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サトウキビ産業のさらなる発展へ〜鹿児島県徳之島における仲農産の取り組み〜

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最終更新日:2026年4月10日

サトウキビ産業のさらなる発展へ
〜鹿児島県徳之島における仲農産の取り組み〜

2026年4月

鹿児島事務所

【要約】

 鹿児島県の南西諸島の一つである徳之島では、サトウキビの生産が盛んであるが、もともと作物の生育に適さない土壌が多いことに加え、近年では肥料や農薬、重油などの価格が高騰し、農家の経営に影響を及ぼしている。鹿児島県大島郡天城町の株式会社仲農産では、肥料の適期散布や土壌分析に基づく土づくり、堆肥の有効活用などの工夫を凝らすことで、土壌改良を行うとともに、資材費を抑制し、近年の物価高騰にも対応している。さらに、機械化を進めることで作業の効率化を実現し、地域の耕作放棄地などの開墾に注力して規模拡大を図りつつ、集落機能の維持に貢献している。

はじめに

 徳之島は、鹿児島市から南へ約468キロメートルに位置し、面積は約248平方キロメートルと、奄美群島の中では奄美大島に次いで大きな島である(図1)。徳之島を含む奄美群島は、年平均気温が21.8度、年間降水量が1987.4ミリメートルの亜熱帯海洋性気候に属している。温暖多雨であるが、夏季は干ばつになりやすく、また、台風の常襲地帯のため作物の生産は不安定な状況にある。作物の栽培が難しい徳之島において、サトウキビの栽培は重要な産業として島の暮らしを支えている。サトウキビに加えて、ばれいしょ、かぼちゃなどの野菜やマンゴーなどの果樹栽培、肉用牛繁殖との複合経営が行われている(図2)。また、徳之島は、令和3(2021)年に奄美大島、沖縄島北部、西表島とともに世界自然遺産に登録された自然豊かな島であるほか、闘牛が盛んに行われており、観光資源となっている。さまざまな魅力を持つ徳之島において、サトウキビ産業は島の経済と密接に関係しており、島にとっては、なくてはならない産業となっている。



 
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1 徳之島におけるサトウキビの生産概況

 近年、肥料や農薬などの価格が高騰し、サトウキビ農家にとって厳しい状況が続いている。高齢化なども重なり、直近10年を見ると、鹿児島県内のサトウキビ農家の数は、平成27(2015)年の8115戸に対し、令和6(2024)年は6078戸(平成27年比25%減)と大幅に減少した。徳之島におけるサトウキビ農家の数も、平成27年の3107戸に対し、令和6年は2482戸(同20%減)と、減少の割合は県平均より小さいが、同じく大幅に減少している。

 また、徳之島の直近10年のサトウキビの収穫面積も、平成27年の3727ヘクタールに対し、令和6年は3143ヘクタールと約16%の減少となっている(図3)。



 

 徳之島における直近10年のサトウキビの生産量および単収は、令和元(2019)年以降は、多少の増減はあるものの、台風被害も少なく安定して推移している。令和6年における10アール当たりの収量は5502キログラムであり、鹿児島県平均の5804キログラムをやや下回る結果となっている(図4)。
 
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2 仲農産の概要

 徳之島に三つある町の一つである鹿児島県大島郡天城町のサトウキビ生産法人である株式会社仲農産(以下「仲農産」という)は、令和6年産の作付面積が19.5ヘクタール、収穫面積は17.6ヘクタール、出荷数量は1146トンと、町内有数の大規模生産法人である。仲農産は、令和4年1月に仲洋志郎氏と父の仲公男氏が設立した(写真1)。仲農産の労働力は、仲氏親子のほかに通年雇用の従業員を1人雇用している。作業機械は、トラクター5台、ハーベスター2台、ミニトラクター3台などを所有している。

 仲洋志郎氏は徳之島の出身で、愛知県内の大学を卒業後、父の勧めもあり、徳之島に帰って就農した。専業農家として日々サトウキビ生産に従事し、現在は天城町ハーベスター運営連絡協議会会長を務めるなど、地域のリーダーとして精力的に活動している。
 
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3 仲農産の取り組み

(1)土づくり

 仲農産の圃場は、天城町の比較的標高の高い場所や海岸付近に位置しており、土壌は酸性に傾きがちである。一般的にサトウキビの栽培に適した土壌pHは6.5〜7.5(微酸性から微アルカリ性)で、酸性の土壌では低単収になるといわれている。そこで、仲農産はサトウキビの収穫後、生育の悪かった圃場の土を採取し、天城町農業センターに土壌診断を依頼している。診断結果は土壌診断処方箋として紙で通知され、必要な肥料の種類や散布量が明記されている(写真2)。仲農産では、この診断結果に基づき、新植の圃場に苦土(く ど)石灰やよう成リン肥(ヨウリン)などを施用することで、土壌を中和している。

