砂糖の価格調整業務実績について(令和4砂糖年度)
最終更新日:2024年3月11日
砂糖の価格調整業務実績について(令和4砂糖年度)
2024年3月
はじめに
当機構では「砂糖及びでん粉の価格調整に関する法律」に基づき、輸入糖、異性化糖および輸入加糖調製品の買入れ・売戻しにより調整金を徴収し、それらを財源として国内のサトウキビ生産者やてん菜糖・甘しゃ糖の製造事業者に交付金の交付などの支援を行うことで内外価格差を調整し、国内の砂糖の安定的な供給の確保を図っている。
本稿では、令和4砂糖年度(令和4年10月1日〜令和5年9月30日<以下「4SY」という>)における砂糖の価格調整業務実績などについて取りまとめたので、報告する。
1 砂糖の価格調整業務における収支
4SYの収入については、輸入糖は、令和5年5月8日から新型コロナウイルス感染症(COVID-19)について、感染症法上の位置付けが「5類感染症」に変更となったことに伴う人流増による経済活動の回復により輸入量は増加したものの、砂糖の国際相場の上昇および円安の進行により調整金単価が低下したことに伴い、前SYより73億円減の220億円となった(表1)。
一方、輸入加糖調製品については、前SYより11億円増の95億円の収入となったものの、国費も含む収入全体では前SYより66億円減の421億円となった。
支出については、てん菜糖は交付単価金が上昇したものの、甘しゃ糖の交付金単価の低下、てん菜の国庫納付金額が減少したことなどから、全体としては前SYより53億円減の541億円となった。
これらの結果、4SYの収支は、121億円の赤字(前SYは109億円の赤字)となり、前SYに引き続き、大幅な単年度赤字となるとともに、期末残高はマイナス566億円(3SY期末時点で445億円の赤字)と大変厳しい状況となった(図1)。
また、5SY(令和5年10月1日〜令和6年9月30日)においても、引き続き厳しい収支状況が続くことが見込まれており、期末残高の動向などについて注視が必要である。
2 調整金徴収業務
(1)4SYの指標価格など
4SYを含む直近3年間の指標価格などは表2の通り。
(2)砂糖の需要と供給
令和5年12月に農林水産省が公表した砂糖及び異性化糖の需給見通し(以下「需給見通し」という)によると、4SYの砂糖の需給(実績)は表3、表4の通り。
(3)国際相場などの動き
ニューヨーク粗糖先物相場の4SYの動きは、SY当初の令和4年10月中旬にはブラジルの砂糖増産の見通しから1ポンド当たり17.58米セントまで値を下げたものの、その後、ブラジルやインドの減産見通しを受け、一貫して上昇傾向が続き、令和5年4月28日には、26.99米セントと11年ぶりの高値を記録した。その後、ブラジルの増産見込みにより、6月下旬には22米セント台まで下落したものの、インドおよびタイの不作などを受け再び価格が上昇し、9月の月平均価格は26米セント台で4SYを終えた(図2)。
(4)粗糖、加糖調製品糖および異性化糖の平均輸入価格など
4SYにおける粗糖、加糖調製品糖および異性化糖の平均輸入価格は表5〜7の通り。特に、第4四半期は粗糖の国際相場が上昇し為替相場も円安傾向が続いたこともあり、粗糖の平均輸入価格はトン当たり10万円台まで上昇した。
(5)売買実績
ア 輸入糖
4SYの輸入糖の売買数量は前SY比10.8%増の109万8000トンとなった(表8)。人流増に伴う経済活動の回復による国内需要の増加により売買数量は増えたものの、粗糖の国際相場上昇および円安に伴う平均輸入価格の上昇により調整金収入が減少したことから、売買差額は前SY比25.0%減の219億7200万円と大幅に減少した。
イ 輸入加糖調製品
4SYの輸入加糖調製品の売買数量は前SY比13.9%減の36万トンとなった。
これは、粉乳調製品や加糖あんにおいて、原料と砂糖の分離調達の動きがみられたことから数量が減少した。しかしながら、円安傾向が続いたことからCIF価格(課税標準価額)が上昇したため、売買差額は大幅に増加し前SY比13.2%増の95億2600万円となった。
ウ 異性化糖
4SYの異性化糖の売買は、全期間を通じて異性化糖の平均供給価格(機構の買入価格)が異性化糖標準価格(機構の実質的な売戻価格)を上回ったことから、売買は行われなかった(表7)。
3 交付金交付業務など
(1)甘味資源作物および国内産糖の生産動向
ア てん菜・てん菜糖
4SYのてん菜は、作付面積の減少に加え、令和4年8月の降水量が平年よりもかなり多かったことなどにより収量および根中糖分の低下がみられた。その結果、てん菜の生産量は前SY比12.7%減の354万5000トン、産糖量も同12.2%減の56万2000トンとなった(表9)。
イ サトウキビ・甘しゃ糖
4SYの鹿児島県および沖縄県のサトウキビは、一部の島において台風被害、春先の長雨、梅雨明け後の干ばつなどの影響がみられた。その結果、両県を合わせた生産量は前SY比6.4%減の127万600トン、産糖量は同8.2%減の13万8600トンとなった(表10、表11)。
(2) 交付金の交付状況など
ア 甘味資源作物交付金(サトウキビのみ)
サトウキビの収穫期はおおむね12月から翌年5月ごろまでであり、製造事業者への売渡し数量に応じて生産者に交付金を交付している。4SYは、交付決定数量がサトウキビ生産量の減少を受け、前SY比5.0%減の120万6000トンとなり、交付決定金額は、同9.0%減の205億200万円となった(表12)。
イ 国内産糖交付金
(ア)てん菜糖の交付状況
てん菜糖製造事業者の販売は年間を通じて行われ、販売数量に応じて交付金を交付している。4SYは、交付決定数量が前SY比2.6%減の62万5000トンとなった。また、交付決定金額は、交付金単価の上昇を受けて同7.4%増の151億8300万円となった(表13)。
(イ)甘しゃ糖の交付状況
甘しゃ糖製造事業者が製造した粗糖は、製糖後それほど期間を置かずに精製糖メーカーに販売されるため、操業時期に対応して交付金を交付している。
4SYは、サトウキビの生産量が減少したことから産糖量も減少し、交付決定数量は前SY比9.2%減の13万8000トンとなった。また、交付決定金額は、交付金単価の低下を受けて同17.8%減の78億3700万円となった(表14)。
(3)国庫納付金納付業務(てん菜)
てん菜生産者への農業の担い手に対する経営安定のための交付金の交付に要する経費の財源に充てるため、農林水産大臣からの通知に従い、4SY(発生ベース)分として、調整金収入などから105億9300万円を国庫に納付した。
4SYは前SYと比較し調整金収入が減少したため、国庫への納付金額も減少した(表15)。
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農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
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