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ラムネで脳を活性化!〜集中力が求められる受験・eスポーツの場面に向けて〜

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最終更新日:2025年12月4日

ラムネで脳を活性化!
〜集中力が求められる受験・eスポーツの場面に向けて〜

2025年12月

森永製菓株式会社 研究所 健康科学研究センター
主任研究員 瀬戸口 裕子

はじめに

 「ラムネ」と聞くと海外由来の菓子を想像する方もいるかもしれませんが、錠菓としてのラムネ菓子(compressed tablet candy)は日本で発展した菓子です(写真)。2015年の日本食品標準成分表の改訂(七訂)時に食品番号15106の<キャンデー類>錠菓が<キャンデー類>ラムネへ変更され、ラムネ菓子は日本人が日常摂取する食品の一つになっています。本稿では、ラムネ菓子の製法・市場動向と、ラムネ菓子が示す認知・心理生理などへの影響について、近年の研究成果を中心に概説します。
 
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1 ラムネ菓子の製法と特徴

 ラムネ菓子は、砂糖やぶどう糖、でん粉(ばれいしょでん粉、コーンスターチ、タピオカでん粉)などを原料とし、これに結合剤、乳化剤、滑沢(かっ たく)剤、香料、酸味料などを少量混合して打錠成型した錠菓です1)。すべての原料を混合して打錠する方法と、糖原料と結合剤でいったん顆粒を作ってから残りの原料を混合して打錠する方法があります。顆粒を作る方法では、顆粒の粒度や密度を調整することで、硬さや口溶け感などをコントロールしています。

 酒石酸と重曹を配合することで、シュワッとした発泡感をもたせることもできますし、原料の9割以上を占める糖の性質によっても特徴付けることができます。

 例えば、砂糖はなじみのあるクセの少ない甘味で、口内に穏やかに残って甘味の余韻をもたらします。

 含水結晶ぶどう糖は砂糖よりも甘味が弱く残りにくいことに加え、溶解する際に吸熱作用により冷涼感を与えます。この冷涼感がラムネ飲料に似ていることから、一部のラムネ菓子は、ラムネ飲料の瓶を模した容器で市販されています。

2 ラムネ菓子(錠菓)の市場状況

 キャンディ市場は、コロナ禍の影響で一時落ち込みましたが、その後は回復基調にあり、2024年にはコロナ禍以前を超える3500億円まで増加しました。ラムネを含む錠菓カテゴリも2023年に増加に転じ、2025年は、9月の時点で2021年や2022年の年間推定販売金額を超える478億円になっています(図1)。
 
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3 ラムネ菓子の作用

 ラムネ菓子の主原料は砂糖やぶどう糖です。砂糖の主成分はぶどう糖と果糖が一つずつ結合した「ショ糖」(スクロース)で、人間の体は、こうした糖質を含む炭水化物を主要なエネルギー源としています。

 中でも特に脳は、通常の状態ではぶどう糖を唯一のエネルギー源としていますが、ぶどう糖は脳に貯蔵できないため、常に血液からの供給を必要としています2)。その量は1日当たり120グラムと推定されています。このことから、ぶどう糖を中心に、認知機能に対する糖質の効果についての研究が行われてきました。ラムネ菓子についても、主原料を知った自治医科大学救命救急センター 間藤卓医師のひらめきをきっかけとして、認知機能をはじめとする脳活動などへの作用が検証されていますので、ご紹介したいと思います。

(1)短期的な認知機能への影響

 20〜39歳の健康な男女14人を対象に、含水結晶ぶどう糖含有ラムネ菓子(以下「試験用ラムネ」という)29グラムを摂取した際の血糖値と認知機能への影響を検証しました3)。その結果、血糖値は試験用ラムネ摂取後のみ上昇し、認知機能については、試験用ラムネ摂取後は、プラセボ(注1)摂取後と比較して、ワーキングメモリ(短時間に頭の中で情報を保持し、操作する能力)と持続的注意力のスコアが上昇しました。この検証試験によって、試験用ラムネが認知機能改善へ寄与する可能性が初めて示されました。

