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サトウキビ連続多回株出し栽培の生産性向上に必要な品種特性と既存の主要品種・有望系統の特性およびその利用可能性−後編−

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最終更新日:2024年4月10日

サトウキビ連続多回株出し栽培の生産性向上に必要な品種特性と
既存の主要品種・有望系統の特性およびその利用可能性−後編−

2024年4月

国立研究開発法人国際農林水産業研究センター 熱帯・島嶼研究拠点
主任研究員 寺島 義文
サトウキビコンサルタント 杉本 明

【要約】

 南西諸島のサトウキビ産業の持続的発展には、省力的な機械化一貫体系下における株出し栽培の安定多収生産の実現が不可欠である。前編(『砂糖類・でん粉情報』2024年3月号参照)では、多回株出し多収生産の実現に必要な品種特性と利用可能な主要既存品種・有望系統の特性を述べた。後編となる本稿では、南西諸島各地域における株出し収量向上に向けた主要な既存品種・有望系統の利用可能性について解説する。

5 南西諸島各地の株出し収量向上に向けた既存品種・有望系統の利用可能性

(1)熊毛地域

ア.サトウキビ生産の特徴と課題
 
熊毛地域では過去10年で農家戸数が4割、収穫面積が2割減少している。大規模化や高齢化に伴う労力不足、作業競合による肥培管理の遅れ、株出し栽培でのマルチ処理の省略などにより、主力品種「NiF8」の単収が低下しており、省力・低コストを伴う株出し栽培の収量向上や継続回数増加が必要である。その実現には、ビレットプランタ、乗用小型トラクタ、ハーベスタの利用を前提とした省力的な機械化一貫体系下での多回株出し体系の構築、作業分散に向けた夏・秋植え+株出し体系の導入や収穫期間の前進化による収穫作業と春植えや株出し管理との競合の緩和が必要である。

イ.利用可能な株出し収量が優れる品種および有望系統
 
種子島では、産業を支えてきた「NiF8」に代わり、この数年、低温下での発芽・萌芽(ほう が)や初期生育が優れ、無マルチでの株出し栽培が可能な「NiTn18」の栽培面積が増加した(図1)。現在は、「はるのおうぎ」の栽培面積が4割以上と急速に広がっている(写真1)。「はるのおうぎ」は、低温下での萌芽が優れるため、株出し栽培でのマルチ被覆の省略が可能であり、初期伸長が速く、省力的な肥培管理にも適応できる。さらに、茎長が短く、耐倒伏性が優れるため、倒伏が栽培上の課題である「NiTn18」と比べて、機械化への適応性を備える。また、同品種は、株上がりしにくい特性を備えていることを観察しているが、この特性は、同地域で将来ハーベスタの高出力化を行う場合にも重要な特性になる。さらに、ビレットプランタでの植え付けでも、採苗効率が高く、発芽が優れるなどの利点を備えるため、今後の種子島の省力的な機械化一貫体系の実現に向けて、重要な品種になると考えられる。一方で、「はるのおうぎ」は黒穂病に加えさび病の抵抗性が劣るため、栽培面積の増加に伴う病気の拡大が懸念される。さび病は、罹病性品種の継続した栽培や土壌中の窒素分が高い圃場(ほ じょう)、風の通りが悪く湿度が高くなりやすい圃場などで発生が増加する。さび病が多発する圃場で「はるのおうぎ」を栽培した場合には、細茎化により収量が低くなることから、「NiF8」や「Ni22」「NiTn18」を組み合わせて、地域全体として病害の影響をコントロールしていくことが重要となる。また、「はるのおうぎ」は、脱葉性が悪く、高繊維分であるためバガス発生量が大幅に増加することや、製糖時の清澄化工程での沈殿が落ちにくい可能性があるなどの製糖プロセスへの影響も指摘されている。地域のサトウキビ生産の維持にとって、「はるのおうぎ」の利用は不可避であることから、上記製糖プロセスへの影響も克服し、バガスの有効利用も含めた新しいサトウキビ産業の姿が種子島で確立されることが期待される。
 



 

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(ア)既存品種の収量が高い圃場(土壌肥沃(ひ よく)度が高い、マルチ被覆や適期肥培管理が可能)
 
