2022/23年度の輸出量は減産を背景に大幅に減少し、90万トン割れの見込み
2022/23年度(10月〜翌9月)のてん菜の収穫面積は、ウクライナ情勢の影響などにより、世界的な規模での食糧不足や価格高騰の懸念が広がる中、収益性が高く価格が高騰しているトウモロコシなどの穀物への転作が進んだことなどから、140万ヘクタール(前年度比3.8%減)とやや減少すると見込まれる(表5)。てん菜生産量は、昨夏の記録的な熱波や干ばつの影響のほか、肥料価格の高騰による施肥の減少やEU域内でのネオニコチノイド系農薬の緊急的使用の禁止などから収量が平年を下回ると予測され、9960万トン(同10.6%減)とかなりの程度減少すると見込まれる。
砂糖生産量は、てん菜の減産のほか、干ばつなどの影響を受けたてん菜が12月中旬の急激な冷え込みと霜により含糖量が一層低下したことなどから、1575万トン(同8.9%減)とかなりの程度減少すると予想される。輸入量は、不足分を補うため、ウクライナやブラジルからの輸入が増加し、274万トン(同28.4%増)と大幅な増加が見込まれる。一方、輸出量は、砂糖の減産などを背景に、85万トン(同35.0%減)と大幅に減少し、90万トンを割ると見込まれる。
EUの砂糖業界、加盟国に対し、豪州への市場開放の拒否を要請
欧州砂糖製造者協会(CEFS)と欧州てん菜生産者連盟(CIBE)は6月8日、豪州に対するEU砂糖市場の開放拒否を主旨とした、EU加盟国への要請文を公開し、豪州とのFTA交渉についてけん制した。
(1)EU砂糖業界の強
靭性
2017年の生産割当の終了以来、砂糖は長期にわたり低価格が続き、地方では工場閉鎖による数千人の雇用が失われ、生産コストも継続的かつ前例のない上昇が続いている。このような厳しい環境の中、EUの砂糖業界は域内需要を十分に満たす生産量を確保している。
(2)ウクライナ産砂糖の輸入増加
ロシアのウクライナ侵攻以来、EUの砂糖業界はウクライナを支援し、同国産の砂糖輸入は、2022年6月から23年4月の10カ月間で、年間輸入枠の13倍以上の実績があった。この輸入増はEUの砂糖業界にとって大きな負担であり、豪州との交渉で考慮される内容である。
(3)EU市場の開放によるEU砂糖業界への圧迫
EUの貿易政策は、EUの砂糖生産が食料安全保障に貢献していることを反映しておらず、過去10年間、FTA交渉での譲歩の結果、EU市場における第三国産砂糖の参入可能性は大幅に増加した。豪州への追加的な市場開放は、脱炭素化やFarm to Fork戦略の実施といった長期的な課題に適応しようとする中で、EUの砂糖業界にさらなる圧迫を与えかねない。
(4)Brexitと英豪FTAの影響
英国がEUから離脱したことで英国への輸出が減少し、EU産砂糖の域内流通量が拡大した。一方で、英国離脱後もWTO輸入枠が持続されたことで、豪州産砂糖の域内流通の可能性は大きく拡大した。また、英豪FTAによる、豪州産砂糖のEU市場への間接的な輸入の発生が懸念されている。
(5)持続可能性と不公平な競争
EUの砂糖業界は、EUが食品や農産物の健康・環境基準を重視することを支持し、持続可能性に係る理念はFTA交渉でも尊重されるべきとしている。しかし、基準を満たさない第三国に市場開放することは、EU産の砂糖が不公平な競争にさらされることとなる。豪州は基準を満たさない状況にあり、整合性を確保すべきである。