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ホーム > 砂糖 > 調査報告 > さとうきび > 製糖工場から地域環境への配慮に最善を尽くす〜新光糖業株式会社におけるゼロ・エミッションの取り組み〜
最終更新日:2025年2月10日
ア 圧搾工程
12月から翌4月までの工場稼動期の電力使用量374万キロワット時(令和5/6年期実績)を賄う要となるのがバガス(注2)である(写真2)。圧搾工程で生成されるバガスは、ボイラーの燃料として使用され、発生する蒸気で工場内すべての電力を賄う発電機や圧搾機のタービンを動かしている(写真3)。また、蒸気はサトウキビから搾り出して不純物を取り除いた清浄汁を濃縮する効用缶や、濃縮した汁をさらに真空状態で煮詰める結晶缶などの熱源としても利用されている。なお、バガスをボイラーで燃焼することにより生じる燃焼灰は、大気中に飛散させないように電気集じん機で捕集している。これらのバガスを使用した発電システムは、平成21年にグリーン電力発電設備として認定された(注3)。
バガスの8割はボイラーの燃料として使用されるが、余った2割は近隣の肉用牛や酪農経営者などに販売され、飼養している家畜の敷料として使用されるほか、堆肥となって農地に還元される。バガスは他の堆肥の素材と比較して水分が少なく乾燥しているため、臭いも抑えられて扱いやすいという。また、敷料としては、おがくずやバークチップ(樹木の皮をチップ状にしたもの)などよりも水分吸収性が高く安価なため、好まれているという。
(注2)サトウキビ搾汁後の残渣。
(注3)一般財団法人日本品質保証機構が行う認定制度。
イ 清浄工程
清浄工程で生成されるフィルターケーキ(注4)は、土壌改良資材として生産者に販売される。フィルターケーキは単独でも堆肥として有効であるが、新光糖業ではバガスの燃焼灰と混ぜ合わせた特殊堆肥の状態でも販売している(写真4、5)。
現在の課題は、フィルターケーキの有効性について、生産者の認知度がまだまだ低いことである。今後、この土壌改良資材を広めていきたい一方で、散布するための機械がない、特に製糖期は散布する時間がないといった生産者側の事情もある。そこで、新光糖業では副産物であるフィルターケーキと燃焼灰を混ぜ合わせたより優良な土壌改良資材を製造して、それを生産者の畑に散布するサービスを始めることを検討している。生産者が育てたサトウキビから生まれる副産物が再びサトウキビ畑に還元されるという資源循環の仕組みを作ることで、工場運営の安定化にもつなげていきたいとの狙いがある。
(注4)清浄工程で生成される沈殿物。主成分は石灰とサトウキビに含まれる有機物。
ウ 分離工程
分離工程で生成される最終糖蜜は、すべて商社に販売され、そのほとんどが家畜の飼料となるが、それ以外では発酵原材料として利用されることもある(写真6)。
エ 廃水処理
工場からの排水は糖分を含んでいるため、工場敷地内にある廃水処理施設で処理される。好気性微生物を利用して廃水中の有機物を分解し、さらに曝気・沈澱・ろ過・薬剤処理を施した後、圧搾工程のロールなど機械設備の冷却水や洗浄用水として再利用される(写真7)。なお、廃水処理施設は工場設立当初からあるが、廃水を冷却水として再利用する仕組みは、平成15年に改築されたものである。
冷却水は濃縮工程で使用される効用缶・結晶缶の減圧処理にも利用されている。ボイラーで発生させた蒸気は発電機・圧搾機のタービンで使用された後、清浄・濃縮工程で再利用される。しかし、一度使われた蒸気は温度が下がっているため、蒸気の温度低下を補うために缶の内部を真空にする必要がある。そこで、冷却水を使用して缶の内部の温度を下げることで、真空になりやすい状態を作っている。
種子島は土地が平坦で、大きく長い河川が無いため、水が不足しがちになる。そのため、水を有効活用する仕組みは、島内で操業する工場にとって重要なことであるといえる。
【参考文献】
(1)熊毛地域農政企画推進会議(2024)『令和4年度熊毛地域農業の動向(令和6年3月)』
(2)エコアクション21ホームページ〈https://www.ea21.jp/〉(令和7年1月8日閲覧)