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3.世界の砂糖需給に影響を与える諸国の動向(2023年2月時点予測)

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最終更新日:2023年3月10日



2022/23年度の砂糖生産量はやや、輸出量はかなりの程度増加する見込み
 LMC International(農産物の需給などを調査する英国の民間調査会社)による2023年2月時点の予測によると(以下、特段の断りがない限り同予測に基づく記述)、2022/23年度(4月〜翌3月)のサトウキビ収穫面積は、前年度の不作による苗不足や、大豆やトウモロコシなどほかの作物との競合から859万ヘクタール(前年度比1.0%減)とわずかに減少すると見込まれる(表2)。一方でサトウキビ生産量は、中南部地域が生育初期に平年より乾燥した気候となり、9月以降は降雨が続いて収穫作業が遅れたものの、その他の地域ではサトウキビの生育に良好な条件が続いたことから6億900万トン(同5.6%増)とやや増加すると見込まれる。砂糖生産量は、燃料に対する連邦税の免除や7月から相次ぐガソリンの卸売価格引き下げを受けて、相対的に同国内でのバイオエタノール需要が減少したことで砂糖仕向けの増加が見込まれることや、中南部地域の気候が良好で、雨季が始まる前に予想よりも多くのサトウキビが収穫されたことなどから、3983万トン(同5.9%増)とやや増加すると見込まれる。輸出量は、インドの輸出量が予想を下回ったことや、砂糖への仕向け増を背景に2928万トン(同8.1%増)とかなりの程度増加すると見込まれる。

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2022/23年度の砂糖生産量はやや減少し、輸出量は大幅に減少する見込み
 2022/23年度(10月〜翌9月)のサトウキビの収穫面積は、国内の高いサトウキビ需要を背景に価格上昇が加速するとの予測から、554万ヘクタール(前年度比5.7%増)とやや増加すると見込まれる(表3)。サトウキビ生産量は、主産地であるマハラシュトラ州やカルナータカ州における降水量の偏りや日照時間の短さなどから収穫量が減少したものの、最大生産地のウッタル・プラデーシュ州での生育は順調であり、4億5563万トン(同1.6%増)とわずかに増加すると見込まれる。一方で、砂糖生産量は、同国におけるサトウキビのエタノール仕向けが増加したことなどから、3676万トン(同4.8%減)とやや減少すると見込まれる。輸出量は、同国政府が昨年11月上旬に22/23年度の砂糖輸出枠を600万トンと発表したものの、21/22年度と同程度(1120万トン)まで輸出枠の拡大(追加承認)の可能性もあるとしつつも、21/22年度との比較においては、大幅に下回る769万トン(同38.3%減)が見込まれる。なお、同国の製糖工場では1月末時点で580万トンの砂糖輸出契約が締結され、そのうちの180万トンが2022年末時点で輸出されているとしている。

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2022/23年度の砂糖生産量はやや増加し、輸入量はかなりの程度減少する見込み
 2022/23年度(10月〜翌9月)のサトウキビの収穫面積は、113万ヘクタール(前年度比1.0%増)とわずかに増加すると見込まれる(表4)。サトウキビ生産量は、主産地の広西チワン族自治区の一部で熱波や干ばつの被害を受けたものの、その他の地域での被害は軽微であったことから、7185万トン(同0.4%減)とわずかな減少にとどまると予想される。一方で、同年度のてん菜の収穫面積は、トウモロコシ価格の高騰を背景に政府が3月に穀物の増産を呼びかけたことから、他作物への転作が増加したものの、15万ヘクタール(同2.9%増)と前年度からの増加が見込まれる。てん菜生産量は、順調な生育により811万トン(同14.8%増)とかなり大きく増加すると見込まれる。

 砂糖生産量は、広西チワン族自治区の一部で7月から11月まで干ばつが続いたもののサトウキビが順調に生育していることや、てん菜の栽培面積の減少を受け、農家に対してん菜の栽培を促すために、工場がてん菜の価格を過去最高値に引き上げたことなどから、1069万トン(同3.5%増)とやや増加すると見込まれる。輸入量は、20/21年度に引き続き21/22年度も国内生産の不足分を上回る量が輸入され、国内在庫が積み増しされている中で、前月予測から砂糖の増産幅が拡大したことなどを受けて、660万トン(同6.4%減)とかなりの程度減少すると見込まれる。