このような圃場では、「はるのおうぎ」とともに、「NiF8」や「Ni22」を組み合わせた利用が良い(図2)。「はるのおうぎ」の糖度が低い圃場では、「Ni22」などを利用した高糖度での多収生産を目指すことが、地域全体の品質向上に重要である。また、「はるのおうぎ」にさび病が多発する圃場では、さび病に抵抗性を備える「NiF8」「Ni22」や、現在育成中の有望系統「KR12-316」の利用を検討するのが良い。作業分散に向けて夏・秋植え+株出し体系を導入する場合は、耐倒伏性に優れる「はるのおうぎ」を利用することで、夏・秋植えで懸念される倒伏の悪影響の軽減が期待される。一方、夏・秋植えでは、春植えよりさび病の被害が大きくなる危険があるため、さび病が多発する圃場では栽培を控えるなどの注意が必要である。

(イ)既存品種の収量が低い圃場(土壌肥沃度が低い、マルチ被覆や適期肥培管理が困難)
 
このような圃場では、「はるのおうぎ」と「NiTn18」や「Ni22」を組み合わせて利用するのが良い。適期の春植えを実施するとともに、無霜圃場では、単収向上と作業分散に向けて夏・秋植え+株出し体系の導入も検討すべきである。「はるのおうぎ」が細くなる、短くなるなどで単位収量が低い圃場では「NiTn18」の利用を、「はるのおうぎ」の糖度が低い圃場やさび病が多発する圃場では、「Ni22」や「NiTn18」、現在育成中の有望系統「KR12-316」の利用を検討するのが良いであろう。また、生産力が高い圃場と同様に、「はるのおうぎ」の夏・秋植えでは、さび病の発生に注意が必要である。
 
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(2)奄美大島地域

ア.サトウキビ生産の特徴と課題
 
この地域では、労働力不足などによる不十分な肥培管理により、収量が低い株出し圃場が増加していることが課題であり、ビレットプランタ、乗用小型トラクタやハーベスタの利用を前提とした省力的な機械化一貫体系の構築が必須である。その実現には、春植え+株出し体系から夏植え+株出し体系への一部転換や収穫期間の前進化による収穫作業と春植えや株出し管理作業との競合の緩和が求められる。

イ.利用可能な株出し収量が優れる品種および有望系統
 
奄美大島地域の普及品種(令和3/4年期)は、栽培面積の大きい順に、「Ni27」「Ni23」「NiF8」「Ni22」である(図3)。近年「NiF8」が減少し、「Ni27」の栽培面積が急激に増加している。株出し収量が優れる品種としては「Ni23」「Ni22」「Ni17」が利用可能である。また、多回株出しに向けた品種として、「はるのおうぎ」が同地域の奨励品種に採用されている。さらに、有望系統「RK10-29」についても、品種化に向けた評価試験において、多回株出し栽培での収量向上が期待できる結果が得られており、将来的な利用が期待される。株出し栽培での収量向上に向けて、圃場条件や労力・資材投入の多少、作型(春植え+株出し、夏植え+株出し)、収穫時期などに合わせてこれら品種を組み合わせて利用することが必要となる。茎数型である「はるのおうぎ」や「RK10-29」は、同地域における、ビレットプランタの利用を前提とした省力的な機械化一貫体系の構築での利用が期待される。




 


(ア)既存品種の収量が高い圃場(土壌肥沃度が高い、適期の肥培管理や潅水(かん すい)が実施可能)
 
このような圃場では、現在主流である春植え+株出し体系を中心に収量向上を目指すのが良いが、「Ni27」は、12月〜翌1月の低温期に収穫した場合の萌芽が不安定であることに注意が必要である。台風の影響を受けにくい圃場では、12月〜翌1月収穫の場合は、早期高糖性の「Ni22」や「KN00-114」「はるのおうぎ」が、2月以降の収穫では、株出し収量が優れる「Ni23」(写真2)を主力として、「Ni27」「Ni22」「はるのおうぎ」「RK10-29」を組み合わせて利用するのがよい。台風の影響を受けやすい圃場では、12月〜翌1月収穫では「Ni22」や「はるのおうぎ」が、2月以降の収穫では、「Ni22」「はるのおうぎ」「RK10-29」が利用できる。特に「Ni27」「Ni23」「Ni22」が伸び過ぎるような圃場では、茎数型の「はるのおうぎ」「RK10-29」や、栽培面積は減少しているが直立型の「Ni17」の利用が省力的な機械化体系下での多回株出し栽培に向けて効果的であろう。




 

 

