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食品メーカーにおける甘味料の利用形態〜令和5年度甘味料およびでん粉の仕入動向等調査の概要(2)〜

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最終更新日:2024年6月10日

食品メーカーにおける甘味料の利用形態
〜令和5年度甘味料およびでん粉の仕入動向等調査の概要(2)〜

2024年6月

調査情報部

【要約】

 令和5年度の甘味料の仕入量は総じて安定している一方で、仕入価格はすべての甘味料で「上昇」とする回答割合が過半となった。また、仕入量の増加に伴って仕入価格が下がる傾向がうかがえる。今後の仕入量の見込みについては、すべての品目で「横ばい」が8割を占め、需要が安定傾向にあると推察される。

はじめに

 食品の製造には砂糖や加糖調製品、異性化糖の他にも黒糖やブドウ糖、水あめ、ソルビトールなどさまざまな甘味料が用いられている。その用途は、チョコレート、キャンデー、グミなどの菓子類の他、加工食品、清涼飲料、乳製品、パン、調味料類など多岐にわたる。

 当機構では、実需者の甘味料に対するニーズを把握し、甘味料の需給動向の判断に資する基礎的な情報を収集するため、食品製造事業者を対象としたアンケート調査を毎年度実施している。

 本稿では、令和5年度を対象に実施した「甘味料およびでん粉の仕入動向等調査」のうち、黒糖、ブドウ糖、水あめおよびソルビトールの調査結果について報告する。なお、同調査のでん粉の調査結果については、2024年5月号にて報告しているのでご参照ください。

1 調査の方法

(1)調査期間
 
令和5年11月〜令和6年1月

(2)調査対象
 
甘味料を使用する食品製造事業者

(3)調査項目
 
ア 用途および使用する理由
 イ 仕入量および仕入価格の動向
 ウ 調達に対する評価

(4)調査対象期間
 
令和5年10月現在(ただし、年間を対象とした項目については令和4年10月から翌年9月までの1年間)の甘味料の用途、仕入状況などに関する事項

(5)調査方法
 
郵送またはメールによる調査票の発送および回収を実施

(6)回収状況
 
配布企業数   306社
 回収企業数   91社(表1)
 調査票回収率  29.7%
 




 

(7)集計結果についての留意事項
 
ア 図中の「n」は有効回答数を表す。
 イ 端数処理の関係により、図中の内訳の合計が100%にならないことがある。
 ウ 図に示す調査結果は、凡例と同様の選択肢による回答である。
 エ 各甘味料の用途および使用する理由は表2の選択肢から回答を得た。
 オ 仕入量の増減、仕入価格の騰落に関する凡例の増減率、騰落率は表3の通り。
 






 


(8)調査企業の概要
 
今年度調査で回答のあった91社の業種別構成比は、図1の通り。「菓子、パン」が40社(44%)と最も多く、次いで「畜産・水産食料品」が19社(21%)、「清涼飲料、酒類」が10社(11%)となっている。
 

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2 集計結果

(1)黒糖

 ア 黒糖の用途
 
黒糖の用途を見ると、「菓子」が23件となっている。次いで「加工食品」「清涼飲料・酒類」「パン」が同4件で続いている(図2)。その他に分類される用途には、油脂加工品が挙げられた。

 


 

イ 黒糖を使用する理由
 
黒糖を使用する理由としては、「風味調整」が22件と最も多く、次いで「甘味調整(甘さを加える)」が18件、「付加価値の訴求」が12件となっている(図3)。その他の理由としては、「商品の主原料」が挙げられた。
 



ウ 黒糖の仕入量の動向
(ア)直近1年間の仕入量
 
令和5年度(令和4年10月から翌年9月、以下同じ)の仕入量を見ると、「1トン未満」が31%を占め、次いで「1トン以上5トン未満」が23%となっており(図4)、他の甘味料と比較して「1トン未満」の割合が多くなっている。また、1000トン以上と回答があったのは製パン事業者からであった。
 

 


(イ)仕入量の動向
 
令和4年度と比較した5年度の仕入量の動向は、「横ばい」がおよそ5割で最多となっているものの、「大幅に増加」と「やや増加」を合わせると3割、「やや減少」と「大幅に減少」を合わせると2割程見られ、回答企業の半数には仕入量に変動が見られる(図5)。

