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令和6年度加糖調製品等の用途別消費動向に関する調査結果

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最終更新日:2025年1月10日

令和6年度加糖調製品等の用途別消費動向に関する調査結果

2025年1月

特産調整部

【要約】

 機構では、砂糖の価格調整制度の安定的な制度運営に資することを目的として、国内の砂糖および加糖調製品などの用途別消費動向について調査を行っている。令和5年度を対象とした、令和6年度の調査結果、砂糖は外食やインバウンド需要の回復がみられたが、物価高による最終製品の消費減の影響もあり、消費量は前年度と同程度にとどまった。また、加糖調製品は、原料の高騰や円安により価格が上昇したため、消費量は減少した。砂糖および加糖調製品を合計した消費量は前年度からわずかに減少する結果となった。

はじめに

 当機構は、砂糖の価格調整制度の執行機関として、砂糖および加糖調製品(注1)の需給動向を把握するため、これらの品目のユーザーとなる食品製造事業者やサプライヤーとなる精製糖製造事業者、商社などを対象とした用途別の消費動向に関する委託調査を令和3年度から実施している(注2)。本稿では、令和5年度を対象期間として令和6年度に実施した委託調査結果の概要について報告する。

(注1)加糖調製品は、砂糖と砂糖以外のココア、粉乳、ソルビトールなどの混合物で、菓子類、パン類、飲料、調味料、水産練り製品などに幅広く使用されている。
(注2)昨年の調査報告については、本誌2024年1月号「令和5年度加糖調製品等の用途別消費動向に関する調査結果」〈https://www.alic.go.jp/joho-s/joho07_003054.html〉をご参照ください。

 

1 砂糖および加糖調製品の用途別消費動向調査の概要

(1)調査委託先
 
株式会社富士経済

(2)調査実施期間
 
令和6年4〜9月

(3)調査対象者
 
食品製造事業者など(砂糖ユーザー〈73社〉、加糖調製品ユーザー〈54社〉、高甘味度甘味料・異性化糖ユーザー〈48社〉)のほか、製糖事業者、流通事業者、加糖調製品輸入者の皆さまにヒアリングを行った。

(4)調査品目


(5)調査対象期間
 
令和5年度(令和5年4月〜6年3月)

(6)調査項目
 
ア 砂糖および加糖調製品の用途別の消費量
 イ 砂糖および加糖調製品の使用用途
 ウ その他

(7)調査手法
 
ア 調査対象者に対する調査票の送付および電話や対面などによるヒアリング
 イ アのヒアリング結果および各種統計資料などに基づく用途別消費量の推計

(8)その他
 
ア 本調査における消費量および用途別消費量は、全数調査に基づく調査結果ではなく調査・分析に基づく推計値である。
 イ 本稿は委託調査先の報告書を踏まえ、その概要を機構で取りまとめたものである。
 ウ 図表は委託調査先報告書「令和6年度加糖調製品等の用途別消費動向に関する調査」(詳細はリンク先を参照)からの引用である。

2 砂糖および加糖調製品の用途別消費動向調査の結果

(1)砂糖および加糖調製品の消費量の推移

 令和5年度の国内における砂糖および加糖調製品の消費量は、前年度比2.5%減の228万トンと前年度をわずかに下回った(表1)。
 


 

 品目別では、砂糖は同0.1%増の180万トン、加糖調製品は同11.2%減の48万トンとなった。

 砂糖は、令和5年5月8日に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が感染症法上の2類感染症から5類感染症に移行され、外出の機会が増えたことやインバウンド消費が急速に伸びたことにより、回復につながっていると思われる面があるものの、物価高による最終製品の価格上昇により、菓子や飲料の販売が想定以上に振るわない面もあり、消費量は前年度並みにとどまった。

 一方、加糖調製品は、大半が輸入品であり、円安により調達コストが急速に高まったことから、前年度比11.2%減とかなり大きく減少し、昨年度の減少幅を8.5ポイント下回った。

(2)砂糖および加糖調製品(合計)の用途別消費量の推移

 令和5年度の砂糖および加糖調製品(合計)の消費量の用途別構成比(図1)については、「菓子・冷菓」が33.2%と最大の仕向け先となっており、「清涼飲料・酒類」が18.0%、「パン」が11.2%と続いている。
 


 