(イ)既存品種の収量が低い圃場(土壌肥沃度が低い、適期の肥培管理や潅水が実施困難)
 
このような圃場では、春植え+株出し体系に加え、夏植え+株出し体系への転換も視野に入れた対応が必要である(図4)。台風の影響を受けにくい圃場では、「Ni23」「Ni22」「RK10-29」が利用できる。干ばつの被害を受けやすい圃場では「Ni23」の利用が重要であり、「RK10-29」についても今後利用を検討する価値があろう。適期の肥培管理が労力的に難しい圃場では、茎数型で萌芽が旺盛な「はるのおうぎ」や「RK10-29」と、株揃えの省略やスクープを利用する省力的な肥培管理技術を組み合わせた栽培体系の確立と導入が望まれる。「はるのおうぎ」は、夏植えではさび病の被害拡大が懸念されるため、春植え+株出し体系での利用が推奨されるが、干ばつへの耐性が高くないこと、収量性が低い圃場では株出し栽培で茎径が細くなる危険性があることなどに注意が必要である。
 

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(3)沖縄本島北部地域

ア.サトウキビ生産の特徴と課題
 
この地域は小規模農家が多く、約20年で栽培面積が4割減少した。春植え+株出し体系が主流であるが、潅水ができない圃場では発芽が不安定になりやすいこと、肥培管理の遅れや省略により収量が低い株出し圃場が増加していることが課題である。同地域においても、ビレットプランタを利用した省力的な植え付けと安定した発芽の実現、乗用小型トラクタやハーベスタを利用した省力的な機械化一貫栽培体系の構築が課題である。春植え+株出し体系から夏植え+株出し体系への一部転換も重要事項である。

イ.利用可能な株出し収量が優れる品種および有望系統
 
この地域の普及品種(令和3/4年期)は、栽培面積の大きい順に、「Ni29」「Ni27」「Ni28」「NiF8」「Ni22」「NiH25」である(図5)。この数年、早期高糖性で茎の直立性や耐倒伏性に優れる「Ni29」の栽培面積が増加している。株出し収量が優れる品種としては「Ni28」「Ni22」「NiH25」が利用されているが、「RK97-14」や有望系統「RK10-29」「RK10-33」の利用も期待される。「Ni27」は12月〜翌1月の低温期収穫後の萌芽性がやや劣ることから、圃場によっては、早期高糖性で低温萌芽性も優れる「はるのおうぎ」の利用も有効であろう。
 




(ア)既存品種の収量が高い圃場(土壌肥沃度が高い、適期の肥培管理や潅水が実施可能)
 
このような圃場では、春植え+株出し体系を中心に収量向上を目指すのが良い。12月〜翌1月に収穫する場合は「Ni29」や「Ni22」「Ni28」が、2月以降の収穫では、「Ni29」「Ni27」を主力として、「Ni28」「Ni22」「RK10-29」が利用できる。「Ni29」や「Ni27」は台風被害に注意が必要である。特に、水田転換畑で土壌水分が多いことなどにより「Ni29」や「Ni27」「NiF8」が伸び過ぎるような圃場では、早期収穫では「はるのおうぎ」、晩期収穫では「RK10-29」など、茎数型品種の利用が省力的な機械化体系下での多回株出し栽培に向けて有効であろう。また、春植えの植え付け時期が遅くなる場合には、茎伸長が良好な「NiH25」や「RK97-14」「RK10-33」などの利用も有効である。


(イ)既存品種の収量が低い圃場(土壌肥沃度が低い、適期の肥培管理や潅水が実施困難)
 
このような圃場では、既存の春植え+株出し体系に加え、夏植え+株出し体系への転換も視野に入れた対応が必要である(図6)。12月〜翌1月収穫では「Ni28」や「Ni29」(台風の影響を受けにくい圃場)が、2月以降の収穫では、「NiH25」「RK97-14」「RK10-29」「RK10-33」の利用が期待される。特に、山地畑にある低収量地域や干ばつの被害などにより茎の伸長性が劣るために収量が低い圃場では、「NiH25」「RK97-14」や「RK10-33」の夏植え+株出し体系を導入することで栽培期間全体での収量改善が期待される。株出し管理などの適期の肥培管理が労力的に難しく、萌芽茎の確保自体が難しい圃場では、茎数型で萌芽が旺盛な「RK10-29」や「はるのおうぎ」、茎伸長が旺盛で萌芽も優れる「RK10-33」を利用し、省力的な肥培管理技術と組み合わせて栽培することが必要であろう。

