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3.世界の砂糖需給に影響を与える諸国の動向(2023年4月時点予測)

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最終更新日:2023年5月10日

3.世界の砂糖需給に影響を与える諸国の動向(2023年4月時点予測)

2023年5月



2023/24年度の砂糖生産量はかなりの程度、輸出量はかなり大きく増加する見込み
 2023/24年度(4月〜翌3月)のサトウキビ収穫面積は、大豆やトウモロコシなどの競合作物の作付増加の影響を受ける一方、世界的な砂糖価格の高騰や供給不足の懸念により増産意欲が高まったことで相殺し、852万ヘクタール(前年度比0.1%増)と横ばいで推移すると見込まれる(表2)。サトウキビ生産量は、ラニーニャ現象が終息したことや、主産地の中南部地域が降雨に恵まれサトウキビの生育に良好な条件が続いたことなどから6億4950万トン(同7.1%増)とかなりの程度増加すると見込まれる。

 砂糖生産量は、中南部地域の良好な気候に加え、雨季が始まる前に予想よりも多くのサトウキビが収穫されたこと、また、砂糖価格の上昇などを背景とした増産機運の高まりから、4319万トン(同8.6%増)とかなりの程度増加すると見込まれる。輸出量は、インドの輸出量が予想を下回ったことなどを背景に3264万トン(同11.7%増)とかなり大きく増加すると見込まれる。他方でブラジルでは、トウモロコシと大豆の記録的な収穫増と価格高騰により、サントス港をはじめとした主要港では物流のひっ迫感が高まっている。この影響を受けてブラジルの砂糖輸出が遅滞した場合、砂糖価格の上昇につながる可能性もあると予測されている。

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2022/23年度の砂糖生産量はかなりの程度、輸出量は大幅に減少する見込み
 2022/23年度(10月〜翌9月)のサトウキビの収穫面積は、主産地であるウッタル・プラデーシュ州やタミルナードゥ州における作付面積の拡大などから、557万ヘクタール(前年度比5.4%増)とやや増加すると見込まれる(表3)。サトウキビ生産量は、ウッタル・プラデーシュ州では増産が見込まれているものの、マハラシュトラ州やカルナータカ州では降水量の偏りや雨期後半に続いた曇天に伴う日照時間の短さなどが影響し、4億5474万トン(同3.6%減)とやや減少すると見込まれる。

 一方で、砂糖生産量は、曇天が続いたことによりサトウキビの出穂しゅっすいが早まりCCS(注1)が低下したことや、同国におけるエタノールの増産などから、3554万トン(同7.8%減)とかなりの程度減少すると見込まれる。輸出量は、減産見込みに加え、同国政府が昨年11月上旬に発表した22/23年度の砂糖輸出枠600万トンに追加枠を承認する可能性が低い(注2)ことから、774万トン(同37.9%減)と大幅な減少が予想される。

(注1)可製糖率:サトウキビのショ糖含有率、繊維含有率および搾汁液の純度から算出される回収可能な糖分の割合。
(注2)現地報道によると輸出枠の600万トンのうち約400万トンがすでに輸出され、政府関係者は砂糖の減産見通しから、追加輸出を承認する可能性は低いとしている。

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2022/23年度の砂糖生産量は1000万トンを下回る見込み
 2022/23年度(10月〜翌9月)のサトウキビの収穫面積は、113万へクタール(前年度比1.0%増)とわずかに増加すると見込まれる(表4)。サトウキビ生産量は、主産地の広西チワン族自治区で7月から11月の間で続いた干ばつの影響により、6603万トン(同8.5%減)と、7000万トンを割ると予想される。中国気象局によると、広西チワン族自治区では2月から再び干ばつに見舞われているとした報告もあり、春植えの生育への影響も懸念される。一方で、同年度のてん菜の収穫面積は、トウモロコシ価格の高騰を背景に政府が昨年3月に穀物の増産を呼びかけたことを受け、他作物への転作がみられた中で15万ヘクタール(同1.2%増)とわずかに増加すると見込まれる。てん菜生産量は、順調な生育により852万トン(同20.5%増)と大幅に増加すると見込まれる。

 砂糖生産量は、サトウキビの減産予測から987万トン(同4.5%減)とやや減少し、1000万トンを下回ると見込まれる。輸入量は、これまで国内生産の不足分を上回る量が輸入され国内在庫が積み増したことから減少見通しが続いたが、国内での砂糖減産予測や世界的な砂糖供給のひっ迫懸念を理由に、690万トン(同0.7%減)と前月から上方修正され、前年度からわずかに減少する見込みである。また、中国ではゼロコロナ政策の緩和から外食需要が急増し、家庭外での消費増加も見込まれているため、消費の回復が予想以上であれば、在庫を維持するために同国の輸入量は増加する可能性がある。
砂糖生産量が7年ぶりの低水準に落ち込むと予測
 ロンドンを拠点に砂糖部門の市場分析と予測を行うCzarnikow社は3月31日、2022/23年度の中国の砂糖生産量について、サトウキビの減産を受けて15/16年度以来、7年ぶりの低水準に落ち込む可能性があることを発表した。また、同国内での砂糖の不足量(砂糖生産量と消費量の差)は最大で観測史上2番目となる650万トンが見込まれるとしている。

