砂糖 砂糖分野の各種業務の情報、情報誌「砂糖類情報」の記事、統計資料など

ホーム > 砂糖 > 調査報告 > さとうきび > 沖縄県における令和5年産さとうきびの生産状況について

沖縄県における令和5年産さとうきびの生産状況について

印刷ページ

最終更新日:2024年9月10日

沖縄県における令和5年産さとうきびの生産状況について

2024年9月

沖縄県 農林水産部 糖業農産課
 

【要約】

 沖縄県の令和5年産さとうきびは、生産量66万4284トン(前年比90.1%)で、平年よりも少ない不作となった。収穫面積が1万3164ヘクタール(同96.2%)で前年より515ヘクタール減少したことや8月の台風の被害が大きかったことに加え、6月、8月の台風襲来を除き、県全域において少雨傾向であったことなどにより、10アール当たりの単収は前年を下回る5046キログラム(同93.6%)となり、生産量は平年より大きく減少した。一方、平均甘しゃ糖度は14.6度(前年13.8度、平年14.4度)と品質的には上がった。

1 さとうきびの位置付け

 さとうきび栽培経営体は県農業経営体の約6割、さとうきび栽培面積は経営耕地総面積の約5割と、さとうきびは農業産出額の約2割を占める基幹作物であり、特に多くの離島を抱える本県において製糖業とともに地域経済、社会を支える重要な作物となっている。また、さとうきびは他作物に比べて比較的台風や干ばつに強く、離島地域においては代替の利かない作物である。

 沖縄県では、国の「さとうきび増産プロジェクト基本方針」に基づき、平成18年に策定した各島別および県段階における生産目標や取り組み方向を示した「さとうきび増産プロジェクト計画」を27年に改定した。さらに、令和4年度から新たにスタートした「沖縄振興特別措置法」に基づき、「新・沖縄21世紀ビジョン基本計画」を令和4年5月に策定し、この法律と計画によって生産基盤の整備、安定生産技術の開発および普及、機械化や地力増強、病害虫防除対策の推進、生産法人など担い手の育成、優良品種の開発・普及など総合的な施策展開による生産振興を推進している。
 
1

2 令和5年産さとうきびの生育概況

(1)沖縄地域(沖縄本島、伊平屋島、伊是名島、伊江島、粟国島、久米島、南大東島、北大東島)

 沖縄本島および周辺離島地域において、平年よりも日照時間が増加したものの、生育初期および生育旺盛期の少雨により、茎長の生育が抑制されたことに加え、8月の台風襲来により、本島および周辺地域においてさとうきびの倒伏や折損、葉片裂傷などの大きな被害が見られた。9月から11月の降水量においても平年を下回る地域が多く、収量や品質に影響を及ぼした。大東地域においては、8月を除いて降水量が平年値を下回り、生育の抑制が生じた。
 

(2)宮古地域(宮古島、伊良部島、多良間島)および八重山地域(石垣島、小浜島、西表島、波照間島、与那国島)

 生育初期から生育旺盛期である令和5年1月から7月の降水量は、3月を除き平年値を下回る降水量となった。特に梅雨明けの7月の降水量は平年を下回り、葉のロールや葉先の枯れが生じるなど、平年と比べ各作型の茎径および一茎重が減少した。8月の台風6号による被害は軽微であったものの、10月から11月にかけての少雨傾向により、収量や品質に影響を及ぼした。

3 令和5年産さとうきびの生産状況

 令和5年産さとうきびの収穫面積は1万3164ヘクタールとなり、令和4年産と比較して515ヘクタール減少した(前年比96.2%)。生産量は7万3155トン減少し66万4284トン(同90.1%)、10アール当たり収量は5046キログラムと、前年に比較して10アール当たり345キログラム減少(同93.6%)した(図1、表1〜3)。

 沖縄地域では収穫面積(前年比138ヘクタール減)、10アール当たり収量(同902キログラム減)ともに減少したことから、生産量は前年より大きく減少した。宮古地域においても収穫面積が172ヘクタール減少し、10アール当たり収量も203キログラム減少したため、生産量は減少した。八重山地域では収穫面積が205ヘクタール減少したものの、10アール当たり収量が前年より915キログラム増加したことから、生産量は増加した。

 なお、各地域別生産量は、沖縄地域(周辺離島を含む)が全体の39.0%、宮古地域が46.7%、八重山地域が14.3%となっている。







 作型別では、夏植え栽培が前年と比較して265ヘクタール減少し2774ヘクタール(全収穫面積に占める割合21.1%)、春植え栽培が125ヘクタール増加し1289ヘクタール(同9.8%)、株出し栽培が376ヘクタール減少し9101ヘクタール(同69.1%)となった(図2)。新植栽培(夏植え・春植え)よりもコストが抑えられることから、株出し栽培が増加傾向となっている。

 

 