 同地域では、発芽が不安定となる場合が多いが、多回株出し栽培の実現には、まずは新植栽培での良好な発芽と生育が大前提となる。今後はビレットプランタでの植え付け体系が主流になるが、植え付け時の発芽が不安定になりやすい圃場では、効率的な苗生産が可能で発芽性に優れる「RK10-29」や「はるのおうぎ」などを利用し、通常より苗投入量を多くして、発芽数、株数を確保するなどの対策も必要であろう。
 

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(4)沖縄本島中南部地域

ア.サトウキビ生産の特徴と課題
 
この地域は小規模農家が多く、近年の栽培面積減少が顕著であること、傾斜地にある圃場や面積が小さい圃場も多く、手植えや手刈り収穫が他の地域より多いことが特徴である。主流である春植え+複数回株出し体系の収量向上とビレットプランタなどを用いた省力的機械化体系の導入が課題である。

イ.利用可能な株出し収量が優れる品種および有望系統
 
沖縄本島中南部地域の普及品種(令和3/4年期)は、栽培面積の大きい順に、「Ni27」「Ni21」「NiF8」「Ni28」「RK97-14」「Ni29」「NiH25」であり、この数年は、手刈り収穫にも適する「Ni27」の栽培面積が増加している(図7)。株出し収量が優れる品種としては「Ni21」「Ni28」「RK97-14」「NiH25」が利用されているが、早期高糖性で風折抵抗性も備える「Ni22」や「Ni26」、手刈り収穫に向き、株出し性も優れる新品種候補の「RK10-1007」や、ハーベスタ収穫が行われている圃場では、有望系統である「RK10-29」「RK10-33」の利用も期待される。機械化が可能な圃場では、他の地域と同様にハーベスタ収穫やビレットプランタ植え付けが増加すると考えられる。そのような体系下では、「RK10-29」を利用し、苗の多投入により安定した発芽確保と多回株出しでの収量向上は重要な技術になると期待される。
 


 


(ア)既存品種の収量が高い圃場(土壌肥沃度が高い、適期の肥培管理や潅水が実施可能)
 
このような圃場では、春植え+株出し体系を中心にハーベスタ収穫の有無で品種を使い分けることが必要である。12月〜翌1月の手刈り収穫では「Ni29」(台風被害の少ない圃場)や「Ni26」、ハーベスタ収穫では「Ni28」とともに「Ni22」や「Ni26」も利用できるのではないだろうか(図8)。2月以降の収穫では、手刈り収穫では「Ni27」(台風被害の少ない圃場)、「Ni21」「NiF8」とともに新品種候補の「RK10-1007」が、ハーベスタ収穫では、「Ni21」「Ni28」や「RK10-29」が利用できる。特に「Ni27」「Ni21」「NiF8」が伸びすぎるような圃場では、ハーベスタ収穫を前提として、茎数型の「RK10-29」や「はるのおうぎ」の利用が省力的な機械化体系下での多回株出し栽培に向けて効果的であろう。春植えの植え付け時期が遅くなる場合には、「NiH25」や「RK97-14」、「RK10-33」などの利用も検討すべきである。

(イ)既存品種の収量が低い圃場(土壌肥沃度が低い、適期の肥培管理や潅水が実施困難)
 
このような圃場の春植えでは早い植え付けが重要であり、特に遅い春植えとなる場合には、夏植え+株出し体系への転換が有効である。12月〜翌1月収穫の圃場では、手刈り収穫では「Ni29」(台風被害の少ない圃場)や「Ni26」、ハーベスタ収穫では「Ni28」や「Ni26」の利用が考えられる。翌2月以降の手刈り収穫では「NiH25」「RK97-14」、ハーベスタ収穫では「NiH25」「RK97-14」「RK10-29」「RK10-33」の利用が期待される。特に土壌条件や干ばつの被害などにより茎の伸長性が劣るために収量が低い圃場では、「NiH25」「RK97-14」や「RK10-33」の夏植え+株出し体系を導入することで栽培期間全体での生産改善が期待される。「NiH25」「RK97-14」は茎重型の品種であるため、株出し収量の向上に向けて、新植栽培での良好な発芽の確保が重要となる。適期の肥培管理が労力的に難しく、新植、株出しともに茎数の確保自体が難しい圃場では、ハーベスタ収穫を前提に、茎数型で萌芽が旺盛な「RK10-29」、茎伸長が旺盛で萌芽の優れる「RK10-33」を用いた省力的な機械化栽培技術が有用であろう。
 

