ホーム > 砂糖 > 砂糖の国際需給・需給レポート > 4.世界の砂糖需給に影響を与える諸国の動向(2023年9月時点予測)
最終更新日:2023年10月10日
2023/24年度の輸出量は、増産と国際需要の高まりを背景に大幅増を見込む
2023/24年度(4月〜翌3月)のサトウキビ収穫面積は、農家の一部でより収益性の高い大豆やトウモロコシなどへの切り替えが進んだものの、850万ヘクタール(前年度比0.1%増)と前年度並みの水準が見込まれる(表2)。サトウキビ生産量は、主産地の中南部地域で好天に恵まれ収穫に良好な条件が続いたことなどから、6億7800万トン(同11.8%増)とかなり大きく増加すると見込まれる。
砂糖生産量は、サトウキビの増産を受けて、収穫作業や工場での操業が加速しているほか、輸出関連の物流の全面的稼働を背景に、4644万トン(同16.9%増)と大幅に増加すると見込まれる。輸出量は、エルニーニョ現象による世界的な天候不順への懸念や国際市場での輸入需要の高まりが期待されることから、3480万トン(同20.1%増)と大幅に増加すると見込まれる。
生産者団体、サトウキビ出荷価格の増額見直しを要求
生産者団体であるORPLANAは、製糖企業への原料出荷価格(サトウキビ価格)が、国際的な比較において不当に安価となっているとして不満を表明している。ORPLANAの最高経営責任者は、現在同国で設定している出荷価格は1トン当たり26米ドル(3827円)(注1)で、米国やトルコに比べ大幅に安いとし(注2)、サトウキビの生産コストを下回り、世界で最も低い価格となっているとしている。現在、同国では大豆やトウモロコシの飼料穀物の生産が順調で、収量も増加していることから、採算割れとなるサトウキビ栽培から、より収益性の高い他の作物への切り替えが進んでいるとし、同責任者は価格改定(現行価格の3割程度の上乗せ)が必要であるとしている。
(注1)1米ドル=147.2円(三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の8月末TTS相場)。
(注2)同責任者によると、世界的に最も高く設定されている国は米国で、同41.30米ドル(6079円)。次いでトルコが同41.10米ドル(6050円)であるとしている。
2023/24年度輸出量は、減産と国内需要確保により大幅に減少する見込み
2023/24年度(10月〜翌9月)のサトウキビの収穫面積は、555万ヘクタール(前年度比0.3%減)と前年度からほぼ横ばいで推移すると見込まれる(表3)。サトウキビ生産量は、インド南西部でサトウキビの生育に重要な時期に非常に乾燥した天候に見舞われたことから、4億4910万トン(同3.2%減)とやや減少すると見込まれる。
砂糖生産量は、インド北部ではサトウキビが順調に生育しているものの、他の主産地でサトウキビの減産が見込まれることから、3332万トン(同5.7%減)とやや減少すると見込まれる。輸出量は、砂糖の減産見込みや内需向け確保、エタノールへの仕向け量の増加のほか、同年度の砂糖輸出は行わないとする政府関係者の発言が現地で報じられていることなどから、228万トン(同70.1%減)と、前年度に引き続き大幅な減少が見込まれる。
マハラシュトラ州、過去4年で最低数量を見込む
インド南西部の主産地であるマハラシュトラ州の8月の降雨量は平年の4割程度と、過去100年間で類を見ないほど乾燥している。英国のロイター通信社は乾燥気候を受け、2023/24年度の同州の収穫量は前年比で14%の減少と、過去4年で最少を見込んでいる。
砂糖の減産見込みは、内需確保と価格安定に向け、砂糖輸出を見合わせるとする政府の判断材料となる。21/22年度の同州が過去最高の1370万トンの砂糖を生産したときは、1120万トンの輸出枠が設定された一方で、翌年の22/23年度は1050万と減産となり、輸出枠も610万トンに減った。
同州のムンバイに拠点を置く商社によると、同州の砂糖生産は同国の輸出にとって極めて重要であるが、この度の乾燥による影響は、今年度の輸出に大きな影を落とすとして、政府は7年ぶりとなる輸出停止に踏み込む可能性がある。
2023/24年度は砂糖の増産が進むも、輸入量もかなりの程度の増加を見込む
2023/24年度(10月〜翌9月)のサトウキビの収穫面積は、116万へクタール(前年度比0.3%減)とほぼ横ばいで推移すると見込まれる(表4)。サトウキビ生産量は、乾燥した天候が懸念されるものの、減産となった前年度からの回復が期待され、6828万トン(同9.0%増)とかなりの程度増加すると見込まれるが、20/21年度や21/22年度の7000万トン台までの回復には至らないと考えられている。一方で、23/24年度のてん菜の収穫面積は、18万ヘクタール(同9.5%減)とかなりの程度減少すると見込まれる。てん菜生産量は、収穫面積の減少に加え、内モンゴル自治区で乾燥した天候が懸念される中、895万トン(同2.3%増)とやや増加すると見込まれる。
砂糖生産量は、サトウキビの生産回復を主因に1029万トン(同6.0%増)とかなりの程度増加し、21/22年度の水準にまで回復すると見込まれる。輸入量は、近時の世界的な砂糖価格の上昇などを背景に在庫の取り崩しが進んで輸入が増え、今年度は647万トン(同10.9%増)と昨年度の水準を上回る輸入量が見込まれる。
2023/24年度の輸出量は、増産などを背景に大幅に増加する見込み
2023/24年度(10月〜翌9月)のてん菜の収穫面積は、春先の雨天のために作付けは遅れたものの、ハンガリーやスペインで作付面積の増加が見込まれることから、144万ヘクタール(前年度比2.9%増)とやや増加すると見込まれる(表5)。てん菜生産量は、この数カ月間北西ヨーロッパ地域の大部分で良好な降雨と日照に恵まれ、作柄の見通しが改善されたことから、1億292万トン(同3.8%増)とやや増加すると見込まれる。
砂糖生産量は、一部地域では萎黄病(注)の影響によるてん菜の減産が懸念されるものの、前年度ほどの被害はないとする予測から、1645万トン(同4.8%増)とやや増加すると見込まれる。輸入量は、てん菜の増産が期待されることから、303万トン(同1.5%増)とわずかに増加する程度と見込まれる。また、輸出量は、222万トン(同2.3倍)と大幅に増加し、回復が見込まれる。
(注)萎黄病はアブラムシによって媒介される植物ウイルス病。