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鹿児島県における令和5年産さとうきびの生産状況および実績について

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最終更新日:2024年8月9日

鹿児島県における令和5年産さとうきびの生産状況および実績について

2024年8月

公益社団法人 鹿児島県糖業振興協会

【要約】

 鹿児島県の令和5年産さとうきびは、一部の地域において台風などによる気象災害の影響があったものの、県全体としておおむね順調に生育が進んだことから、生産量は51万6539トン(平年比98%)、収穫面積は9502ヘクタール(同99%)、10アール当たりの収量は5436キログラム(同99%)となった。生産量について島別に見ると、徳之島と与論島で平年を下回ったものの、種子島、奄美大島、喜界島、沖永良部島は平年並みもしくは平年を上回った。

 また、県平均の買入糖度は、10月以降の晴天に恵まれたことなどにより、15.13度(平年+1.28度)と高かった。

1 さとうきびの位置付け

 さとうきびは、鹿児島県南西諸島の約6割の農家が生産している基幹作物であり、製糖業などの関連産業も含め、地域経済を支える重要な役割を担っている(表1)。

 当県のさとうきびの令和4年農業産出額は約128億円(前年比98%)であり、耕種部門の中では第5位となっている(1位:米、2位:かんしょ、3位:茶〈生葉〉、4位:ばれいしょ)。

 鹿児島県では、さとうきび生産農家の経営安定とさとうきび産業の維持・発展を図るため、令和7年産を目標年とする「鹿児島県さとうきび増産計画」(以下「増産計画」という)を策定し、生産者、製糖会社、関係機関・団体と連携して、受託組織の育成、堆肥投入などの地力増進対策や病害虫防除対策、地域の条件に適した優良品種の普及などによる単収・品質向上などの取り組みを推進している。

 近年は、生産者の高齢化などによる労働力の減少、台風などの気象災害などにより、増産計画で定めた目標値を達成できない状況が続いており、早期の生産回復が喫緊の課題となっていることから、例年7月から8月にかけて、増産計画の達成状況の検証・評価を島ごとに行い、必要に応じて、改善方策の検討などを行っている。
 
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2 令和5年産さとうきびの生育状況

(1)種子島地域

ア 生育初期〜分げつ
 
3月〜6月の平均気温が平年より高かったことから春植えや株出しの萌芽(ほう が)はおおむね良好であった。その後も多照・適時降雨など気象条件に恵まれたことから順調に生育した。

イ 伸長期
 
高温で推移したことから、仮茎長、伸長量ともに平年並みとなった。

 しかし、8月8〜9日にかけて台風6号が接近し、葉先の裂傷や倒伏などの被害を受けた。

ウ 登熟期
 
台風の接近はあったが、期間を通しておおむね気象条件に恵まれたことから、生育量および登熟ともに平年並みで、最終的な平均買入糖度は、13.48度となった。

(2)奄美地域

ア 生育初期〜分げつ
 
平均気温は平年より高く、日照時間も平年より長く推移し、ほとんどの島で平年並みの生育状況であったが、与論島は長梅雨や日照不足による低温期が続いたことから、生育は緩慢であった。

イ 伸長期
 
7月は干ばつ傾向にあったが、8月上旬の台風6号による降雨などもあり解消し、平年並みの生育となった。

 しかし、与論島は、台風6号による葉部裂傷や潮風害などからの回復が遅れ、その後の降雨量が少なかったことから、平年に比べ生育は劣った。

ウ 登熟期
 
高温・少雨・多照で推移したことから、登熟は良好で、最終的な平均買入糖度は、15.76度と品質取引制度開始(平成6年産)以降、過去最高となった。

3 令和5年産さとうきびの生産実績

(1)県全体

 収穫面積は9502ヘクタール(平年比99%)、生産量は51万6539トン(同98%)、10アール当たり収量は5436キログラム(同99%)となり、収穫面積、生産量、10アール当たり収量ともに、増産計画の目標(注)を下回った(図1、2)。

 なお、生産量の99%(51万1498トン)は、分みつ糖原料用として6社7工場に搬入・製糖されている。

(注)増産計画目標(令和7年産)は以下の通り。
   
収穫面積:1万300ヘクタール
   
生産量:63万700トン
   
単収:10アール当たり6120キログラム
 

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 栽培型別の収穫面積は、株出しが6920ヘクタール(構成比73%)、春植えが1580ヘクタール(同17%)、夏植えが1003ヘクタール(同11%)であった(図2)。
 