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(5)大東島地域

ア.サトウキビ生産の特徴と課題
 
同地域は、経営規模が比較的大きく、ビレットプランタなどを利用した機械化一貫栽培による春植え・株出し体系が他地域に先駆けて実施されている(写真3)。厳しい干ばつ、痩せた土壌などの影響から沖縄県の中でも株出し栽培の単収が低い地域であったが、ここ数年は高単収が続いており、今後に向けて、機械化一貫栽培体系下での安定的な多収生産と株出し回数増加を実現することが必要となっている。
 




イ.利用可能な株出し収量が優れる品種および有望系統
 
大東島地域では、長年にわたり台湾から導入された「F161」が主要品種となっていたが、関係者の努力により、日本で育成された品種への置き換わりが進んでいる(図9)。現在は、「Ni27」と「RK97-14」が収穫面積のそれぞれ20%程度、その他品種では、割合の高い順に「Ni28」「Ni26」「Ni22」「Ni29」が作付けされている。同地域では、茎重型の「Ni27」や「RK97-14」を利用したビレットプランタ植え付け体系が実現しているが、今後は、株出し収量の向上に向けて、茎数型で苗生産効率が良く、株出し性に優れる「RK10-29」や「はるのおうぎ」の利用も想定される。また、干ばつ被害が頻発する圃場では茎伸長が旺盛な「RK10-33」も利用できる可能性があるのではないだろうか。同地域では、中型だけでなく大型ハーベスタも利用されているため、多回株出しで多収を維持するためには、株の引き抜きや踏圧による株数や茎数の減少をいかに抑制するかが重要となる。早期高糖性を備える「Ni28」「Ni26」「Ni22」「Ni29」などを利用した収穫期間の前進化は、春植えの植え付け時期の早期化による春植え収量の向上とともに、株の引き抜きや踏圧の影響を受けにくい健全な株を仕立てることにもつながるため、多回株出し多収生産に向けた重要な検討事項になる。




 


(ア)既存品種の収量が高い圃場(土壌肥沃度が高い、適期の肥培管理や潅水が実施可能)
 
現状の春植え+株出し栽培体系が主流となる。12月〜翌1月の低温期収穫では、「Ni27」や「RK97-14」の株出し萌芽が劣り、多回株出しでの茎数の確保が課題となることから、早期高糖性で株出し性も優れる「Ni22」「Ni26」「Ni28」や、茎数型の「はるのおうぎ」の利用が良いと考える。台風被害が少ない圃場では、「Ni29」や「KN00-114」も利用できる(図10)。2月以降の収穫では、「Ni27」(台風被害が少ない圃場)や「RK97-14」を中心に利用し、茎数を確保して株出し回数の増加を目指す圃場では、「Ni28」や「RK10-29」の利用も良いであろう。

(イ)既存品種の収量が低い圃場(土壌肥沃度が低い、適期の肥培管理や潅水が実施困難)
 
このような圃場では、早期の春植え+株出し栽培体系を基本として、春植えの植え付けが遅くなる場合は、夏植え+株出し体系の導入も検討するべきである。株出し栽培での茎長の確保を目指す場合は、「RK97-14」や「RK10-33」などが、茎数の安定確保を目指す場合は「Ni28」とともに、「RK10-29」の利用も有効であると考える。
 

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(6)宮古島地域

ア.サトウキビ生産の特徴と課題
 
この地域は「Ni27」が60%程度を占めており、台風による折損、黒穂病やさび病による減収リスクの増大が重要課題であり、干ばつ被害の軽減、夏植え+株出し体系下での株出し継続回数と単収向上、夏植えの労働力確保が課題である。その上で、ビレットプランタ、乗用小型トラクタ、ハーベスタを利用した省力的な機械化一貫体系の構築が求められる。

