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和菓子を愛して―全国銘産菓子工業協同組合の取り組み―

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最終更新日:2023年8月10日

和菓子を愛して―全国銘産菓子工業協同組合の取り組み―

2023年8月

全国銘産菓子工業協同組合
理事長 久保田 陽彦

 

1.全国銘産菓子工業協同組合とは

 てまえども全国銘産菓子工業協同組合(以下「全国銘菓」という)は、全国の老舗和菓子屋から構成される組合でございます。北は北海道から九州は鹿児島まで、老舗の和菓子屋が会員となっております。

 みな和菓子を愛し、お客さまの笑顔を求めて和菓子を提供させていただいている老舗の菓子屋でございます。

 全国銘菓の会員は表1の通りでございます。
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2.全国銘菓の生い立ち

 全国銘菓は昭和25年(1950年)に設立されましたが、当時の日本は経済統制下であり、砂糖や小豆といった菓子原料の入手が困難で、ほとんどの菓子屋が自分たちの思うように菓子を作れずにいました。全国銘菓は、こうした状況下で苦しんでいた全国の老舗菓子屋が集まり、特別配給が受けられるよう、政府と交渉する窓口として設立された団体です。

 前身は昭和15年に結成された「全国大口自家製餡組合」でございますが、この組合は戦争の激化により昭和18年に解散しています。昭和25年に元全国大口自家製餡組合のメンバーが集まり、先に述べた砂糖・小豆などの原材料確保のため「全国各地で銘産菓子を作ってきた歴史ある業者」の団体として「そののれんと技術の保存育成」を目指し「全国銘産菓子工業協同組合」が設立されました(表2)。
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3.全国銘菓の活動(1)〜全国銘菓展の開催〜

 全国銘菓は発足当時より日本橋三越さまにて、いわゆる催事を行っていました。

 第1回目は全国銘菓が発足した昭和25年に「全国銘菓復興展示即売会」という催事名で開催されました(写真1)。当時は菓子がまだまだそれほど市販されていない時期で、全国各地の銘菓が一堂に集まるということから『甘いもの』に飢えた人々がこの催事に押し寄せたと聞いております。

 その後、この催事は「全国銘菓展」と名を変えて本年度は第77回目の開催となりました。毎年のテーマに合わせ、各菓子屋が新しい菓子を作り、またさまざまな試みを行っています。
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4.全国銘菓の活動(2)〜「あじわい」の刊行〜

 全国銘菓では会員のための機関誌として昭和39年に「全国銘菓」を創刊しました(写真2)。




 この機関誌をお客さまにも読んでいただける広報誌にしたいと考え、冊子の名前も「あじわい」と変更し、昭和43年にリニューアルしました。

 「あじわい」の刊行は現在も続き、通巻200号を超えました(写真3)。
 
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5.全国銘菓の活動(3)〜相互研さん〜

 全国銘菓の会員にとっての魅力は会員相互の親睦、情報交換、そしてなんといっても己の修練の場であることだと思います。

 全国銘菓の村岡前理事長は、全国銘菓をよく「全銘大学」と呼び、勉強の場であるとおっしゃっていました。私も同様に考え、諸先輩から本当に素晴らしいお話を聞かせていただいています。

 会員相互のお付き合いは、菓子の技術だけではなく、会社の経営者として、そして己の人間としての成長ができる機会だと思います。私自身の話で恐縮ですが、既存の菓子のこれからを悩んでいた時、先輩からのお言葉で目の前が開けた、そんな経験がございました。

 経営、菓子の出来栄えについて、そして自分自身のことなど会員の皆さんから本当に勉強させていただいております。
 

6.全国銘菓記念事業の実施

 全国銘菓は令和2年に創立70年を迎えましたが、コロナ禍ということもあり、70周年記念事業は行うことができませんでした。なお、創立60周年(平成22年5月13日)の際には京都・賀茂別雷神社(上賀茂神社)にて献菓祭と式典を行い、会員加盟店65社、約100人が参列致しました(写真4)。
 



 
 また、60周年記念事業として記念誌を発刊しました。会員各社の代表銘菓や和菓子についての紹介など、200ページを超える本となりました(写真5)。
 



 
 さらに、同じく記念事業としてフランスへの視察旅行を行いました。パリ市内の菓子屋や古くから続く有名企業を訪問し、社主との懇談を行い、さらにはコールマール、ストラスブールの菓子屋、菓子職人学校などを訪れ、実り多き旅行となりました(写真6)。
 
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7.今後の全国銘菓の活動

 近年マスコミなどで「和菓子離れ」という言葉を聞くことがございます。確かに和菓子と洋菓子では、洋菓子の売り上げの方が多いのは事実です。こうした状況の中で、和菓子屋の我々がこれからもっと元気になるにはどうすればよいのでしょうか。

 そんな問題意識の中から我々は、今年の春から新たな事業をはじめました。それが「御菓印(ご か いん)」でございます(写真7)。
 
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 「御菓印」とは、簡単に言えば神社仏閣にある「御朱印」の和菓子屋バージョンと考えていただければよろしいかと存じます。それぞれの和菓子屋が、自分たちのお店の本店に訪れてお買物をしていただいたそのしるし(記念)としてお渡しするのがこの「御菓印」でございます。

 「御菓印」に協力いただいている会員は現在約40数社ですが、それぞれの本店で趣向を凝らしたデザインの「御菓印」をお渡ししております。また、全国銘菓ではこの「御菓印」を収集できる「御菓印帳」を製作し販売しております(写真8)。

 各土地の銘産の和菓子にはそれぞれの歴史があります。また、その和菓子が生まれた店、本店にはそれぞれの土地の歴史があり、本店ならではの雰囲気、たたずまいがございます。それらを感じて、和菓子に触れていただきたい、そんな我々の小さな願いがこの「御菓印」を誕生させたのだと思います。

 これからの和菓子の可能性をこの「御菓印」と共に歩めればと願いつつ・・・
 
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このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
Tel:03-3583-9272