ホーム > 砂糖 > 砂糖の国際需給・需給レポート > 4.日本の主要輸入先の動向(2023年7月時点予測)
最終更新日:2023年8月10日
2023/24年度の輸出量は、砂糖の増産を背景にかなり大きく増加する見込み
2023/24年度(4月〜翌3月)のサトウキビの収穫面積は、34万ヘクタール(前年度比2.5%増)とわずかな増加が見込まれる(表6)。サトウキビ生産量は、クイーンズランド州南部などで乾燥した気候が続いたことで、3176万トン(同2.5%減)と、前年度からはわずかな減少が予想される。
砂糖生産量は、433万トン(同2.6%増)とわずかに増加すると予想される。輸出量は、世界的な経済回復により同国の主要輸出先である韓国、インドネシアおよび日本などの砂糖消費需要によってけん引されることに加え、世界的な砂糖の供給懸念により豪州産砂糖需要の高まりが見込まれることから、333万トン(同13.2%増)とかなり大きく増加すると見込まれる。
豪英FTA発効後初となる豪州産砂糖の英国向け出荷が開始される
クイーンズランド砂糖公社(QSL)とサトウキビ生産者団体のCANEGROWERS、ならびに英国の製糖企業Tate & Lyle社は7月10日、2023年5月31日に発効した豪英自由貿易協定(豪英FTA)による英国向け粗糖出荷に対する共同声明を発表した。
かつて豪州から輸出される砂糖の三分の一程度が英国向けであったが、欧州が高い関税を設定することで豪州産の欧州市場へのアクセスを制限したことから、長らく豪州産砂糖の英国輸出は実現していなかった。この度の輸出再開について、QSLのCEOは1973年に英国がEC(欧州共同体〈EUの前身〉)に加盟した際に事実上失われた現地市場を再活性化させるもので、業界一丸となって取り組んだ結果であると高く評価した。なお、豪州農漁林業省は協定発効初年度の豪州産粗糖の輸出額を7400万豪ドル(72億3498万円)(注1)に達すると見込んでいる。
またCANEGROWERSの会長も、サトウキビ生産者が業界主導の農場環境管理プログラム「Smartcane BMP(注2)」の導入に踏み切ったことが、約半世紀ぶりとなる英国向けの商業出荷の再開につながったとし、豪州の貿易交渉担当者と業界による長年の努力を称賛した。
Tate & Lyle社は豪州産粗糖の調達理由に、クイーンズランド州で栽培されるサトウキビの4割がSmartcane BMP認証を受け、州内の生産者は農場での収益性を維持しながら、持続可能性に係る投資を続けていることなど、豪州の砂糖産業が世界最高峰の持続可能性を有していることを挙げている。
約半世紀ぶりとなる豪州の英国向け粗糖輸出は、豪英FTAにより初年度に8万トンの免税枠が設定され、2031年1月1日に関税が完全に撤廃されるまでの間、徐々に輸出量が増加する見込みとなっている。豪英FTA発効以降初となる英国向け豪州産粗糖は7月11日にQSLによりクイーンズランド州のタウンズビルから輸出され、9月10日にTate & Lyle社の製糖所に到着する予定となっている。
(注1)1豪ドル=97.77円(三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の
6月末TTS相場)。
(注2)サトウキビ栽培の生産性や収益性、持続可能性の向上のためにクイーンズランド州
すべての生産者が参加できる任意プログラム。
クイーンズランド州政府の資金援助を受け、CANEGROWERSが主体となり実施される。
詳細については『砂糖類・でん粉情報』
2023年4月号「砂糖の国際需給5.日本の主要輸入先国の動向(2023年3月時点予測)」
https://www.alic.go.jp/joho-s/joho07_002900.htmlを参照されたい。
2022/23年度の砂糖生産量は前年度より増加、輸出量も800万トン前半と前年度を上回る見込み
2022/23年度(10月〜翌9月)のサトウキビの収穫面積は、競合するキャッサバの生産に転換した農家の一部回帰などから、162万ヘクタール(前年度比6.0%増)とかなりの程度増加すると見込まれる(表7)。なお23/24年度に向け、現地では作付けが始まっておりエルニーニョなどによる乾燥気候を考慮し、より乾燥に強いキャッサバに転換する農家が増加しているとされる。サトウキビ生産量は、昨年の雨期の長雨により東北地域の低地帯で洪水が発生したものの、他の地域で収量が増加し、9389万トン(同3.0%増)と依然として高水準が見込まれる。
砂糖生産量は、サトウキビの増産に加え含糖量が前年度を大きく上回ったことから、1158万トン(同7.7%増)とかなりの程度増加し、21/22年度に引き続き1000万トン超えが見込まれる。輸出量は、砂糖の増産や輸出先国の景気回復などを背景に、833万トン(同3.1%増)と依然として倍増した前年度を上回ると見込まれる。