 品種構成は、Ni27(農林27号)が全収穫面積の47.5%を占め、次いでNi22(農林22号)が6.4%、Ni29(農林29号)が5.5%、NiH25(農林25号)が5.3%、Ni21(農林21号)が4.6%、RK97-14が4.4%、Ni28(農林28号)が3.5%となった(図3)。Ni27(農林27号)は茎のそろいや収量性がよく、株出し性や糖度についても安定しており、栽培性に大きな欠点がなくバランスの取れた品種であることから、近年生産が拡大している。しかしながら、早期の台風では被害が大きくなることや株出し栽培で黒穂病の発生が見られることから、一部産地ではNi27(農林27号)の品種割合を抑制して危険分散を図る動きが見られる。
 


 
2

(1)沖縄地域

 収穫面積は5628ヘクタールで令和4年産に対して138ヘクタール減少し、10アール当たり収量は4607キログラム(前年比83.6%)と減少し、生産量は25万9274トン(同81.6%)で前年から5万8313トンと大きく減少した。

 作型別では、夏植え栽培は515ヘクタールで前年から126ヘクタール減少し、春植え栽培は701ヘクタールで同7ヘクタール増加、収穫面積の約8割を占める株出し栽培は4412ヘクタールで同19ヘクタールの減少となった。春植え栽培の収穫面積はやや増加したものの、夏植えと株出し栽培の収穫面積が減少したため全体的な収穫面積は減少した。10アール当たり収量は春植え栽培は前年から1262キログラム減少、夏植え栽培は同637キログラム減少、株出し栽培は同851キログラム減少といずれの作型も減少し、全体として大幅な減少となった。

 品種構成は、Ni27(農林27号)が35.0%、Ni29(農林29号)が12.2%、RK97-14が7.0%、Ni28(農林28号)が6.5%を占めている。

(2)宮古地域

 収穫面積は5803ヘクタールで令和4年産に対して172ヘクタール減少し、10アール当たり収量も5347キログラム(前年比96.3%)となったため、生産量は31万264トン(同93.6%)と2万1356トン減少した。

 作型別では夏植え栽培の収穫面積は1725ヘクタールで前年より61ヘクタール減少し、春植え栽培は357ヘクタールで同42ヘクタール増加、近年増加傾向にある株出し栽培では3721ヘクタールで同153ヘクタール減少した。

 品種構成は、Ni27(農林27号)58.7%と最も多く、次いでNi22(農林22号)が6.4%となっている。

(3)八重山地域

 収穫面積は1733ヘクタールで令和4年産に対して205ヘクタール減少し、10アール当たり収量は5467キログラム(前年比120.1%)、生産量は9万4746トン(同107.4%)で6514トン増加した。

 作型別では、夏植え栽培で76ヘクタール減少したが、春植え栽培で76ヘクタール増加した。10アール当たり収量が全作型で前年を上回ったため、生産量は全作型で前年を上回った。

 品種構成は、Ni27(農林27号)が50.9%と最も多く、次いでNiH25(農林25号)が16.6%、Ni22(農林22号)が15.7%となっている。

4 ハーベスタによる収穫状況

 さとうきびの労働時間の大半を占める収穫作業の省力化を図るため、これまで国庫補助事業などを活用したハーベスタの導入を推進してきた。さらに、県では既存のハーベスタの導入に加え、脱葉施設などの導入を進め、地域に応じた収穫体系を含む機械化一貫作業体系の確立を推進している。

 令和5年産では、県内全域において大型、中型、小型の各機種合計396台のハーベスタが稼働し、ハーベスタ、刈り倒し機および脱葉機を利用した機械収穫率は収穫面積の88.8%(前年収穫率86.2%)となっている。

5 製糖工場の操業状況

 沖縄県の製糖工場は、分みつ糖工場が8社9工場(8島)、含みつ糖工場が4社8工場(8島)操業している(表4)。

 分みつ糖工場の令和5年産原料処理量は、4年産より7万1815トン減少し60万6553トン(前年比89.4%)となり、買入糖度は、前年より高い14.6度となった。

 含みつ糖工場の5年産原料処理量は、4年産より1341トン減少し5万7731トン(同97.7%)となった。
 
3

おわりに

 沖縄県では令和7年産を目標とする「さとうきび増産プロジェクト」および令和13年度を目標とする「新・沖縄21世紀ビジョン基本計画」に基づき、各種の生産振興施策・事業を展開している。

 5年産さとうきびは、収穫面積が前年より515ヘクタール減少したことや沖縄本島および周辺地域に長期間襲来した台風6号の被害が大きかったことに加え、6月(台風2号)、8月(台風6号)の台風襲来期を除き、県全域において少雨傾向であったことなどにより、10アール当たり収量が大きく減少し、県全体として66万トン台と過去2番目に低い生産量となった。

 さとうきびは比較的気象災害に強い作物ではあるが、本県は台風常襲地域で、気象条件などの年変動も大きいことから、これまで同様の取り組みの継続と強化が必要である。

 今後も継続して目標を達成していくため、気象災害と病害虫被害などに対応したセーフティネット(さとうきび増産基金)などを活用することにより、関係機関・団体が一体となって増産への取り組みを強化し、本県さとうきび生産農家と製糖企業の経営の安定化に向けて取り組んでいるところである。
 
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
Tel:03-3583-9272