砂糖の価格調整業務実績について(令和5砂糖年度)
最終更新日:2024年12月10日
砂糖の価格調整業務実績について(令和5砂糖年度)
2024年12月
はじめに
当機構では「砂糖及びでん粉の価格調整に関する法律」(昭和40年法律第109号)に基づき、輸入糖、異性化糖および輸入加糖調製品の買入れ・売戻しにより調整金を徴収し、それらを財源として国内のサトウキビ生産者やてん菜糖・甘しゃ糖の製造事業者に交付金の交付などの支援を行うことで内外価格差を調整し、国内の砂糖の安定的な供給の確保を図っている。
本稿では、令和5砂糖年度(令和5年10月1日〜令和6年9月30日。以下「5SY」という)における砂糖の価格調整業務実績などについて取りまとめたので報告する。
1 砂糖の価格調整業務における収支
(1)収支
5SYの調整金収支は、72億円の赤字(前SYは121億円の赤字)となり、引き続き大幅な単年度赤字となるとともに、期末残高はマイナス638億円(4SY期末:566億円の赤字)と大変厳しい状況となる見込みである(表1、図1)。
また、6SY(令和6年10月1日〜令和7年9月30日)は、令和6年9月に農林水産省が公表した6SYの各種指標価格を踏まえると、収支の改善が図られる見通しであるが、期末残高の動向には引き続き注視が必要である。
(2)収入
収入については、輸入糖は、経済活動の回復により輸入量は増加したものの、円安や砂糖の国際相場が依然として高い水準で推移したことにより調整金単価が低下したため、前SYより66億円減の154億円となった(表1)。
一方、異性化糖については、13年ぶりに令和6年1月から機構売買が発生したことや同年4月から運用見直しが行われたことなどから10億円、輸入加糖調製品については、前SYより8億円増の103億円の収入となったものの、輸入糖収入の低下が響き、国費も含む収入全体では前SYより59億円減の358億円となった。
(3)支出
支出については、てん菜糖、甘しゃ糖ともに交付金単価が下落したこと、てん菜の国庫納付金額が減少したことなどから、全体としては前SYより107億円減の431億円となる見込みである。
2 調整金徴収業務
(1)5SYの指標価格等
5SYを含む直近3砂糖年度の指標価格等は表2の通り。
(2)砂糖の需要と供給
令和6年9月に農林水産省が公表した砂糖及び異性化糖の需給見通し(以下「需給見通し」という)によると、5SYの砂糖の需給(見込み)は表3、4の通り。
(3)国際相場などの動き
ニューヨーク粗糖先物相場の5SYの動きは、SY当初の令和5年10月から11月にかけては、原油価格の高騰により、バイオエタノール需要の増加が見込まれ砂糖向けの供給がひっ迫する懸念により、1ポンド当たり27米セント前後で推移し、同年11月の平均は27.31米セントをつけた。その後、12月に入り、ブラジルでの増産見込みを受け、令和5年12月21日には、20.24米セントと9カ月半ぶりの安値まで下落した。令和6年に入ると、1月後半からインドの供給不足が発表されたことにより再び値を上げ、同年2月の平均は23.36米セントをつけた。4月に入るとインドやタイの砂糖の増産見込みにより、4月17日には19.32米セントと15カ月ぶりの安値をつけた。
その後は9月中旬までおおむね20米セントを下回る水準で推移していたものの、ブラジルでの長引く乾期や農場火災の影響により、9月25日には23.42米セントまで上昇し、9月の月平均価格は20米セント台で5SYを終えた(図2)。
(4)粗糖、加糖調製品糖および異性化糖の平均輸入価格等
5SYにおける粗糖および加糖調製品糖の平均輸入価格、異性化糖の平均供給価格は表5〜7の通り。特に、粗糖は国際相場の高止まりや為替相場の円安傾向が続いたこともあり、平均輸入価格は年間を通して1トン当たり10万円を超える水準で推移した。
(5)売買実績
ア 輸入糖