 同社は当該予測の要因として、同国最大の砂糖生産地域である広西チワン族自治区において、サトウキビのCCSは高かったものの、サトウキビの減産を補うには至らなかったことを挙げている。また、2月11日から3月21日における同地域の降水量が史上最低となる平年比84.4%の減少となり、3月の春植えの時期に十分な水量を確保できなかったことも一因としている。

 中国では、ゼロコロナ政策の緩和による景気の活性化を通じ、今後砂糖消費の回復が見込まれるものの、過去3年にわたる砂糖の大量輸入によって国内市場は潤沢な供給量が確保されている状況にあり、同社も22/23年度の砂糖輸入量の前年割れを見込んでいる。

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2022/23年度の輸出量は回復基調にあるものの、依然として大幅に減少する見込み
 2022/23年度(10月〜翌9月)のてん菜の収穫面積は、ロシアによるウクライナ侵攻の影響により、世界的な規模で深刻な食糧不足や価格高騰への懸念が広がる中、収益性が高く価格が高騰しているトウモロコシなどの穀物への転作が進んだことなどから、140万ヘクタール(前年度比3.9%減)とやや減少すると見込まれる(表5)。てん菜生産量は、昨夏の記録的な熱波や干ばつの影響のほか、肥料価格高騰による施肥の減少やEU域内でのネオニコチノイド系農薬の緊急的使用の禁止(注)などから収量が平年を下回るものと予測され、9918万トン(同11.0%減)とかなり大きく減少すると見込まれる。

 砂糖生産量は、フランスなどでエタノールへの仕向量が減少したものの、てん菜の減産のほか、干ばつなどの影響を受けたてん菜が12月中旬の急激な冷え込みと霜により含糖量が一層低下したことや、一部のEU加盟国での収穫作業の低迷などから、1569万トン(同8.8%減)とかなりの程度減少すると予想される。輸出量は、砂糖の減産などを背景に101万トン(同23.4%減)と前月予測から上方修正され100万トンを上回ったものの、依然として大幅に減少すると見込まれる。

(注)詳細については2023年2月7日付け海外情報「ネオニコチノイド系農薬の緊急使用に否認の判決(EU)」https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_003455.htmlを参照されたい。
バイオエタノール混合ガソリン「Super E10」の販売量が大幅に増加(ドイツ)
 ドイツのバイオエタノール産業関連団体である(BDBe:Bundesverband der deutschen Bioethanolwirtschaft)は、ドイツにおける持続可能性認証を受けたバイオエタノールの生産と消費に関する2022年の市場データを発表した。本データによると同国内のバイオエタノール生産量は71万5479トン(前年比2.0%増)とわずかに増加し、バイオエタノール10%混合の「Super E10」の販売量は402万7987トン(同42.9%増)と大幅に増加した。

 バイオエタノール生産の内訳を見ると、てん菜パルプ由来の生産量は7万2987トン(前年比39.8%減)と大幅に減少した一方で、トウモロコシなどの飼料穀物由来は64万2492トン(同10.8%増)とかなりの程度増加した。同国のバイオリファイナリー(注1)全体では約79万トンのてん菜と約270万トンの飼料穀物が持続可能性認証を受けたバイオエタノールや飼料などの製品に加工され、生産過程では有機肥料やバイオガス、飲料用炭酸なども生産されている。

 BDBeによると、数年来続いているバイオエタノール混合ガソリン「Super E10」の販売増加傾向は持続的であり、その勢いは近年加速しているとしている。これは「Super E10」と5%混合の「Super」の価格差が比較的小さい(全国平均で1リットル当たり5〜6セント程度、7〜9円程度(注2))ことに加え、混合ガソリンに対する消費者の理解醸成が進んだことや環境意識の高まりなどを要因に挙げている。同国では、温室効果ガス(GHG)の主要排出分野である輸送部門での削減強化が進められており、燃料小売事業者に対し、販売する燃料に一定のバイオ燃料などを割り当てることが義務付けられている。今後、その割当は2030年まで段階的に引き上げられる予定とされ、関係者の間では24年は前年の8.0%から9.25%に引き上げられると予想されている。

(注1)バイオマスを原料としてバイオ燃料などを生産する産業。
(注2)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の3月末TTS相場(1ユーロ=147.22円)を使用。

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農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
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