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 品種別の収穫面積の割合は、農林27号が25%を占め、次いで農林23号の23%、農林8号の14%の順であった。平成17年産で64%を占めていた農林8号の比率が年々減少し、各地域の気象条件などに適した品種への移行が進みつつある(図3、表2)。



 
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(2)各島の状況

 各島別の生産実績は以下の通り(表3)。

ア 種子島(西之表市、中種子町、南種子町)
 
収穫面積は2316ヘクタール(平年比103%)、生産量は14万1589トン(同104%)で、10アール当たり収量は6115キログラム(同101%)であった。

 株出し比率は72%で、品種別では、令和4年産より一般栽培が始まったはるのおうぎが43%を占め、次いで農林18号が31%、農林8号が18%であった。

イ 奄美大島(奄美市、宇検村、瀬戸内町、龍郷町)
 
収穫面積は560ヘクタール(平年比97%)、生産量は2万7551トン(同102%)で、10アール当たり収量は4918キログラム(同103%)であった。

 株出し比率は74%で、品種別では、農林27号が34%、農林23号が20%、農林22号が7%を占める。

ウ 喜界島(喜界町)
 
収穫面積は1366ヘクタール(平年比101%)、生産量は7万6116トン(同102%)で、10アール当たり収量は5573キログラム(同100%)であった。

 株出し比率は70%で、品種別では、農林27号が47%、農林23号が26%、農林8号が9%を占める。

エ 徳之島(徳之島町、天城町、伊仙町)
 
収穫面積は3155ヘクタール(平年比94%)で県全体の33%を占め、島別では最も多い。生産量は16万5063トン(同94%)となり、10アール当たり収量は5231キログラム(同99%)であった。

 株出し比率は75%で、品種別では、農林23号が38%、農林27号が28%、農林8号が16%を占める。

オ 沖永良部島(和泊町、知名町)
 
収穫面積は1700ヘクタール(平年比103%)、生産量は8万6623トン(同99%)で、10アール当たり収量は5095キログラム(同96%)であった。

 株出し比率は71%で、品種別では、農林27号が37%、農林22号と農林8号がそれぞれ18%を占める。

カ 与論島(与論町)
 
収穫面積は405ヘクタール(平年比100%)、生産量は1万9597トン(同80%)で、10アール当たり収量は4834キログラム(同79%)であった。

 8月上旬に発生した台風6号による茎の折損・葉の裂傷、潮風害と10月以降の少雨による伸長の停滞が影響したものと考えられる。

 株出し比率は80%を占め、島別では最も高い。品種別では、農林23号が86%を占める。
 

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(3)ハーベスタによる収穫の状況

 さとうきびの労働時間の大半を占める収穫作業の省力化を図るため、国庫補助事業などを活用したハーベスタの導入が進められている。

 また、県では平成23年度から、低コストで持続的な生産体制の確立を図るため、耐用年数を経過したハーベスタの長寿命化(機能向上)のための事業を実施しており、令和5年度までに80台の機能向上を支援した。

 この結果、令和5年産では、収穫面積全体の96.8%、約9195ヘクタールでハーベスタ収穫が行われており、島別に見ると、沖永良部島が最も高い99%となっている。

4 製糖工場の操業状況

 分みつ糖工場は、1島1社の体制となっており、6島6社(7工場)が操業している。

 分みつ糖工場における令和5/6年期の原料処理量は51万1498トンで、前年から1万6419トン減少した。平均買入糖度は15.13度で、前年より0.97度高くなっており、産糖量は6万3018トンと前年を809トン上回った(表4)。
 
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おわりに

 鹿児島県では、関係機関・団体と一体となり、収穫面積の確保や単収向上に向けて、基本技術の励行はもとより、各種補助事業などを活用した、農業機械の導入や製糖関連施設の整備などの取り組みを積極的に支援しているところである。

 今後とも、さとうきび生産農家の経営安定と、製糖会社など関連産業を含めた地域経済の維持発展を図るため、増産計画で定めた令和7年産の目標達成に向け、大規模経営体や農作業受託組織などの担い手の育成、農業共済制度への加入促進による「経営基盤の強化」、機械化一貫体系の普及・確立や地力増進による「生産基盤の強化」、病害虫防除対策および鳥獣被害対策の推進や優良品種の育成・普及による「技術対策」などに取り組むこととしている。
 
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
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