ブラジルの遺伝子組み換えサトウキビ由来の原料糖の安全性を承認
 中国農業農村部は、1月13日にブラジルで開発された遺伝子組み換えサトウキビ由来の原料糖の安全性を承認した。

 今回、安全性を承認した品種は、世界で初めて実用化された遺伝子組み換えサトウキビの2種類で、サトウキビやトウモロコシの葉や茎を食害するガの幼虫(ツマジロクサヨトウ)に対して抵抗性があるとされる。

 また、遺伝子組み換えサトウキビの原料糖のほか、除草剤に耐性のあるアルファルファや綿花など、遺伝子組み換え作物由来の加工用原料について複数の品種の安全性が承認された。なお、ブラジルのサトウキビを含む遺伝子組み換え作物由来の原料糖などについて、中国が安全性を承認するのは今回が初めてとなる。これらの承認は、2023年1月5日から28年1月4日まで有効となる。

 本原料糖の安全性が世界最大の砂糖輸入国である中国で承認されたことで、今後、ブラジルで遺伝子組み換えサトウキビの作付け機運が高まることも見込まれる。

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2022/23年度の輸出量は、依然として100万トン割れの見込み
 2022/23年度(10月〜翌9月)のてん菜の収穫面積は、ロシアによるウクライナ侵攻の影響により、世界的な規模で深刻な食糧不足や食糧価格の高騰に対する懸念が広がる中、収益性が高く、価格が高騰しているトウモロコシなどの穀物への転作が進んだことなどから、140万ヘクタール(前年度比3.9%減)とやや減少すると見込まれる(表5)。てん菜生産量は、今夏の記録的な熱波や干ばつの影響のほか、肥料価格高騰による施肥の減少、スペインでの収穫期の豪雨による収穫の中断などから収量が平年を下回るものと見込まれ、9835万トン(同11.8%減)とかなり大きく減少すると見込まれる。砂糖生産量は、てん菜の減産見込みを受けて1550万トン(同9.8%減)とかなりの程度減少すると予想される。輸出量は、砂糖の減産などを背景に98万トン(同25.3%減)と前月予測と同様に100万トンを下回り、大幅に減少すると見込まれる。

フランスの製糖メーカー、23年産のてん菜買取価格の増額を表明
 2023年1月27日付け現地紙によると、フランスの製糖会社クリスタル・ユニオン社は、てん菜の買取価格を糖度16度を基準に、22年の1トン当たり40ユーロ(5722円)(注1)から、23年は同45ユーロ(6438円)へ1割以上引き上げると報じた。

 EUでは、生態系に影響を及ぼすことが懸念されているネオニコチノイド系農薬の使用について、18年にはすべての作物で屋外での使用が禁止されるなど、厳しい制限が課されてきた(注2)。しかし、度重なる病虫害の被害が発生する中で有効な打開策が見出せない状況が続いていた。そこで近年、EUでは経過措置として、同農薬の特例的な使用が弾力的に認められてきた(注3)。しかし、23年1月19日に欧州司法裁判所(CJEU)は、EUでの同農薬の特例的使用を認める例外規定を否認する判決を下したことから、フランス政府は同農薬の使用について、今後は全般的にその特例的使用を認めないことを公表した。

 同社の会長は、このような栽培現場での環境変化を受け、約9000人のてん菜生産者の生活を支え、かつEUにおけるてん菜の供給量確保のため、作付面積の維持に向けた取り組みとして、この度の買取価格引き上げの意義を強調した。
 

(注1)1ユーロ=143.06円(三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の月末TTS相場。)
(注2)詳細については、2018年5月31日付海外情報「欧州委員会、3種類のネオニコチノイド系農薬の屋外での使用禁止を決定(EU)」https://alic.alic.go.jp/chosa-c/joho01_002218.html、『砂糖類・でん粉情報』2020年10月号「生産割当廃止後のEUにおける砂糖および異性化糖産業の動向」https://www.alic.go.jp/joho-s/joho07_002302.htmlを参照されたい。
(注3)欧州議会および理事会規則(EC)No.1107/2009で、加盟国は特定の作物に対して「特別な状況下」(具体的には「他の合理的な手段では封じ込めない危険性」がある場合)において、「緊急的な植物保護製品の使用制限緩和」が認められている。詳細については、2023年2月7日付海外情報「ネオニコチノイド系農薬の緊急使用に否認の判決(EU)」https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_003455.htmlを参照されたい。

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