イ.利用可能な株出し収量が優れる品種および有望系統
 
宮古島地域では「Ni27」が収穫面積の60%以上を占めている(図11)。その他は「Ni21」「NiH25」「RK97-14」が各5%程度である。株出し収量が優れる品種としては上記の品種以外にも、「Ni22」「Ni28」などが利用されている。「Ni27」は、12月〜翌1月の低温期収穫での萌芽が不安定となることから、ビレットプランタやハーベスタ収穫を前提とした、省力的な機械化栽培体系下での多回株出し栽培を考えた場合には、早期高糖性で株出し性にも優れる品種と組み合わせることが重要である。同地域では、茎が太めの茎重型品種が好んで栽培される傾向にあるが、今後は、ビレットプランタ植え付けやハーベスタ収穫を前提として、茎数型の有望系統である「RK10-29」の利用も重要になるであろう。また、早期高糖性で低温下での萌芽が優れる「はるのおうぎ」や萌芽と茎伸長に優れる「RK10-33」が利用できる圃場もあるのではないかと考える。
 




(ア)既存品種の収量が高い圃場(土壌肥沃度が高い、適期の肥培管理や潅水が実施可能)
 
「Ni27」の収量が高い条件の圃場では、労力分散に向けて夏植え+株出し体系と早期春植え+株出し体系を組み合わせて収量向上を目指すのが良い。12月〜翌1月収穫では、「Ni27」は株出し萌芽が不安定であることから、早期高糖品種である「Ni29」(台風被害が少ない圃場)や「Ni22」「Ni28」が、2月以降の収穫には、夏植え適期では「Ni27」(台風被害が少ない圃場)や「Ni21」「Ni22」「Ni28」が、遅い夏植えや早期春植えでは、茎伸長が旺盛な「NiH25」や「RK97-14」「RK10-33」、発芽や初期生育が早い「Ni22」が適するのではないだろうか(図12)。春植え+株出し体系での栽培を行う場合は、台風や干ばつ被害の軽減に向けた早期の植え付けが重要であり、遅い春植えより適期の夏植えを選択する方が、被害の軽減に効果があると考えられる。また、ハーベスタで収穫する早期収穫圃場において、萌芽茎の確保が課題となる場合は、茎数型の早期高糖品種「はるのおうぎ」と、糖度上昇が遅い「RK10-29」とを使い分けることで多回株出しでの収量改善が行えると考える。

(イ)既存品種の収量が低い圃場(土壌肥沃度が低い、適期の肥培管理や潅水が実施困難)
 
「Ni27」の株出し栽培での収量が低い条件の圃場では、株出し収量が優れる品種を利用した夏植え+株出し体系での収量向上が重要である。12月〜翌1月収穫では「Ni28」や「Ni29」(台風被害が少ない圃場)とともに、茎数が少ないために収量が低い圃場では、さび病に注意しつつ「はるのおうぎ」の利用も検討に値する。茎の伸長が劣る圃場では、「RK97-14」や「RK10-33」も利用できよう。2月以降の収穫では、干ばつ被害を受けやすく茎伸長の停滞が課題の圃場では、「NiH25」や「RK97-14」が、株出し管理などの適期の肥培管理が労力的に難しく、萌芽茎の確保自体が難しい圃場では、茎数型の「Ni28」「RK10-29」の利用が期待される。

 同地域においても、多回株出しでの収量向上のためには、新植栽培での良好な発芽と生育が大前提となる。今後は、ビレットプランタの利用、乗用小型トラクタ、ケーンハーベスタを利用した省力的な機械化一貫体系が主流となると考えられることから、苗生産効率が高く発芽性が優れ、機械化適性も優れる「RK10-29」などを利用して、通常よりも植え付け時の苗投入量を多くして、発芽・株立ちをしっかりと確保し、省力的管理による多回株出しを実現する体系の構築が求められる。
 

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(7)石垣島地域

ア.サトウキビ生産の特徴と課題
 
この地域は、夏植え+株出し体系や春植え+株出し体系下での多回株出しと単収向上、冬季の降雨の影響による製糖終了の遅延とそれを回避するための収穫の前進化が中心的な課題である。そのために求められるのが、ビレットプランタや乗用小型トラクタ、ハーベスタを利用した省力的な機械化一貫体系の構築である。