 また、仲農産の圃場は腐植(土壌中で有機物が分解されて生じた黒色の物質)に乏しいという問題も抱えており、これを解決するため、新植時に堆肥を10アール当たり3トン投入している。堆肥は農協から購入したり、南西糖業株式会社(以下「南西糖業」という)から出るサトウキビの搾りかす(バガス)を利用したりしている。さらに、土壌の肥沃(ひ よく)度をより維持するために、4年に一度、ばれいしょとの輪作を行っている。

 決して恵まれた土地とは言えない環境下であっても、上記のようなさまざまな工夫を凝らすことにより、令和元年産の単収は5.02トンだったものの、6年産では鹿児島県および徳之島平均を上回る平均単収6トンを達成している。
 
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コラム1 徳之島の土壌について

 徳之島は石灰岩あるいは石灰質堆積物を基に生成されている土壌が多く、畑・樹園地土壌の土壌群別は、暗赤色土53.8%、黄色土33.8%、赤色土8.5%などとなっている。島内の暗赤色土は、ほぼ中性で腐植含量は少ないが、養分保持力は大きい重粘な土壌である。一方で黄色土や赤色土は、徳之島の比較的標高の高い畑地に見られ、酸性で赤褐色であり、腐植に乏しい重粘な土壌である。

  土壌pHとサトウキビの生育および収量について、「鹿児島県農業開発総合センター研究報告 第14号2020」によると、サトウキビの根の生育に適する土壌酸度については、酸性よりも中性からアルカリ性の土壌を好み、酸性土壌では根の生育が阻害され、収量・品質が低下するとされている。また、土壌管理の面でサトウキビの収量増を図るには、第一に酸性土壌の改良を推進することが重要であると報告されている。さらに、土づくりとしての堆肥施用は、単収向上や生産安定に効果的であるが、特に奄美地域では、堆肥の生産量が少なく価格も高いことから、地域全体への堆肥利用促進は難しいことを踏まえ、サトウキビの茎葉(ハカマ)を原料とした堆肥の散布を7年連用するとサトウキビの単収は増加傾向を示すが、土壌pHを維持することはできないとされている。このことから、有機物の施用のみでは土壌酸度の適正化につながらないため、さらなる増収を図るには、定期的な土壌診断による酸度矯正に取り組む必要があると報告している1)
 



 

(2)作業の効率化

 仲農産では、作業の効率化を積極的に進めている。その一例が、GNSSトラクターである。研修会で紹介され、作業効率性の高さから確かなものであると確信し、購入を決断した。GNSS(Global Navigation Satellite System)とは全球測位衛星システムのことであり、人工衛星を利用して地球上での位置を高精度で測定するためのシステムの総称である。GNSSトラクターは、自動操舵システムにより、ハンドルを自動制御でき、設定された経路の自動走行が可能である。仲農産では、乗せ換え可能なGNSS機器を使用し、作業の都度トラクターに設置している(写真3)。導入以前は、ビレットプランターで苗を植え付ける際、トラクターが直進走行するよう、ハンドルを微調整しながら、苗が過不足なく投下されているかなど、煩雑な確認作業を要していたが、GNSSトラクターの導入により自動操舵が可能となり、運転以外のほかの作業に集中できるようになった。また、作業がスムーズになったことにより、作業スピードも向上した。



 

 また、前述したばれいしょとの輪作は、土壌の肥沃度の維持に貢献しているほか、作業の効率化にもつながっている。ばれいしょの収穫にはハーベスターなどの大型農機を使用しないため、土が固まることがなく、植え付け時に土を耕す作業を省くことができる。加えてばれいしょは、高値で取引されることも利点となっている。

(3)肥料の見直し

 仲農産では近年の肥料価格の値上がりを受け、使用する肥料の見直しを行った。以前は、20キログラム当たり約3000円の化学肥料を10アール当たり100キログラム投入していたが、同肥料が20キログラム当たり5000円に値上がりしたことを受け、化学肥料の施肥量を半分に削減した。同時に20キログラム当たり580円の鶏ふんを取り入れ、10アール当たり200キログラム投入している(写真4)。これにより、化学肥料のみを使用した場合と比べて10アール当たり6700円のコスト削減に成功した。また、以前と同程度の肥料コストに近づけることができた(表)。



 