5SYの輸入糖の売買数量は前SY比9.6%増の120万3000トンとなった(表8)。経済活動の回復による国内需要の増加により売買数量は増えたものの、粗糖の国際相場が高値で推移したことおよび円安の継続に伴う平均輸入価格の上昇により、調整金収入が減少したことから、売買差額は前SY比30.0%減の153億9000万円と大幅に減少した。
イ 輸入加糖調製品
5SYの輸入加糖調製品の売買数量は前SY比9.4%減の32万6000トンとなった。これは、円安の継続により砂糖に対する価格優位性が薄れたことや、ココア調製品の原料であるカカオの価格が高騰したことなどにより、数量が減少したためである。しかし、円安傾向が続いたことからCIF価格(課税標準価額)は上昇したため、売買差額は増加し前SY比8.6%増の103億4400万円となった(表8)。
ウ 異性化糖等
5SYの異性化糖等の売買は、令和5年10−12月期までは、異性化糖の平均供給価格(機構の買入価格)が異性化糖標準価格(機構の実質的な売戻価格)を上回ったことから、売買は行われなかったが、令和6年1−3月期以降は平均供給価格が標準価格を下回り13年ぶりに売買が発生した。また、同年4月以降異性化糖売買の運用見直しが行われ、引き続き売買が発生した。これらの結果、異性化糖等の売買数量は60万1000トン、調整金収入は10億1000万円となった(表8)。
3 交付金交付業務など
(1)甘味資源作物および国内産糖の生産動向
ア てん菜・てん菜糖
5SYのてん菜は、作付面積の減少に加え、高温多湿により褐斑病が多発したことから、根中糖分が低下し昭和61年の糖分取引開始以降最低の13.7%となった。その結果、てん菜の生産量は前SY比4.0%減の340万3000トン、産糖量は大幅に減少し同20.3%減の44万8000トンとなった(表9)。
イ サトウキビ・甘しゃ糖
5SYの鹿児島県および沖縄県のサトウキビは、一部の島において春から夏にかけて干ばつがあったことなどの影響が見られた。その結果、両県を合わせた生産量は前SY比7.0%減の118万1000トン、産糖量は同2.9%減の13万4000トンとなった(表10、11)。
(2) 交付金の交付状況など
ア 甘味資源作物交付金(サトウキビのみ)
サトウキビの収穫期はおおむね12月から翌年5月ごろまでであり、製造事業者への売渡し数量に応じて生産者に交付金を交付している。5SYは、サトウキビ生産量の減少を受け、交付決定数量が前SY比7.3%減の111万8000トンとなり、交付決定金額は、同4.7%減の195億3600万円となった(表12)。
イ 国内産糖交付金
(ア)てん菜糖の交付状況
てん菜糖製造事業者の販売は年間を通じて行われ、販売数量に応じて交付金を交付している。5SYは、交付決定数量が前SY比18.1%減の51万2000トンとなった。また、交付決定金額は、交付金単価の低下の影響も重なり同29.7%減の103億7800万円となった(表13)。
(イ)甘しゃ糖の交付状況
甘しゃ糖製造事業者が製造した粗糖は、製糖後それほど期間を置かずに精製糖メーカーに販売されるため、操業時期に対応して交付金を交付している。
5SYは、サトウキビの生産量が減少したことから産糖量も減少し、交付決定数量は前SY比2.9%減の13万4000トンとなった。また、交付決定金額は、てん菜糖と同様に交付金単価の低下を受けて同15.6%減の66億1300万円となった(表14)。
(3)国庫納付金納付業務(てん菜)
てん菜生産者への農業の担い手に対する経営安定のための交付金の交付に要する経費の財源に充てるため、農林水産大臣からの通知に従い、5SY(発生ベース)分として、調整金収入などから64億2400万円を国庫に納付する見込みである。
5SYは前SYと比較し調整金収入の減少およびてん菜の生産量が減少したことなどにより、国庫への納付金額も減少した(表15)。
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
Tel:03-3583-9272