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保健機能食品における 「機能性表示食品」の位置付け

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最終更新日:2023年6月9日

保健機能食品における 「機能性表示食品」の位置付け

2023年6月

公益財団法人 日本健康・栄養食品協会 機能性食品部長 菊地 範昭

はじめに

 皆さんは「機能性表示食品」という言葉を見たり聞いたりしたことがありますか?最近では、テレビやインターネットだけではなく、ラジオからも聞こえて来たりしますね。では、内容までご存知の方はいらっしゃいますか?

 消費者庁の2021年度の消費者調査1)によると、機能性表示食品について、中身まで知っている方はわずか18%でした。一方、特定保健用食品についても、27%ということで、いずれもまだ国民の間にしっかり根付いていないのが現状です。

 しかしながら、機能性表示食品は9年目を迎えた今でも商品が増え続けています。これは、事業者側が、既存の特定保健用食品や栄養機能食品では解決できなかった課題を乗り越えたことが要因です。その背景を含めて、保健機能食品とは何か、その中の機能性表示食品の位置付けについて、さらに、保健機能食品の中の『糖質・糖類』にフォーカスして詳しく解説します。

1.『保健機能食品』とは?

 健康食品の法律的な定義はありませんが、消費者庁では「健康に良いことをうたった食品全般」としています2)。健康食品のうち、国が定めた基準に従って機能性が表示されている食品を『保健機能食品』といい、特定保健用食品、栄養機能食品、機能性表示食品の3種類があります(図)。
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2.「特定保健用食品」とは?

 特定保健用食品(以下「トクホ」という)とは、安全性および健康の維持増進効果について、国が審査し、消費者庁長官が許可した食品です。制度は1991年に作られ、これまで1065品目が許可・承認を受けています(2023年4月18日現在)。根拠法令は、健康増進法、内閣府令、食品表示法です。

 対象となる成分は、作用メカニズムが解明されていることが条件となりますが、これまで約100成分が使用されています。有効性の担保としては、関与する成分を、1日の摂取目安量以上を含んだ最終製品によるヒト試験が必須です。安全性の担保としては、動物やヒトを用いた試験が必須となります。許可を得るまでには、消費者委員会や食品安全委員会、厚生労働省の審査や審議、意見聴取を経る必要があり、数年かかることもあります。

 種類としては、「一般的なトクホ」の他に、「疾病リスク低減型」や許可実績が十分な成分を用いた「規格基準型」、商品名や風味などの軽微な変更だけの「再許可型」などがあります。許可件数としては、「規格基準型」が全体の約1割で、残りのうち半分ずつが「一般的なトクホ」と「再許可型」です。

 「疾病リスク低減型」はまだ全体の1%に過ぎませんが、現在申請可能な3領域(カルシウムによる骨粗しょう症リスク低減、葉酸による神経管閉鎖障害のリスク低減、むし歯のリスク低減)に加え、新たに心血管疾患、メタボリックシンドローム、2型糖尿病の各発症リスクの低減に関して申請がなされています。

 トクホにおける機能性領域として、市場規模で見てみますと、整腸領域が41%、コレステロール・中性脂肪・体脂肪領域が35%、骨・高吸収ミネラルと歯・歯茎領域がそれぞれ8%、血圧領域が4%、血糖領域が3%、肌領域が1%となっています(重複あり)3)

 皆さんもご存知の通り、トクホには特有のマークがあり、商品にはこれを付けなければなりません(図)。

3.「栄養機能食品」とは?

 栄養機能食品とは、特定の栄養成分の補給のために利用される食品で、国が定めた摂取量の範囲内であれば、定型文を用いて機能を表示できるもので、2001年にスタートしました。現在、ビタミン13種類、ミネラル6種類およびn-3系脂肪酸が対象となっています。

 機能性としては、「皮膚や粘膜の健康維持を助ける」が最も多く、栄養成分としてはナイアシン、パントテン酸、ビオチン、ビタミンA、ビタミンB1、B2、B6、ビタミンC、亜鉛において表示できます。次に多くなっている「赤血球の形成を助ける」については、ビタミンB12、葉酸、鉄、銅に適用されており、「骨の形成を助ける」は、ビタミンD、カルシウム、銅、マグネシウムが対象となっています。

 容器包装には「栄養機能食品」と表示します。科学的根拠が十分にあるので、国が指定する条件を満たせば、届出などは不要となっています。根拠法令は食品表示法です。

4.「機能性表示食品」とは?

 保健機能食品の中で最も新しい制度は機能性表示食品であり、食品表示法とともに2015年に始まりました。最も大きな特徴は、国の許可ではなく、事業者責任で届け出る制度ということです。

 トクホでは、開発に多額の費用が掛かり許可までに何年も要する場合が多く、栄養機能食品では、機能性に関与する成分としてビタミン・ミネラルなどに限定されていたために、機能性の領域や関与成分が限られていました。

 機能性表示食品では、有効性や安全性の科学的根拠がしっかりしていれば、消費者庁において届出資料のチェックを受けるだけで届出ができるため、機能性の領域が広くなり(トクホの12機能に比べ32機能〈公益財団法人日本健康・栄養食品協会調べ〉)、機能性関与成分も増え続けています(トクホの約100成分に比べ約240成分)。2023年4月18日現在、6745件が公表されています。

 ここまで大きく伸長している理由としては、トクホのようにその製品でのヒト試験は必須ではなく、その成分に関連するヒト試験の論文をまとめて評価する「研究レビュー」という方法による届出も可能となったことです。現在、全届出のうち、研究レビューによる届出が95%を占めています。

