砂糖 砂糖分野の各種業務の情報、情報誌「砂糖類情報」の記事、統計資料など

ホーム > 砂糖 > 調査報告 > てん菜 > 令和4年産てん菜の生産状況について

令和4年産てん菜の生産状況について

印刷ページ

最終更新日:2023年9月11日

令和4年産てん菜の生産状況について

2023年9月

北海道 農政部 生産振興局 農産振興課

【要約】

 令和4年産てん菜の作付面積は、5万5182ヘクタールと前年から2327ヘクタール減少した。生産量は、春先の天候不順や夏期の高温多雨による褐斑病や根腐症状、湿害が発生したことから、前年より減少し354万4512トンとなった。その結果、10アール当たり収量も、前年より減少し6423キログラムとなった。

 糖分は、病害や湿害の発生、夏から秋の最低気温が高かったことから、この5年間では最も低い16.1%、歩留まりは15.9%となり、砂糖生産量は56万2341トンとなった。
 

1.最近のてん菜の作付け動向

 てん菜は、北海道の畑作経営の輪作体系を維持する上で基幹的な作物であるとともに、てん菜糖業は地域経済の維持・発展に重要な役割を担っている。

 近年、生産者の高齢化や経営規模の拡大に伴い、労働負担の大きいてん菜から他作物への作付け転換などにより、作付面積は総じて減少傾向で推移しており、令和4年産は、5万5182ヘクタールと前年から2327ヘクタール減少した(図1)。
 
1

2.令和4年産てん菜の生育概況

 播種(は しゅ)期、出芽期および移植期は平年並みだったが、一部で5月中旬までの少雨による乾燥のため、直播(ちょく はん)の発芽不良や生育抑制がみられた。その後は、6月上旬の低温で一時生育が抑制されたが、8月までは生育は順調だった。一方、6月中旬から8月中旬まで高温・多雨となったことから、十勝地方周辺および胆振地方で褐斑病・根腐症状が多発したが、病害の少なかった地域では順調に生育が進み、収穫期直前の10月15日の生育遅速は平年並みとなった(表1)。

 その他の病害虫については、そう根病や黄化病の発生は少なく、ヨトウガは初発期が早かったが、第1世代・第2世代ともに発生量はやや少なかった。テンサイモグリハナバエの発生は平年並みであった。
 
2

3.令和4年産てん菜の生産状況

 令和4年産てん菜の作付面積は、前年産と比べ2327ヘクタール減少し5万5182ヘクタール(前年比96.0%)となった。

 生産量は、春先の天候不順や夏期の高温多雨による褐斑病や根腐症状、湿害の発生により、51万6337トン減少し354万4512トン(同87.3%)となり、その結果、10アール当たり収量は、638キログラム減少し6423キログラム(同91.0%)となり、この5年間では、平成30年に次いで少ない値となった。

 根中糖分については、病害や湿害の発生、夏から秋の最低気温が高かったことにより、この5年間では最も低い16.1%となり、前年産を0.1ポイント下回った(表2、図2)。






 品種別の作付け構成は、「カーベ2K314」(34.1%)、「パピリカ」(27.3%)、「ライエン」(16.2%)の順となっている(表3)。 




 「カーベ2K314」は、褐斑病やそう根病の抵抗性が優れており、「パピリカ」は、そう根病抵抗性に優れ根重が多く、平成29年に優良品種に認定された「ライエン」は、そう根病抵抗性に優れ糖量が多いことから、作付け割合が高くなっている。

 てん菜の作付け戸数は全道的に減少傾向が続いており、令和4年産は10年前(平成24年)と比べ1431戸減少し(18.0%減)、6531戸となった。一方、1戸当たりの作付面積は8.4ヘクタールと、10年で1.0ヘクタール増加している(図3)。

 労働力不足の中でこうした作付け規模の拡大に対応するため、近年では、春の育苗・移植作業に要する労働力を大幅に削減できる直播栽培に取り組む地域が増加しており、4年産の直播栽培の面積は、前年より1770ヘクタール増加の2万2206ヘクタール(作付面積の40.2%)となっている(図4)。



 
3

4.てん菜糖の生産状況

 北海道内の製糖工場は、3社8工場で操業しており、令和4年産原料処理量は354万4512トンで、歩留まりは15.9%となったことから、砂糖生産量は56万2341トン(前年比87.9%)となり、この5年間では最も低くなった(表4)。

 なお、北海道糖業株式会社本別製糖所にあっては、令和5年3月をもって生産を終了したが、原料てん菜については、近隣の工場にてこれまで通り受け入れることとなっている。
 
4

おわりに

 令和4年産のてん菜生産については、近年少なかった褐斑病や根腐症状、湿害が地域によって多発したことが大きく影響し、生産量および10アール当たり収量、糖分は平年に比べ低く、砂糖生産量は56万2341トンとなり、この5年間では最も低くなった。

 てん菜は、小麦や豆類、ばれいしょとともに、本道畑作農業における基幹作物として重要な作物であることから、今後とも、てん菜を安定的に生産していくため、生産者、製糖業者、行政などの関係者が連携し、直播栽培の拡大に向けた機械の整備や新品種の導入をはじめとした省力・低コスト化に向けた取り組みをより一層、推進していく必要がある。
 
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
Tel:03-3583-9272