イ.利用可能な株出し収量が優れる品種および有望系統
 
石垣島地域では、「Ni27」が収穫面積の50%程度を占めており、その他品種では割合の高い順に「Ni22」「NiH25」「RK97-14」「Ni15」「NiF8」「Ni21」が作付けされている(図13)。株出し収量が優れる品種としては「Ni21」「Ni22」「NiH25」「RK97-14」などが利用されている。同地域においても、将来的なビレットプランタ植え付けやハーベスタ収穫を前提とした省力的な機械化栽培体系下での多回株出し栽培を考えた場合には、「Ni27」とともに、他の株出し性が優れる品種との組み合わせが必要であり、特に、茎数型の有望系統である「RK10-29」の利用が重要になると思われる。また、早期高糖性で低温下での萌芽が優れる「はるのおうぎ」や、萌芽と茎伸長に優れる「RK10-33」についても利用できる圃場があるのではないだろうか。「はるのおうぎ」は繊維含率が高く硬いため、イノシシ被害が多発する地域での利用も検討できる。
 




(ア)既存品種の収量が高い圃場(土壌肥沃度が高い、適期の肥培管理や潅水が実施可能)
 
「Ni27」の収量が高い条件の圃場では、夏植え+株出し体系と早期の春植え+株出し体系を組み合わせて収量向上を目指すのが良い。「Ni27」を含む茎重型品種は、低温が厳しい時期の収穫では株出し萌芽が不安定になりやすく、茎数の確保が課題となることから、12月〜翌1月収穫では、早期高糖性で低温下の萌芽が優れる「Ni22」や「はるのおうぎ」の利用が期待される(図14)。2月以降の収穫では、適期の夏植えでは「Ni27」(台風被害が少ない圃場)や「Ni21」「Ni22」とともに、「RK10-29」も利用できる。遅い夏植えや早期の春植えでは、茎伸長が旺盛な「NiH25」や「RK97-14」、発芽や初期生育が早い「Ni22」が適するのではないだろうか。同地域においても、遅い春植えより、適期の夏植えを選択する方が、台風や干ばつ被害の軽減に効果的であろう。

(イ)既存品種の収量が低い圃場(土壌肥沃度が低い、適期の肥培管理や潅水が実施困難)
 
「Ni27」の収量が低い条件の圃場では、株出し収量が優れる品種を利用した夏植え+株出し体系の導入が重要課題である。12月〜翌1月収穫では、萌芽茎の安定確保を目指す場合は「Ni22」や「はるのおうぎ」が、また、茎長の改善が必要である場合は、「NiF8」並みの早期高糖性を備える「RK10-33」も利用可能である。2月以降の収穫では、干ばつ被害などにより茎伸長が課題となる圃場では、「Ni21」や「NiH25」「RK97-14」「RK10-33」が有効で、株出し管理などの適期の肥培管理が労力的に難しく、茎数の確保自体が難しい圃場では、茎数型の「RK10-29」の利用が期待される。

 同地域においても、多回株出しでの収量向上には、新植栽培での良好な発芽と生育が大前提となることから、茎数型での株出し多収性を備える「RK10-29」などを利用した、ビレットプランタや乗用小型トラクタ、ハーベスタを利用した省力的な機械化一貫栽培体系下での多回株出し多収生産技術の開発が重要な課題である。
 

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おわりに

 本稿では、株出し特性が優れる既存品種や有望系統の特徴を説明するとともに、株出し栽培での収量向上に向けて、圃場条件や収穫時期、栽培体系などに合わせた品種の組み合わせについて提案した。今後に向けて、農家が実行可能な省力・低投入型の機械化一貫栽培技術開発と、その条件下でも多回株出しで多収となる更なる優良品種の開発を急ぐ必要がある。また、収穫期間の前進化による早期春植えを実現する早期高糖性と低温萌芽性を併せ持つ品種の開発も重要となる。栽培技術開発では、多回株出しの実現で重要となる「株上がり」の抑制に向けて、「深植え」を考慮したビレットプランタ植え付け体系の確立が重要であり、品種改良との相乗効果が期待される。農家の高齢化や大規模化が進む現在、これまでのような資源の多投入と適期肥培管理を前提にした栽培技術は実施困難になっている。さらに、みどりの食料システム戦略に示されているように、サトウキビ生産における環境負荷低減も不可避の課題となる。産業の維持・持続的発展に向けて、これまでの取り組みを理解・尊重しつつも、関係機関が産業や農家の将来あるべき姿を議論・共有し、多様な農家が利用可能な多様な品種や栽培技術のレシピをこれまでの常識にとらわれずに提案していくことが必要である。

共著者一覧
鹿児島県農業開発総合センター 徳之島支場 支場長 末川 修
沖縄県農林水産部農業研究センター 作物班 班長 内藤 孝
 

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