 用途別にみると、「菓子・冷菓」では、粉乳調製品や穀粉調製品において砂糖と他の原料の分離調達の動きが顕著になったことによる加糖調製品の使用量の減少などから、前年度比4.2%減とやや減少した。また、前年度比で最大の落ち込み幅であった「びん・缶詰・ジャムなど」では、「当初の使用目的であるコスト優位性がなくなっている」「商品の価格改定により消費自体が落ち込んでいる」などの理由により、同9.3%減とかなりの程度減少した(表2)。




 砂糖と加糖調製品の消費量全体における構成比は、砂糖が78.9%、加糖調製品が21.1%となり、砂糖の構成比が前年より2ポイント増加した(図2)。これは、加糖調製品の分離調達(注3)や加糖調製品を使用した価格訴求型の商品が苦戦したなどの動きにより、砂糖の割合が高まったためと考えられる。また、令和5年度はCOVID-19の5類感染症への移行に加え、インバウンド需要が急増し消費が活発化している一方、物価高による食品の消費減がネックとなっており、砂糖の消費は上向いていないとする声も挙げられている。今後の砂糖や加糖調製品の価格動向によっては、消費の動きが引き続き注目される。

(注3)加糖調製品として調達していたものを、砂糖と他の原料を別に調達するように切り替え自社で混合すること。
 
1

(3)砂糖の用途別消費量の推移

 令和5年度の砂糖の消費量の用途別の構成比については、「菓子・冷菓」が29.6%と最大の仕向け先となっており、「清涼飲料・酒類」が19.7%、「パン」が11.2%と続いている(図3)。この比率は前年度とほぼ同じで、傾向に変化は見られなかった。

 また、令和5年度の砂糖の用途別消費量の推移を見ると、外食需要の回復などを背景に一部消費が伸びた用途はあるものの、完全に回復したとまでは言えず、「びん・缶詰・ジャム」「漬物・佃煮・水産品など」「調味料・調味食品」など引き続き減少している用途もあり、消費量合計は前年度並みであった(表3)。






 

 増加した用途のうち、「パン」は小売向けのパンは価格改定で苦戦する一方、外食需要での消費が上向いており、全体ではわずかな増加となった。また、「菓子・冷菓」のうち「菓子」はガムの代替としてグミの消費が拡大したことが挙げられており、冷菓向けを合わせると前年度比1.3%増加となった。

 減少した用途のうち、「びん・缶詰・ジャムなど」は、「砂糖不使用のジャムなど自然な甘さの商品が増えた」、「乳製品」は「物価上昇による消費減」「販売価格の値上げ」などが理由として挙げられていた。

(4)加糖調製品の用途別消費量の推移

 令和5年度の加糖調製品の消費量の用途別の構成比については、「菓子・冷菓」が46.6%と最大の仕向け先となっており、「調味料・調味食品」が12.5%、「清涼飲料・酒類」が11.4%となっている(図4)。図3の砂糖の消費量の用途別構成比と同様に「菓子・冷菓」の割合が最大となっている。

 令和5年度の加糖調製品の用途別消費量の推移を見ると、すべての用途において前年度から減少した(表4)。






 

 「菓子・冷菓」については、粉乳調製品や穀粉調製品で分離調達の動きが見られ、調製品としての消費量が低下したことなどにより、前年度比15.1%減となった。カカオ原料の高騰を受けたチョコレート関連商品の値上げを原因として消費量が落ち込んだほか、個別の事例として、ソフトクリームのコーンに使う小麦粉調製品を砂糖との分離調達に切り替えたなどの回答も見られた。また、「パン」および「清涼飲料・酒類」においても、調製品から国産原料を用いた分離調達にシフトしたことにより、それぞれ同12.9%減および10.1%減となった。

(5)加糖調製品の種類別の消費量

 加糖調製品は、砂糖と組み合わせる品目の違いによって、いくつかの種類に分けられる。本稿では、粉乳調製品、ココア調製品、加糖あん、ソルビトール調製品、その他調製品(主として穀粉調製品、塩調製品)の5種類で分析を行った(表5)。

 

 

 加糖調製品の種類別の消費量については、その他調製品を除き、粉乳調製品が最も多くなっている。清涼飲料・酒類や菓子・冷菓、乳製品など用途が幅広く、大口ユーザーも多い。しかし、5年度も前年度に続き分離調達の動きが見られたことから前年度比20.8%減少となり、3年度と比較すると24%以上減少した。

