

ホーム > 砂糖 > 調査報告 > さとうきび > 南西諸島におけるサトウキビ産業の持続的発展に必要な品種特性と品種開発の可能性
最終更新日:2026年3月10日












本稿では、南西諸島の明日に必要な新たなサトウキビ品種の開発に向けて、1)近縁野生遺伝資源の利用による遺伝的多様性拡大の重要性、2)サトウキビ野生種との種間交雑による高糖度・高繊維化や地下株改良による株出し栽培での糖・繊維生産性の向上、3)エリアンサスを利用した根系改良による不良環境への適応性強化と持続的生産への展望―について述べた。これら将来に向けて開発を目指す品種の特性は、減少が続く農家の維持にとっても重要となる。既存の製糖品種は、「適期適管理」を前提としているが、高齢化や大規模化によりこれまでのような肥培管理は難しい。将来に向けた品種のマイルストーンであるはるのおうぎは、茎が細い上に脱葉性も悪いことから、NiF8やNi27のように誰もが好む美しい品種ではない。また、現状の製糖原料としての利用においては、繊維分が高い故に製糖設備への負荷が大きいことや、大量に発生するバガスなどを経済性と両立した形で循環利用を図る必要があるなどの課題もある。しかし、ハーベスタ収穫後の株出し栽培での再生が旺盛で初期生育も早いため、雑草との競合にも強く、株出し回数を多くできる上、管理作業の省力化(根切りや排土、培土回数の削減など)も可能である(サトウキビ育種コンソーシアム、2025)。このような特性を備える品種は、今後の農家の大規模化に必須となる省力的な機械化一貫体系の実現にとって重要であると考えている。何よりも、サトウキビ栽培農家にとって収穫後すぐにサトウキビが再生し、圃場が緑の葉で覆われることは、栽培の安定だけでなく、農家の栽培意欲をかき立てる上で重要な特性ではないだろうか。
今後は、種間交雑で得られた高糖度・高繊維・優れた株出し性を持つ素材に、属間交雑で得られた根系発達系統を交配し、それぞれの優良形質を集積することで、南西諸島の厳しい環境条件に適応しつつ、多回株出し栽培で糖質・繊維生産性を持続的に向上できる新しいサトウキビ品種の創出が期待される。現在、野生遺伝資源の育種利用を加速するため、関係機関が連携して、野生種由来の黒穂病抵抗性などのDNAマーカー開発、ゲノム情報を活用した交配組み合わせ設計や選抜手法の開発が進められている。これらの研究についても継続的に推進し、「明日をつくる新しいサトウキビ」品種の開発につなげていくことが重要である。また、南西諸島における「砂糖・エネルギー・繊維質複合生産」や「周年収穫多段階利用」、「環境改良型サトウキビ生産」の実現には、育種だけでなく、栽培法や利用技術の革新も欠かせない。品種改良とともに栽培・利用技術の開発を統合的に進め、南西諸島における新しいサトウキビ産業の実現を目指すことが求められる。