 さらに、仲農産では株出し栽培の施肥方法の改良を行った。今までは株出し管理の際に株の上から肥料を散布していたが、肥料投入も可能となるよう株割機を改造し、切った株の隙間に肥料を落としていくという方法を取り入れた。これにより、より根元に肥料が投入できることに加え、降雨などによる流出を減少できるため、肥料がサトウキビにより多く吸収されることが期待される。仲氏は、この施肥方法の変更が増収につながったものと考えている。
 
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(4)早期管理

 仲農産では早期管理として、製糖期間中に南西糖業が工場設備を洗浄するために操業を休止する期間をうまく利用し、株出し圃場の管理作業と新苗の植え付け作業を進めている。目標は、3月までに株出し圃場の管理作業を終えることだ。収穫期に株出し管理、植え付け作業を収穫と同時並行で進めることにより、株および新苗の萌芽(ほう が)や成長を促進させ、単収増加につなげている。

コラム2 物価の高騰が農家経営に及ぼす影響

 近年、物価は徐々に高騰している。物価高騰による国民生活への影響は、昨今ニュースでも取り上げられ、多くの人が注目する話題である。総務省が作成した消費者物価指数(コラム注)の変動に関する資料によると、平成24(2012)年から徐々に消費者物価が高騰していることが分かる(コラム2−図1)。

 (コラム注)消費者物価指数は、全国の世帯が購入する財およびサービスの価格変動を総合的に測定し、物価の変動を時系列的に測定するものである。すなわち、消費者物価指数は、家計の消費構造を一定のものに固定し、これに要する費用が物価の変動によってどう変化するかを指数値で示したものである。

 

 

  農家の経営に直接的に影響を与える重油、肥料および農薬などの価格も徐々に高騰している。農林水産省が実施している農業物価統計調査によると、農業生産資材価格のうち肥料と農薬の指数は上昇傾向にある(コラム2−図2)。特に令和2(2020)年以降は、重油においても上昇傾向を見せている。




 これらの数値からも見て取れるように、現在、農家の経営にとっては厳しい状況が続いており、サトウキビ生産においても栽培コストは上昇している。中でも肥料価格は令和3(2021)年から5(2023)年にかけて大幅に上昇し、使用肥料の見直しは農家にとって必要な事項となっている。肥料は、無機質肥料と有機肥料に大きく分けられる。無機質肥料は一般的に化学肥料と呼ばれているが、化学肥料に対して明確な定義は存在しない。肥料3大要素と呼ばれる窒素、リン酸、カリウムは無機質肥料に分類される。無機質肥料には、ほかにも化成肥料などが分類される。窒素は主に尿素、石灰窒素などとして、また、リン酸は過リン酸石灰、よう成リン肥、重焼リン肥、カリウムは塩化カリウムなどとして販売されている。有機肥料は、主に鶏ふんやなたね油かすなどが販売されている。それぞれの肥料の資材価格指数はコラム2−図3の通りとなっており、3年以降大幅に上昇し、その後も以前の水準には戻っていないことが分かる。
 



 各肥料の2(2020)年以降の価格の変動はコラム2−図4の通りとなっており、価格が上昇傾向にある中でも、有機肥料の方が無機質肥料と比べて安価であることが分かる。特に鶏ふんは他の肥料と比較して非常に安価であることがうかがえる。有機肥料をうまく活用し、化学肥料の使用量をどれだけ減らすことができるかが、コストを抑えながら作物を栽培、収穫するためのポイントと言えるだろう。
 




 

4 圃場の拡大と地域への貢献

 前述のような取り組みの成果により、作業は大幅に効率化され、ほかの作業ができる時間が生まれた。そこで仲農産では、生産量2000トンを目標に、高齢化などによって生じた地域の耕作放棄地を借り、開拓を進めている。年間約50アールを開墾し、過去5年間で3.35ヘクタールを荒地から農地に再生している(写真5、6)。借り受けて開墾した圃場は、圃場主の親族などが帰島した際に、農業を始められるようにきれいに整備して返している。

 前述のような工夫により、仲農産は肥料や重油の価格が上がっていく中でも、コストを抑えつつ単収を上げ、さらに圃場を開拓することで収益増加につなげている。








 

 また、仲農産は集落活動の維持にも力を入れており、地域を支える活動をしている。仲農産を立ち上げた洋志郎氏の父、公男氏は天城町農業委員会会長、指導農業士など地域のリーダーとしてサトウキビ生産振興や地域農業の発展に寄与している。また、洋志郎氏も天城町ハーベスター運営連絡協議会会長、徳之島さとうきび新ジャンプ会(注)副会長を務めるなど、若手のサトウキビリーダーとして活躍している。洋志郎氏は、集落活動の維持について次のように話している。