 しかしながら、発売前に有効性、安全性、生産、製造、品質管理などについて、届出を行う必要があり、届出した後や発売後にも消費者庁や学識経験者、消費者団体などからチェックを受ける可能性があるので留意が必要です。また、届出情報は消費者庁のホームページで公開されますので、一度ご覧になってはいかがでしょうか。

 トクホにはなかった新しい機能性領域としては、件数の多い順に認知機能、睡眠、目、ストレス、疲労感、関節、体温、歩行能力などがあります。それ以外に特筆すべき分野としては、尿酸値や免疫があります。これらの領域はテレビやインターネットで目にした方も多いのではないでしょうか。

 また、従来のトクホでは飲料やヨーグルトなどの一般的な食品形態が主でしたが、機能性表示食品ではサプリメント形状の製品が増えたことも大きな特徴です(全体の50%強)。

 現在、機能性表示食品を届け出ている事業者数は1600社弱ですが、トクホで許可を得ているのは140社弱となっています。食品業界だけでなく、他業種から参入しやすくなったのも、この制度を盛り上げている一因と言えます。

 しかしながら、制度的にはまだ課題が残されており、届出ガイドラインや質疑応答集が毎年のように改正されています。また2020年には、行き過ぎた広告事例が見られたため、消費者庁から科学的根拠や広告の不適切な事例とともに、事業者が留意すべき事項が示されました4)

 機能性表示食品においても、栄養機能食品と同じように特定のマークはありませんが、パッケージに「機能性表示食品」という表示とともに、消費者庁から公表時に付与される届出番号を記載しなければなりません。

 以上、『保健機能食品』の概要をまとめると表1のようになります。
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5.トクホと機能性表示食品における『糖質・糖類』

 皆さんの関心の高い『糖質・糖類』については、トクホにおいて関与成分としてすでに使われていましたが、2015年に機能性表示食品制度が立ち上がる際にはガイドライン上に、糖類(単糖類または二糖類であって、糖アルコールでないものに限る)の過剰な摂取につながるものは対象とならない、と規定されていました。

 しかし、糖質および糖類について、2016年に行われた「機能性表示食品制度における機能性関与成分の取扱い等に関する検討会」において、エネルギーになりにくいものについては機能性関与成分の対象としてもよいのではないかとの議論を受け、2018年のガイドライン改正時に盛り込まれました。すなわち、主として栄養源(エネルギー源)とされる成分(ぶどう糖、果糖、ガラクトース、しょ糖、乳糖、麦芽糖およびでんぷん等)を除いた糖質、糖類についても対象となり得る5)と規定されました。

 また、ガイドライン中の「対象成分となり得る構成成分等」の表に、「糖質」の例としてキシリトール、エリスリトール、フラクトオリゴ糖、キシロオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、乳果オリゴ糖(ラクトスクロース)が、「糖類」の例としてL-アラビノース、パラチノース、ラクチュロースがそれぞれ示されました5)(表2)。

 さらに2018年には、分析方法の妥当性について検証されている必要があるとされ、出典や関連資料も添付することとなりました。

 これまでトクホや機能性表示食品において、関与成分としてよく用いられている『糖質・糖類』としては次の通りです。

 トクホにおいては、許可・承認件数全体の60%が難消化性デキストリンなどの難消化性糖質で、機能性表示食品においても、届出件数全体の17%を占めています6)

 機能性表示食品においては、「虫歯になりにくい」ということで、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、パラチノース、ラクチュロースや各種オリゴ糖が使われています。商品形態としてはガムが多くなっています。「おなかの調子」の領域においては、難消化性デキストリン、フラクトオリゴ糖などの各種オリゴ糖やラクチュロースがあり、「腸内のビフィズス菌を増やす」「腸内環境を整える」などと表示されています。その他、「糖の吸収をおだやかにする」(難消化性デキストリン、L-アラビノースなど)、「血中中性脂肪を下げる」(イヌリンなど)、「血中コレステロールを低下させる」(キトサンなど)、「カルシウム吸収を促進させる」(フラクトオリゴ糖など)などがあります6)

 さらに研究開発が進んでいくと、将来的にも、機能性関与成分としての『糖質・糖類』の活用はますます高まるでしょう。
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おわりに

 保健機能食品は、日本において唯一機能性を表示できる食品です。その中で、今一番伸長しているのが機能性表示食品であり、事業者において非常に注目され、研究開発も進んでいます。そこでは、新しい成分や領域が次々と開拓されており、『糖質・糖類』においてもさらなる発展が見込まれます。

 消費者においてはまだまだ認知が進んでいないのが現状ですが、人生100年時代と言われて久しく、健康寿命も延びていくなか、健康を維持・増進するために、これらの食品を賢く日常生活に取り入れてみてはいかがでしょうか。
<参考文献>
1)消費者庁(2022)「食品表示に関する消費者意向調査」
2)消費者庁(2019)「健康食品Q&A」
3)株式会社富士経済(2023)「H・Bフーズマーケティング便覧 2023」
4)消費者庁(2020)「機能性表示食品に対する食品表示等関係法令に基づく事後的規制(事後チェック)の透明性の確保等に関する指針」
5)消費者庁(2022)「機能性表示食品の届出等に関するガイドライン」
6)消費者庁(2020)「難消化性糖質及び食物繊維のエネルギー換算係数の見直し等に関する調査・検証事業報告書」
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農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
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