 増加の要因は、「需要の増加により商品の出荷数量が増えたため」が大半となっている。この他には「1商品当たりの含有量を増やしたため」「新商品を開発したため」が挙げられている。一方、減少の要因としては「需要の減少により商品の出荷数量が減ったため」が挙げられた。

 また、今後の仕入量の見込みは、「横ばいの見込み」が80%で最多となっており、前年度調査では「横ばいの見込み」が5割半だったことから需要は安定すると見込まれている(図6)。







 

エ 黒糖の仕入価格の動向
(ア)直近の仕入価格
 
1キログラム当たりの仕入価格(令和5年10月時点)を見ると、「300円以上400円未満」が34%で最も多く、次いで「500円以上」が17%となっている。経年で見ると、「300円以上400円未満」の価格帯がやや増加している(図7)。




 


(イ)前年度と比較した仕入価格
 
令和4年度と比較した5年度の仕入価格の動向は、「やや上昇」が半数で最多となっている。前年度調査と比較すると「やや上昇」が2割程多くなり、前年度より一層上昇傾向にあることがうかがえる(図8)。価格上昇の要因としては、「仕入先の価格改定」が大半を占め、一部に「市場相場の変動によるもの」「為替の変動によるもの」が挙げられた。




 

(2) ブドウ糖

ア ブドウ糖の用途
 
ブドウ糖の用途を見ると、「菓子」が16件と最も多く、次いで「加工食品」が10件となっており、この2種類での使用が主となっている(図9)。その他に分類される用途には、水産練り製品、油脂加工品、即席麺などが挙げられた。

 


 

イ ブドウ糖を使用する理由
 
ブドウ糖を使用する理由としては、「甘味調整(甘さを加える)」が21件、「風味調整」が19件で、これら二つが主な理由となっている。この他「食感向上」が8件、「外観向上」「甘味調整(甘さを抑える)」が同7件となっている(図10)。その他の理由としては、「パン生地の発酵を促進するため」「水産練り製品の焼き色調整」「製品固形分調整」などが挙げられている。




ウ ブドウ糖の仕入量の動向
(ア)直近1年間の仕入量
 
令和5年度の仕入量を見ると、「100トン以上500トン未満」が24%で最も多く、次いで「1トン以上10トン未満」「10トン以上100トン未満」が同20%と続く(図11)。1000トン以上と回答があったのは、清涼飲料、乳製品、菓子・パン、漬物といった用途に使用している企業からであった。
 



(イ)仕入量の動向
 令和4年度と比較した5年度のブドウ糖の仕入量の動向は、「横ばい」が51%で最多となっているものの、「大幅に増加」は14%、「大幅に減少」は8%あり、仕入量に増減があることがうかがえる(図12)。増加の要因は、「需要の増加により商品の出荷数量が増えたため」が大半となっている。一方、減少の要因としては「需要の減少により商品の出荷数量が減ったため」が多く、この他には「在庫の調整をした」「商品の生産を中止したため」が挙げられた。
 
 今後の仕入量の見込みは、「横ばいの見込み」が82%で大半を占めている。前年度調査と比較すると「やや増加する見込み」が2割程減少し、代わりに「横ばい」が増加したとことから、需要が安定していることがうかがえる(図13)。







エ ブドウ糖の仕入価格の動向
(ア)直近の仕入価格
 
1キログラム当たりの仕入価格(令和5年10月時点)を見ると、「170円以上」が49%で半数程と最も多い。次いで「150円以上170円未満」が14%となっている。前年度調査と比較すると、「170円以上」の割合が2倍程となり、価格の上昇が顕著に見られる(図14)。




 


(イ)前年度と比較した仕入価格
 
令和4年度と比較した5年度の仕入価格の動向は、「やや上昇」が4割半で最多、「大幅に上昇」も2割で合わせると6割半が上昇となっている(図15)。前年度調査でも上昇とした回答が7割を占めており、価格の上昇が続いていることがうかがえる。価格上昇の要因としては、「仕入先の価格改定」「市場相場の変動によるもの」が挙げられた。
 


 