 次に消費量が多いソルビトール調製品は、パンや和菓子、洋菓子、グミ、ゼリー、びん・缶詰・ジャム類、煮豆、水産品などさまざまなカテゴリーで使用されており、これまでは砂糖に対する価格優位性の高さから消費量が年々増加していたが、仕入価格の上昇が見られ、価格優位性が小さくなったことから、前年度比4.8%減少となった。

 また、ココア調製品については、ココアの原料であるカカオ豆の国際価格が高騰し、原料自体が入手困難となったことに加え、為替が円安になったことも相まって調達を取りやめる動きが出てきていることなどから、同18.0%減と大幅に減少した。

 加糖あんについては、円安による加糖あんの価格優位性の低下に加え、和菓子市場における個人店の減少や値上げによる商品の回転率の低下などにより、同10.4%減となった。

3 ユーザー調査の結果

 主要な調査品目とした砂糖、加糖調製品に加え、高甘味度甘味料および異性化糖も含めた取扱事業者(延べ175社。以下「ユーザー」という)から取り扱い品目や使用用途、仕入価格などの観点からヒアリング調査を実施した。その結果を併せて報告する。

(1)取扱品目別調査品目別のユーザー数

 今回のヒアリング対象者について、調査品目別に主たる取り扱い品目を取りまとめたところ、いずれのユーザーにおいても「菓子・冷菓」が最多となった。

(2)使用目的

 各ユーザーにおける使用目的(複数回答可)については、次の通りとなった。

ア 砂糖
 
砂糖の使用目的は、191件(使用する砂糖の種類による複数回答を含めた延べ件数)中「甘味調整」が116件(60.7%)と圧倒的な割合を占めた。別の回答として「外観向上」が11件(5.8%)、「保存性向上」が7件(3.7%)であった。その他の意見としては、「ビート糖などを国産原料のために使用」という回答もあった(図5)。

 

イ 加糖調製品
 
加糖調製品の使用目的は、112件(使用する加糖調製品の種類による複数回答を含めた延べ件数)中「コスト削減」が61件(54.5%)と過半を占めた。別の回答として「安定調達」が16件(14.3%)、「甘味調整」が10件(8.9%)、「効率化」が7件(6.3%)であった。その他の意見としては、「製造委託先からの指定」「従来から使用」などがあった(図6)。



 

ウ 異性化糖
 
異性化糖の使用目的は、58件(異性化糖の種類による複数回答を含めた延べ件数)中「甘味・味の調整」が37件(63.8%)と圧倒的な割合を占めた。別の回答として「コスト削減」が11件(19.0%)、「作業性改善」が2件(3.4%)であった。その他の意見としては、「保水性の付与」「製造委託先からの指定」「従来から使用」「品質保持」などがあった(図7)。
 


エ 高甘味度甘味料
 
高甘味度甘味料の使用目的は、97件(高甘味度甘味料の種類による複数回答を含めた延べ件数)中「甘味調整(高甘味度甘味料でしか表現できない味)」が40件(41.2%)、「カロリー抑制」が37件(38.1%)と両者で約8割と大多数を占めた。別の回答として「コスト削減」が4件(4.1%)であった。その他の意見としては、「色つやをよくするため」「甘味の付与・付加」「食品添加物として使用」などがあった。特に近年はカロリー抑制に加え、使用する高甘味度甘味料によっては、甘さを先に感じる効果や風味をマスキングする効果があることから、高甘味度甘味料でしか表現できない味を表すことを目的とした使用が、前年度の17件から40件へと増えていた(図8)。


(3)仕入動向

 各ユーザーにおける仕入動向(複数回答可)については、次の通りとなった。なお、品目により設問が異なるのでご留意いただきたい。

ア 砂糖
 
令和5年度の砂糖の仕入量は、「1000トン〜2000トン未満」が19社と最も多く、次に「500トン〜1000トン未満」の11社、「200トン〜500トン未満」の10社が続く結果となった(図9)。砂糖の種類別には、すべての種類において「200トン未満」が最も多い結果となった(図10)。






 また、令和4年度からの仕入量の増減については、グラニュー糖、上白糖および三温糖とも「減少」との結果となった(図11)。「減少」の理由としては、多くの商品で価格改定が実施され消費者から敬遠されたほか、容量を減らすことで商品当たりの砂糖の使用量が減ったことなどが挙げられた。個別の事例では、「上白糖から砂糖混合液糖へ一部置き換え」「商品展開取り止め」「大型製品の終売」などの回答があった。


 