 「島の生産者の高齢化や離農により、畑の管理も難しくなってきた。大規模農家は増えたが、収穫面積、農家数は減少しているのが現実。この現状を食い止めるため、若手と協力しながら集落を維持していきたい。また、周りにハーベスターを取得する農家が増えてきたため、今後はハーベスターのオペレーターを養成するとともに、受託地をみんなで分け合い、仕事を分配することで集落機能の維持に努めたい。」

 個人の利益にとらわれず、集落や島のことを第一に考える仲農産の本質を聞くことができた。

 (注)徳之島において、ハーベスター受託作業を中心に機械化一貫体系の構築に取り組み、サトウキビ生産量500トンを目指す20歳から50歳台の若手農家などで構成された地域営農集団。

おわりに

 昨今の物価高騰は多くの国民に影響を与えており、農家もその例外ではない。農業に必要な肥料、重油、農薬などの資材価格は令和3(2021)年以降、大幅に上昇し、その後も以前の水準に戻ってはいない。徳之島天城町で農業を営む仲農産では、資材価格が高騰する中でも、単収を上げる工夫、コストを抑える工夫、さらに圃場を増やすことで、収益増加を達成している。加えて仲農産は、地域のリーダーとして、目先の利益だけでなく集落の未来、徳之島の未来を見据えた活動を行っている。仲農産は今後、1)平均単収6トンの維持、2)年間生産量2000トン、3)機械の改良と作業の効率化による事業の省力化−を目標に掲げ、さらなる発展を続けていこうとしている。

 厳しい状況の中でも、工夫を重ねることで事業を成功させ、より高みを目指す姿勢に感銘を受けた。

 鹿児島県の南西諸島には、多くの魅力とエネルギーが詰まっている。サトウキビ生産は、島の経済を維持する上でなくてはならない重要な産業である。仲農産のように、あらゆる工夫でサトウキビ生産を成功させ、島の発展を支えていく担い手の増加を願うとともに、サトウキビ生産に尽力し、集落や島を支えている人がいることを多くの方に知っていただきたい。

 最後になりますが、本稿の執筆に当たり、ご多用にもかかわらず取材にご協力いただきました株式会社仲農産の皆さま、JAあまみ天城事業本部糖業農政課課長 玉江さまほか関係者の皆さまに、この場を借りて改めて御礼申し上げます。
 
【引用文献】
 1)鹿児島県農業開発総合センター研究報告 第14号 2020
「鹿児島県内サトウキビ畑の土壌酸性化の実態と陽イオン交換容量に基づいた酸度矯正対策」
<https://www.pref.kagoshima.jp/ag11/kenpou/documents/80688_20200331203146-1.pdf>
(2026/3/5アクセス)
【参考文献】
 ・総務省報道資料「2020年基準消費者物価指数全国2025年(令和7年)3月分及び2024年度(令和6年度)平均」<https://www.stat.go.jp/data/cpi/sokuhou/nendo/pdf/zen-nd.pdf>
(2026/2/27アクセス)

 ・統計局HP「2020年基準消費者物価指数の解説 U消費者物価指数2020年基準改定の概要」
<https://www.stat.go.jp/data/cpi/2020/kaisetsu/pdf/1.pdf>
(2026/2/27アクセス)

 ・e-Stat政府統計の総合窓口 農業生産資材価格指数 品目別月別年次別価格指数
<https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00500204&tstat=000001170266&cycle=7&year=20240&month=0&tclass1=000001201980&tclass2=000001230427>
(2026/3/2アクセス)

 ・味の素グループアミノ酸肥料オンライン販売/お役立ち情報一覧/基礎知識/ご存じですか?肥料の基礎知識|分類、成分、働き、効果的な使い方について<https://agritecno-japan.com/blogs/knowledge/fertilizer-basic-knowledge>
(2026/3/4アクセス)

 ・鹿児島県ホームページ V鹿児島県の土壌の概要
<https://www.pref.kagoshima.jp/ag05/documents/81177_20200508091845-1.pdf>
(2026/3/5アクセス)

 ・国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 日本土壌インベントリー 暗赤色土
<https://soil-inventory.rad.naro.go.jp/explain/E.html>
(2026/3/5アクセス)

 ・鹿児島県農政部農産園芸課「令和6年産さとうきび及び甘しゃ糖生産実績」
<https://www.pref.kagoshima.jp/ag06/sangyo-rodo/nogyo/nosanbutu/satokibi/documents/41531_20251002183024-1.pdf>
(2026/3/10アクセス)

 
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