 次いで、健康な男女89人を対象に、ストループテスト(注2)を用いて認知機能への試験用ラムネの影響を検証しました4)。試験用ラムネを摂取したグループは、摂取しなかったグループに比べ、色を表す単語がその意味とは異なる色のフォントで示されても素早く回答するという結果が得られました。この結果から、試験用ラムネが実行的注意力を向上させる可能性が示されました。

 さらに、18〜29歳の健康な男女17人を対象に、検証試験を行い、認知テストとその際の脳活動および心理状態について、試験用ラムネ摂取前後の変化量を評価しました5)。試験用ラムネ摂取時には、プラセボ摂取時に対し、選択的注意力を評価するフランカー課題(図2)の正答率が改善し、脳血流量が増加しました(図3)。また、感情・覚醒チェックリストの「エネルギー覚醒+」(注3)、気分プロフィール検査の「活気−活力」というアンケートスコアも改善しました。これらの結果から、試験用ラムネ摂取により、ポジティブな気分で認知課題に取り組み、脳の一部の活動が活性化し、選択的注意力が向上することが示唆されました。

 (注1)見た目や味は同等だが、含水結晶ぶどう糖を含まないもの。
 (注2)前頭葉の働きを評価する神経関連の心理学的検査を指す。
 
(注3)「気力に満ちた」「活動的な」「機敏な」「エネルギッシュな」の状態を総合的に評価したもの。



 

 フランカー課題とは
画面中央の矢印(不等号)の向きを素早く回答する課題で、周りの矢印の向きによって、難易度が変化します。4パターンの矢印の組み合わせがランダムに何度も表示され、正答率や回答時間で選択的注意力が評価されます。矢印ではなく、アルファベットなどを使用する場合もあります。
 



 これらの検証試験によって、試験用ラムネが持続的注意力、実行的注意力、選択的注意力など、集中に関連する認知機能を短期的に改善させることを示唆する知見が得られています。

(2)eスポーツ/集中が求められる場面での効果

 ゲーム習慣のない健康な男子大学生20人を対象に、試験用ラムネのeスポーツ(注4)時の集中への影響について、簡易脳波計(左前頭葉1カ所を測定)を用いた検証試験を行いました6)。プラセボ摂取時と比較して、試験用ラムネ摂取時は、レーシングゲーム終盤において、SMR波と呼ばれる脳波の相対パワーが増大しました。SMR波は、リラックスしつつも集中した状態で高まる脳波だと考えられています。また、レース前後に実施したトレイルメイキングテスト(注5)でも、試験用ラムネ摂取時の方がランダムに配置された数字をより素早く順番にたどることができており、情報処理速度や持続的注意力の向上が示されました。

 これらの結果から、試験用ラムネの摂取には、集中力を必要とするeスポーツにおいてパフォーマンスを高める効果が期待されます。

 (注4)「エレクトロニック・スポーツ」の略称で、コンピューター・ビデオゲームを使ったスポーツ競技。
 (注5)注意機能や遂行機能を測定するための神経心理検査を指す。

(3)習慣的摂取と本番パフォーマンス(ルーティン効果)

 18〜24歳の健康な男女35人を対象に、受験などにおける集中状態や安心感に対する試験用ラムネの影響について検討しました7)。特定の菓子摂取習慣のない23人を2群に分け、29チャンネルの広範囲な脳活動を測定できる脳波計で、試験用ラムネ(ラムネ菓子非習慣群)またはゲル状キャンディ(ゲル状キャンディ非習慣群)のいずれかを摂取した後に、集中力が試される本番課題中の脳波を測定しました。ラムネ菓子非習慣群では、左頭頂-後頭葉領域においてα波の抑制を示した(図4)ことから、注意深く集中して課題に取り組んでいた可能性が示唆されました。アンケート結果からは、試験用ラムネ摂取によって、課題前に安心感を覚えていたことが分かりました。