イ 加糖調製品
 
令和5年度の加糖調製品の仕入量は、「200トン未満」が22社と最も多く、「2000トン〜5000トン未満」の9社、「1000トン〜2000トン未満」の7社、「500トン〜1000トン未満」の6社が続く結果になった(図12)。加糖調製品の種類別では、粉乳調製品以外の加糖調製品において「200トン未満」が最も多かった(図13)。

 




 

 
 また、令和4年度からの仕入量の増減については、加糖あん以外の加糖調製品において「減少」が最多であり、これに対しては、食品の価格改定や容量変更などの声が挙げられた(図14)。仕入れに関する個別の事例では、「為替円安によりコストメリットがなくなり、新規契約量を大幅に減らした」などの意見もあった。



 


ウ 異性化糖
 
令和4年度からの仕入量の増減については、すべてにおいて「増加」が最も多くなった。「増加」については、「猛暑による冷菓の消費量の増加」や「コロナ禍からの回復により販路拡大をした」といった回答があった。一方、「減少」では、洋生菓子の用途において、卵の供給不足による製品の生産減により減少したユーザーが見られた(図15)。



 


エ 高甘味度甘味料
 
令和4年度からの仕入量の増減については、10社以上から仕入れの回答があった高甘味度甘味料のうちアセスルファムKとスクラロースにおいて「増加」が最も大きな構成比となった一方で、ステビアは「横ばい」と「減少」が同比であった。「増加」については、プロテインやゼリー飲料など市場が活性化しているカテゴリーがけん引したとみられる(図16)。

 

(4)価格に対する満足度

 砂糖と競合する甘味料について、各ユーザーにおける価格に対する満足度の調査結果は、次の通りとなった。

ア 加糖調製品
 
加糖調製品の価格に対する満足度は、94件(使用する加糖調製品の種類による複数回答を含めた延べ件数)中「不満である」が71件(75.5%)と最も多く、「仕方ない」が11件(11.7%)、「満足している」が4件(4.3%)であった。「その他」と回答をしたのは8件(8.5%)で、そのうち「満足はしていないが大きな不満は無し」との回答が数件あった(図17)。



 
 

イ 異性化糖
 
異性化糖の価格に対する満足度は、55件(使用する異性化糖の種類による複数回答を含めた延べ件数)中「不満である」が32件(58.2%)と最も多かった。「不満である」との回答の中で、「原料高や為替相場などによる値上げが行われており、商品価格を見直ししているが取引先の理解を得るのが難しい」との意見が見られた(図18)。



 


ウ 高甘味度甘味料
 
高甘味度甘味料の価格に対する満足度は、65件(使用する高甘味度甘味料の種類による複数回答を含めた延べ件数)中「不満である」が33件(50.8%)と最も多かった。「不満である」との回答の中では、「価格は高いがカロリー抑制のために必要」というものが見られた。また、「満足している」との回答も24件(36.9%)あり、その中で、「価格変動がないことやコストメリットはある」といった意見があった(図19)。

 


おわりに

 令和5年度を対象とした今回の調査では、砂糖については、外出の制限が無くなったことやインバウンド需要により消費が回復したが、物価高を受けた最終商品の価格改定による消費の低下の懸念など、今後の見通しに対する不安の声があった。また、円安によって加糖調製品の調達コストが急騰したことにより、加糖調製品から砂糖に切り替えるユーザーが見られた一方で、既存の取引先との関係性もあり、今後の原料調達関係の維持を考えて軽々に切り替えられない、と回答するユーザーもあった。

 加糖調製品については、原料の高騰や円安により価格が上昇し、すべての食品カテゴリーで消費量が前年割れとなった。粉乳調製品については、価格高騰に加え国産の脱脂粉乳の在庫量の増加に伴う分離調達の動きがあったことから、引き続き大幅に減少した。また、ソルビトール調製品では、値上げや為替レートの要因に加え、水産加工品の原料となる魚の漁獲量の減少など、一次原料の調達量減少による生産の縮小も消費量の減少要因となるケースが見られ、減少要因が多様化していることがうかがえた。

 本調査の結果、日本国内における甘味料の市場は、原料の急騰や為替レートの変動により大きく変化してきており、コスト面の問題から砂糖と加糖調製品の間での切り替えなど調達コストを考慮した上での安定的な調達に向けた動きが活発になってきている。このようなことから、今後も加糖調製品の価格動向や需要動向を引き続き注視していく必要があると考えられる。

 最後にお忙しい中、本調査にご協力いただいた企業の皆さまに、改めて厚く御礼申し上げます。
 
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
Tel:03-3583-9272