(ウ)仕入量別の仕入価格
 
仕入量別に仕入価格を見ると、仕入量が「1トン未満」では「200円以上250円未満」が43%と最も多く、「250円以上」の割合も3割と多かった(図16)。仕入量が「10トン以上100トン未満」では、「150円以上200円未満」が5割を占め、「250円以上」の回答はなかった。仕入量が「100トン以上500トン未満」になると、「100円以上150円未満」が33%、「100円未満」も8%見られ、仕入量の増加に伴って仕入価格が下がる傾向がうかがえる。
 

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(3)水あめ

ア 水あめの用途
 
水あめの用途を見ると、「菓子」が33件と最も多く、次いで「加工食品」が13件、「冷菓」が8件、「乳製品」が5件となっている(図17)。その他に分類される用途には、粉末茶、ホイップクリーム、水産練り製品などが挙げられた。

 


イ 水あめを使用する理由
 
水あめを使用する理由としては、「甘味調整(甘さを加える)」が32件、次いで「風味調整」が21件、「食感向上」が19件、「離水防止」が12件、「甘味調整(甘さを抑える)」が11件と続いている(図18)。その他の理由としては、「生地の安定」「物性安定」「保存性の向上」「水分活性低下」などが挙げられた。

 


 

ウ 水あめの仕入量の動向
(ア)直近1年間の仕入量
 
令和5年度の仕入量を見ると、「1トン以上25トン未満」が36%、次いで「100トン以上500トン未満」が19%と続く(図19)。1000トン以上との回答も多く、用途としては菓子や冷菓が中心であった。
 

 


(イ)仕入量の動向
 
令和4年度と比較した5年度の水あめの仕入量の動向は、「大幅に増加」と「やや増加」を合わせると32%、「やや減少」と「大幅に減少」を合わせると25%見られ、仕入量に変動があることがうかがえる(図20)。

 増加の要因は、「需要の増加により商品の出荷数量が増えたため」が大半となっている。この他には「新商品を開発したため」「製造時期のタイミングによって」が挙げられている。一方、減少の要因としては「需要の減少により商品の出荷数量が減ったため」「商品の生産を中止したため」「1商品当たりの含有量を減らしたため」が挙げられた。

 今後の仕入量の見込みは、「横ばい」が78%で最多となっているが、「やや増加」も13%程見られ、仕入量に増加が見込まれる企業も若干見受けられる(図21)。

 


 

エ 水あめの仕入価格の動向
(ア)直近の仕入価格
 
1キログラム当たりの仕入価格(令和5年10月時点)を見ると、「140円以上」が55%で最も多く、次いで「100円以上110円未満」が12%となっている(図22)。前年度調査と比較すると「140円以上」の割合が増加し、価格の上昇が見られる。




 


(イ)前年度と比較した仕入価格

 令和4年度と比較した5年度の仕入価格の動向は、「やや上昇」が49%で最多、「大幅に上昇」も17%で合わせると6割半が上昇と回答している(図23)。一方で、昨年度調査では見られなかった「やや下落」が12%見られ、「横ばい」が減少していることから、価格の変動がうかがえる。価格上昇の要因としては、「仕入先の価格改定によるもの」が大半で、一部に「市場相場の変動によるもの」が挙げられた。
 


 


(ウ)仕入量別の仕入価格
 
仕入量別に仕入価格を見ると、仕入量が「10トン未満」では「150円以上200円未満」と「200円以上250円未満」が同36%と最も多い一方で、仕入量が「100トン以上500トン未満」になると、「100円以上150円未満」が54%と最も多い価格帯となっている(図24)。また、仕入量が「1000トン以上」になると、「100円未満」も18%見られ、ブドウ糖と同様に仕入量の増加に伴って仕入価格が下がる傾向がうかがえる。
 

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(4)ソルビトール

ア ソルビトールの用途
 
ソルビトールの用途を見ると、「菓子」が14件と最も多く、次いで「加工食品」が10件となっており、この2種類での使用が主となっている(図25)。その他に分類される用途には、水産練り製品、即席麺などが挙げられた。




イ ソルビトールを使用する理由
 
ソルビトールを使用する理由としては、「甘味調整(甘さを加える)」が13件と最も多く、次いで「風味調整」が10件、「食感向上」が8件、「離水防止」が6件と続いている(図26)。その他の理由としては、「保湿」「品質が安定しているため」などが挙げられた。