 さらに、ルーティン効果の検証として、勉強時に試験用ラムネ摂取習慣のある12人(ラムネ菓子習慣群)について、試験用ラムネ摂取後の課題中の脳波を調べたところ、ラムネ菓子非習慣群よりも右側後頭葉・後頭葉領域のα波が抑制され、摂取習慣のある方がより集中している可能性が示唆されました。さらに、ゲル状キャンディ非習慣群との比較では、右側中前頭回(中前頭回とは、前頭葉外側の約3分の1を占める部分)におけるθ波のパワー値が上昇(図4)しており、ワーキングメモリと言われる集中力の向上に起因し、いわゆるゾーン状態(注6)を助長している可能性が示唆されました。

 このことから、普段からなじみのあるお菓子で脳にぶどう糖を補給する習慣があると、本番でも同様のルーティンを守ることで安心感が得られ、結果的に集中しやすくなる可能性が考えられます。

 (注6)集中力が高まり、時間を忘れるほど没頭する状態のこと。
 
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(4)飲酒後の酔いへの影響

 20〜64歳の健康な男女15人を対象に、焼酎125ミリリットル摂取後のアルコール代謝について、試験用ラムネ摂取の影響度合いに係る検証試験を行いました8)。酔いに関するアンケートでは、試験用ラムネ摂取によって「疲労感」、「だるさ」、「ふらつき」が改善され、特に飲酒後の試験用ラムネ摂取による血糖上昇が大きかったグループでは、悪酔いの原因と言われる血中アセトアルデヒドの低下が観察されました。これらの結果から、飲酒後の試験用ラムネの摂取が酔いの緩和に寄与する可能性が示唆されますが、こちらも今後のさらなる検証が必要です。

おわりに

 これまでご紹介したように、ラムネ菓子は勉強や仕事、eスポーツなどでの短期的な集中維持や、飲酒後の不快感軽減などに寄与する可能性が示唆されています。

 糖類には、素早く体内に吸収されるエネルギー源であるという役割のほか、こうした知られざる作用を秘めている可能性があります。今後も引き続き客観的な検証が行われることにより、正確な情報が提供されていくでしょう。

 過剰な摂取に気を付けつつ、必要なシーンに応じて、ラムネ菓子を心の支えとして上手にご活用ください。

【参考文献】
1)木村次男(2000)「第V編 一般菓子 2.キャンデー類 2.3錠菓」『菓子の事典』朝倉書店 pp.401-403
2)Boyle, N.B. et al. (2018) 「The Effects of Carbohydrates, in Isolation and Combined with Caffeine, on Cognitive Performance and Mood―Current Evidence and Future Directions」 Nutrients. 10: 192.
3)稲垣宏之ら(2020)「健康な成人におけるぶどう糖ラムネ菓子摂取によるワーキングメモリーと注意力の改善―ランダム化二重盲検プラセボ対照クロスオーバー比較試験―」『薬理と治療』48(4) pp. 599-609.
4)Liu J. Et al. (2022)「Glucose Intake Improves Executive Attention」International Journal of Learning and Teaching. 8(2) pp.136-139
5)瀬戸口裕子ら(2024)「ぶどう糖含有ラムネ菓子摂取が健康な若年成人の認知課題に伴う脳活動および心理生理状態に与える影響―ランダム化二重盲検プラセボ対照クロスオーバー比較試験―」『薬理と治療』52(6) pp.711-722.
6)Furukado R. et al. (2022)「Effects of glucose Ramune candy ingestion on concentration during esports play and cognitive function」Journal of Digital Life 2,11

7)田中涼ら(2025)「脳波を用いた習慣的なラムネ菓子摂取の心理的要因が本番課題における集中状態に与える影響の評価」日本心理学会第89回大会 1A-079-PG
8)稲垣宏之ら(2021)「健康な成人におけるぶどう糖含有ラムネ菓子摂取による飲酒後の酔い,酔い覚めへの影響―ランダム化二重盲検プラセボ対照クロスオーバー比較試験―」『薬理と治療』49(9) pp. 1507-1517.

 

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