2023年8月のニューヨーク粗糖先物相場(10月限)の推移を見ると、1日は、インドの製糖企業が2023/24年度の砂糖生産量を減産(前年度比3%減)と見込んだことから、同国の砂糖供給の懸念が相場を上昇させ、1ポンド当たり24.39セント(注1)をつけた(図3)。2日以降は、原油安(注2)やレアル安(注3)を受けて下落傾向が継続し、4日は、同23.69セントをつけた。なお、同日、インド政府は同国7月末時点の砂糖在庫量を1080万トンと発表した。7日は、前週のインド政府の発表を受け、同国で十分な量の砂糖が確保され、輸出抑制緩和が期待されたが、ロンドンを拠点とする調査会社がタイの同年度の砂糖生産量を17年ぶりの低水準(前年度比で3割減)に落ち込むと発表したことなどを受け、同23.74セントと上昇に転じた。8日は、中国で7月の砂糖輸入量が前年同月比12.4%減と直近6カ月で最大の減少幅となったことが発表され、同国での需要の落ち込みが重荷となり、同23.45セントと下落した。9日は、原油高により、同23.71セントと上昇した。10日以降は、国際砂糖機関(ISO)が同年度の世界の砂糖生産量を前年度比1.2%減と予測し、期末在庫量も前年度の85万2000トンの余剰から212万トンの不足に転じるとしたことなどを受け、11日は、同24.33セントと上昇した。14日以降は、レアルが約2カ月ぶりの安値まで急落したことから、15日は、同23.77セントまで下落した。16日は、ブラジルで豪雨発生による収穫遅延が懸念され、同24.19セントまで上昇した。17日以降は、ブラジル国家食料供給公社(CONAB)が同年度の同国の砂糖生産量見込みを4月発表の3880万トンから4090万トンへ引き上げたことから、下落基調が持続し、22日は同23.40セントまで下落した。23日は、インドでモンスーン期の少雨による砂糖の減産が見込まれ、同政府が7年ぶりに砂糖輸出を許可しない可能性があると報じられたことから大きく反発し、同23.85セントをつけた(なお同政府は22/23年度の輸出許可量を610万トンとしている。また、23/24年度の砂糖生産量を見て、最終判断するとしている)。24日は、ブラジルサトウキビ産業協会(UNICA)がブラジル中南部の8月前半の砂糖生産量を前年同期比31.2%増と発表したが、前日のインドの輸出停止の可能性に関する報道が尾を引き、同24.29セントまで値を上げ、翌日も続伸した。28日は、インド気象庁が同国の砂糖生産量の約4割弱を占めるマハラシュトラ州での降雨量減少の発表を受け、同25.57セントとさらに上昇を重ねた。29日以降は、ロングポジション(注4)の清算が進んだことで下落し、31日は同25.06セントをつけた。
9月1日は、インドの8月の降雨量が1901年以来、最も少雨となったことを受け、同25.81セントまで上昇した。5日は、世界最大級の砂糖トレーダーがインドでの砂糖輸出の抑制とタイでのキャッサバへの作付転換の加速などから、同年度は世界的に砂糖が540万トン不足し、6年ぶりの砂糖不足となると見通したことから、同26.65セントと急騰した。6日は、8月後半からの相場上昇を受け、一部でロングポジションの清算が行われたことで、同26.22セントと値を落とした。7日はタイの製糖会社が同国での深刻な干ばつにより同年度の砂糖生産量の減産(900万トン減:前年度比18%減)見込みを発表したことを受け、同26.68セントと上昇し、その後も、世界的な砂糖生産量の減少懸念から高止まりが続き、11日は同26.40セントをつけた。
(注1)1ポンドは約453.6グラム、1米セントは1米ドルの100分の1。
(注2)一般に、原油価格が上昇すると、石油の代替燃料であるバイオエタノールの需要も増加する。バイオエタノールの需要増加により、その原料作物(サトウキビ、てん菜など)のバイオエタノール生産への仕向けが増える一方、それらから生産される食品(サトウキビの場合は砂糖)の生産・供給が減ると想定される。食品用途仕向けの度合いが小さくなるほど需給がひっ迫し、当該食品の価格を押し上げる方向に作用する。
(注3)粗糖は米ドル建てで取引されるため、米ドルに対してレアルが下落すると、相対的にブラジル産粗糖の価格競争力が高まる。世界最大の砂糖輸出国ブラジルの輸出意欲が高まると、需給の緩和につながることから、価格を押し下げる方向に作用する。
(注4)将来の値上がりを期待して買いの持ち高を取っている状態。