ウ ソルビトールの仕入量の動向
(ア)直近1年間の仕入量
 
令和5年度の仕入量を見ると、「1トン以上5トン未満」が3割半で最も多い。次いで「5トン以上20トン未満」「100トン以上」がそれぞれ1割半、「1トン未満」が1割と続く(図27)。他の甘味料には見られた1000トン以上といった大口の需要はみられなかった。
 


 


(イ)仕入量の動向
 
令和4年度と比較した5年度のソルビトールの仕入量の動向は、「横ばい」が48%で最多となっているものの、「増加」は26%、「減少」は22%見られ、仕入量に増減があることがうかがえる(図28)。増加の要因は、「需要の増加により商品の出荷数量が増えたため」が大半を占めている。この他には「新商品を開発したため」が挙げられている。一方、減少の要因としては「需要の減少により商品の出荷数量が減ったため」が大半を占め、この他には「1商品当たりの含有量を減らしたため」が挙げられた。

 今後の仕入量の見込みは、「横ばいの見込み」が81%で最多となっている(図29)。次いで「やや増加する見込み」が13%見られる。前年調査と比較して「横ばいの見込み」が2割程増加しており、需要が安定すると見込まれる。




 

エ ソルビトールの仕入価格の動向
(ア)直近の仕入価格
 
1キログラム当たりの仕入価格(令和5年10月時点)を見ると、「200円以上」が45%、「150円以上200円未満」が29%と二つの価格帯のみとなっている(図30)。経年で見ると年々価格の上昇が見られる。特に前年度調査からの変動が大きく、150円未満での仕入れが難しくなったことがうかがえる。
 



 

イ)前年度と比較した仕入価格
 
令和4年度と比べた5年度の仕入価格の動向は、「やや上昇」が5割程で最多、「大幅に上昇」と合わせると6割程が上昇と回答している(図31)。価格上昇の要因としては、「仕入先の価格改定」が大半を占め、一部に「市場相場の変動によるもの」が挙げられている。
 

5

(5)調達面の評価

 各甘味料に対する調達面の評価を「満足」「やや満足」「普通」「やや不満」「不満」の5段階評価で尋ねた。黒糖、ブドウ糖、水あめは、「満足」「やや満足」を合わせると5割となっている(図32)。

 個別に見ると黒糖は、前年度調査から満足度は1割程減少し、その分「普通」が増加している。ブドウ糖は、やや満足度が低下しており、不満の理由として「原料供給が少なく必要量の入手が困難」とする回答が見られた。水あめも満足度は1割程低下しており、不満の要因として「価格の高騰」が挙げられた。ソルビトールは、「満足」と「やや満足」を合わせても42%と満足度はやや低い。ただし、半数以上の55%が「普通」となっており、「やや不満」は3%に過ぎない。なお、不満の理由には「リードタイムが長すぎる」が挙げられている。
 
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(6)その他

 砂糖の価格が下落した場合に現在使用している甘味料を砂糖に切り替える可能性があるか聞いたところ、「可能性なし」が大半を占めたが、ブドウ糖と水あめでそれぞれ一件、可能性ありとの回答があった。「可能性あり」の場合、砂糖が何割下がれば切り替えるか尋ねたところ、「2割」「6.5割」との回答であった。このことから、各甘味料の使用理由は甘味調整やコスト面の他にも、甘味料の特性を踏まえた商品設計がなされていることがうかがえる(図33)。
 
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おわりに

 今回の調査では、仕入量の実績については、おおむね横ばいであったものの、需要の増加・減少も一定数見られた。また今後の見込みについては、すべての甘味料で「横ばい」が8割を占め、コロナによる行動制限が解除され、経済活動の回復などに伴う需要が一服し、総じて安定していると言える。

 一方で仕入価格については、「上昇」とする回答割合がすべての甘味料で過半となった。前年度調査でも「上昇」とした回答が多かったことから、昨年に続き物価高騰や円安による原材料価格の上昇の影響が、甘味料の仕入価格の上昇として表れていると推察できる。

 先月号に掲載した天然でん粉に係る同調査でも、原料作物の生産量や相場の変動による仕入価格の上昇傾向がうかがえた。ブドウ糖や水あめは、こうした天然でん粉を原料としている側面もあり、今後の仕入価格の動向が注目される。

 最後にお忙しい中、本調査にご協力いただいた企業の皆さまに、改めて厚く御礼申し上げます。
 
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
Tel:03-3583-9272