3 世界の砂糖需給に影響を与える諸国の動向(2023年11月時点予測)
最終更新日:2023年12月11日
3 世界の砂糖需給に影響を与える諸国の動向(2023年11月時点予測)
2023年12月
2023/24年度の砂糖輸出量は、増産と国際需要の高まりから大幅に増加する見込み
2023/24年度(4月〜翌3月)のサトウキビ収穫面積は、一部の農家でより収益性の高い大豆やトウモロコシなどへの切り替えが進んだことから、828万ヘクタール(前年度比2.5%減)とわずかに減少すると見込まれる(表2)。サトウキビ生産量は、主産地の中南部地域で好天に恵まれ収穫に良好な条件が続いたことなどから、6億8200万トン(同12.4%増)とかなり大きく増加すると見込まれる。
砂糖生産量は、サトウキビの増産を受けて、収穫作業や工場での操業が加速しているほか、輸出関連の物流の全面的稼働を背景に、4741万トン(同19.4%増)と大幅に増加すると見込まれる。今後、同国では雨季を迎えるが、好天が持続すれば12月中旬まで工場の圧搾作業が延長される見込みである。輸出量は、エルニーニョ現象による世界的な天候不順への懸念や国際市場での輸入需要の高まりが期待されることから、3502万トン(同20.8%増)と大幅に増加すると見込まれる。
エルニーニョは2024年6月まで継続する可能性
米国海洋大気庁(NOAA)は11月9日、9月に発生したエルニーニョ現象がますます強くなっており、これから夏を迎えるブラジルでは記録的な高温となる可能性が高まっていると発表した。また、NOAAによると、同国では同現象による影響が2024年秋まで続くと見込まれ、24年4月〜6月にかけて継続する確率は62%と予測されている。さらに、23年11月〜24年1月にかけて「スーパー・エルニーニョ」と呼ばれる強いレベルに達する可能性は35%とし、海面水温が平年を3.6度上回ると予想されている。同国では1950年以降、1982〜83年、1997〜98年、2015〜16年の冬に計3回のスーパー・エルニーニョが記録されている。
エルニーニョ現象は太平洋の海水が異常に暖かくなる現象で、干ばつや洪水、熱帯性暴風雨など、世界中で極端な気候変動や被害を引き起こすことがある。同現象は5〜7年ごとに発生し約1年半続く。NOAAによれば、現在発生している同現象は近年で最も強く、同国の北東部と南部では平均以上の降雨を、中央部と南西部では干ばつを引き起こす可能性があると警告している。
2023/24年度の砂糖輸出量は、減産と国内供給の確保により大幅に減少する見込み
2023/24年度(10月〜翌9月)のサトウキビの収穫面積は、546万ヘクタール(前年度比0.4%減)と前年度からほぼ横ばいで推移すると見込まれる(表3)。サトウキビ生産量は、過去5年間でモンスーン期の降雨が最も少なかったことやカルナータカ州とマハラシュトラ州の一部など南西部では、乾燥した天候がサトウキビの生育にマイナスの影響を与えたことから、4億4322万トン(同3.7%減)とやや減少すると見込まれる。
砂糖生産量は、インド北部ではサトウキビが順調に生育しているものの、他の主産地でのサトウキビの減産が見込まれることから、3195万トン(同8.9%減)とかなりの程度減少すると見込まれる。輸出量は、砂糖の減産見込みやエタノールへの仕向け量の増加のほか、国内市場価格の安定を優先する観点から、348万トン(同59.5%減)と大幅な減少が見込まれる。
2023/24年度の砂糖輸出制限を延長
インドの商工省外国貿易部(DGFT)は10月18日、砂糖の輸出制限を11月1日以降も延長すると発表した。これによるとEUおよび米国向けの関税割当を除いた砂糖の輸出制限が延長される。なお、延長の終期は追って通知するものとしており、23/24年度の輸出枠は公表されていない。
この発表は、22年10月28日に発表された砂糖の輸出制限(22年10月31日〜23年10月31日まで)の延長にあたる。昨年は輸出制限発表の約1週間後の11月6日に、インド消費者問題・食糧・公共配給省によって、国内の製糖工場の財務状況を安定させる措置として、約600万トン(前年度比46.4%減)の輸出枠の割り当てが公表された。
23/24年度の輸出制限の延長発表により、供給不安への懸念が強まる可能性があり、今後のインド政府の動向が注目される。
2023/24年度の砂糖生産量はかなりの程度、輸入量はかなり大きく増加する見込み
2023/24年度(10月〜翌9月)のサトウキビの収穫面積は、116万へクタール(前年度比0.3%減)とほぼ横ばいで推移すると見込まれる(表4)。サトウキビ生産量は、年初に広西チワン族自治区で続いた乾燥が生育の懸念材料となっていたものの、8月から9月にかけて降雨に恵まれたことから、7008万トン(同11.9%増)とかなり大きく増加すると見込まれる。一方で、てん菜の収穫面積は、新疆ウイグル自治区で寒さによるてん菜の部分的な不作が生じたことなどから、18万ヘクタール(同9.5%減)とかなりの程度減少すると見込まれる。てん菜生産量は、収穫面積の減少に加え、内モンゴル自治区で乾燥した天候が懸念されたものの、895万トン(同2.3%増)とわずかに増加すると見込まれる。
砂糖生産量は、サトウキビの生産回復を背景に、1053万トン(同8.6%増)とかなりの程度増加し、21/22年度の水準にまで回復すると見込まれる。輸入量は、昨年度世界的な砂糖価格の上昇などを背景に在庫の取り崩しが進んだことから、それを補うための輸入が増え、661万トン(同11.6%増)と昨年度の水準を上回る輸入が見込まれる。
2023/24年度の砂糖生産量は回復し、輸出量は増産などを背景に大幅に増加する見込み
2023/24年度(10月〜翌9月)のてん菜の収穫面積は、EU最大のてん菜主産地であるフランスで減少が見込まれるものの、トウモロコシや小麦と比較して、てん菜の収益性が高いことなどから、ポーランドやスペインで作付面積の増加が見込まれ、144万ヘクタール(前年度比3.2%増)とやや増加すると見込まれる(表5)。てん菜生産量は、この数カ月間北西ヨーロッパ地域の大部分で良好な降雨と日照に恵まれ、作柄の見通しが改善されたことから、1億394万トン(同5.1%増)とやや増加すると見込まれる。
砂糖生産量は、
萎黄病
(注)の影響が限定的との見通しやバイオエタノールに利用するてん菜の減少などから、1663万トン(同6.2%増)とかなりの程度増加すると見込まれる。輸入量は、てん菜の増産が期待されることから、262万トン(同19.1%減)と大幅な減少が見込まれる。また、輸出量は、215万トン(同2.1倍)と18/19年度の水準まで回復が見込まれる。
(注)アブラムシによって媒介される植物ウイルス病。
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