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令和5年産てん菜の生産状況について

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最終更新日:2024年7月10日

令和5年産てん菜の生産状況について

2024年7月

北海道 農政部 生産振興局 農産振興課

【要約】

 令和5年産てん菜の作付面積は、5万1081ヘクタールと前年から4101ヘクタール減少した。10アール当たり収量は、前年より増加し6661キログラムとなったが、生産量は、作付面積の減少に伴い、前年より減少し340万2659トンとなった。

 糖分は、記録的な猛暑や褐斑病(かっ ぱん びょう)の影響などにより、昭和61年の糖分取引開始以降最低の13.7%、歩留まりは13.2%となり、てん菜糖生産量も同じく最低の44万7537トンとなった。

1 最近のてん菜の作付け動向

 てん菜は、北海道の畑作経営の輪作体系を維持する上で基幹的な作物であるとともに、てん菜糖業は地域経済の維持・発展に重要な役割を担っている。

 近年、農業従事者の減少や高齢化の進行、経営規模の拡大に伴う労働力不足などにより、他品目への転換が進んだことから、作付面積は減少傾向で推移してきた。また、砂糖の消費量の減少や糖価調整制度の調整金収支の累積赤字が増大していることを踏まえ、令和4年12月に農林水産省が、てん菜糖の交付金の対象数量を令和8砂糖年度までに段階的に削減する方針を決定したことなどを背景として、令和5年産の作付面積は、前年から4101ヘクタール減少し、5万1081ヘクタールとなった(図1)。
 
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2 令和5年産てん菜の生育概況

 春先は天候に恵まれたため、移植作業や直播(ちょく はん)栽培の播種(は しゅ)作業は順調に進んだ。6月中旬以降、高温傾向で降水量も多く、生育は平年より早く進んだものの、7月から10月の生育期間において、高温多湿の影響により、褐斑病が全道で拡大した。なお、収穫期直前の生育は平年より早く、根周は平年並みだった(表1)。

 その他の病害虫については、根腐病(ね ぐされ びょう)黄化病(おう か びょう)の発生は少なく、そう根病の発生は平年並みだったほか、ヨトウガの発生量はやや多く、テンサイモグリハナバエの発生は平年並みであった。
 
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3 令和5年産てん菜の生産状況

 10アール当たり収量は、高温と周期的な降雨により根部の肥大が進み、前年から238キログラム増加し6661キログラム(前年比103.7%)となり、直近10年の平均を194キログラム上回ったが、生産量は、作付面積の減少に伴い、前年より14万1853トン減少し340万2659トン(同96.0%)となった。

 根中糖分については、夏から秋の最低気温が高かったことに加え、7月以降の高温多湿条件により褐斑病が多発したことから、昭和61年の糖分取引開始以降、最低の13.7%となった(表2、図2)。

 品種別の作付け構成は、「カーベ2K314」(31.7%)、「パピリカ」(26.0%)、「ライエン」(17.9%)の順となっている(表3)。

 「カーベ2K314」は、褐斑病やそう根病の抵抗性が優れており、「パピリカ」は、そう根病抵抗性に優れ根重が多く、平成29年に優良品種に認定された「ライエン」は、そう根病抵抗性に優れ糖量が多いことから、作付け割合が高くなっている。

 てん菜の作付け戸数は全道的に減少傾向が続いており、令和5年産は前年より298戸減少(4.6%減)、10年前と比べると1431戸減少し(18.7%減)、6233戸となった。一方、1戸当たりの作付面積は8.2ヘクタールと、令和3年をピークに減少傾向にあるが、10年前と比べると0.6ヘクタール増加している(図3)。

 労働力不足の中でこうした作付け規模の拡大に対応するため、近年では、春の育苗・移植作業に要する労働力を大幅に削減できる直播栽培に取り組む地域が増加傾向にあり、5年産の直播栽培の面積は、前年より429ヘクタール増加の2万2635ヘクタール(作付面積の44.3%)となっている(図4)。
 


 
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4 てん菜糖の生産状況

 北海道内の製糖工場は、令和5年3月に北海道糖業株式会社本別製糖所が製糖を終了し、現在、3社7工場で操業している。なお、本別製糖所は製糖終了後、本別事業所としててん菜の買い入れを継続し、近隣の2工場で製糖されている。

 令和5年産原料処理量は340万2659トンで、歩留まりは13.2%となったことから、てん菜糖生産量は44万7537トン(前年比79.6%)となり、昭和61年の糖分取引の開始以降、最も少なくなった(表4)。
 
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おわりに

 令和5年産のてん菜生産については、作付面積の減少に加え、記録的な猛暑や褐斑病の影響などにより、てん菜糖の生産量は、昭和61年の糖分取引の開始以降、過去最低となった。

 てん菜は、小麦や豆類、ばれいしょとともに、本道畑作農業における基幹作物として重要な作物であり、てん菜を原料とする製糖工場は地域経済や雇用を支える上で重要な役割を果たしている。今後とも、てん菜を安定的に生産していくためには、生産者、糖業、行政などの関係者が連携し、直播栽培の拡大に向けた機械の導入など省力・低コスト生産を進めるほか、気候変動に対応した品種の開発や選抜、技術の普及に適切に対応していくことが重要である。
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
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