)とわずかに増加すると見込まれる(表4)。サトウキビ生産量は、主産地の広西チワン族自治区の一部を除き熱波の影響を受けていないため、7185万トン(同0.4%減)とわずかな減少にとどまると予想される。一方で、同年度のてん菜の収穫面積は、トウモロコシ価格の高騰を背景に政府が3月に穀物の増産を呼びかけたことから、他作物への転作が増加したものの、14万ヘクタール(前年度同)と見込まれる。てん菜生産量は、順調な生育により748万トン(同5.9%増)とやや増加すると見込まれる。

 砂糖生産量は、サトウキビ主産地の広西チワン族自治区で8月中旬から高温や乾燥が続いていたが、これまでの降水量が平年よりかなり多く、順調に生育していることから、1064万トン(同3.0%増)とやや増加すると見込まれる。輸入量は、2020年に引き続き21年も国内生産の不足分を上回る量が輸入され、国内在庫が積み増しされている中で、前月予測から砂糖の増産幅が拡大したことなどを受けて、629万トン(同11.7%減)とかなり大きく減少すると見込まれる。

   

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2022/23年度の輸出量は、かなり大きく減少する見込み
 2022/23年度(10月〜翌9月)のてん菜の収穫面積は、一部のてん菜圃場(ほじょう)で、より収益性が高く、価格の高騰しているトウモロコシなどの穀物が作付けされたことなどから、140万ヘクタール(前年度比3.7%減)とやや減少すると見込まれる(表5)。てん菜生産量は、今夏の記録的な熱波や干ばつの影響、収穫面積の減少のほか、肥料価格高騰による施肥の減少から単位収量が平年を下回るものと見込まれることから、1億135万トン(同8.4%減)とかなりの程度減少すると見込まれる。砂糖生産量は、てん菜の減産見込みを受けて1613万トン(同6.2%減)とかなりの程度減少すると予想される。輸出量は、砂糖の減産などを背景に110万トン(同15.4%減)とかなり大きく減少すると見込まれる。

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