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〜第32回国際甘しゃ糖技術者会議参加報告〜
最終更新日:2026年5月12日










(1)渡邉健太「Smart irrigation systems combined with subsurface drip irrigation improve sugarcane yield and water-use efficiency(地中点滴灌水を組み合わせたスマート灌水システムはサトウキビの単収と水利用効率を向上させる)」(写真7)
2019年度に始まった、沖縄県南大東島を対象としたサトウキビスマート農業実証プロジェクト3)は、23年度をもっていったん事業終了となったが、筆者(渡邉)は引き続き南大東島を対象に、灌水管理のスマート化を中心とした実証試験や技術普及に取り組んでいる。この取り組みの中で、気象データを用いた灌水判断、灌水ポンプの遠隔制御、ドリップチューブ埋設による地中点滴灌水から構成されるスマート灌水システムの実証試験を、現地の南大東島において3年間にわたって実施したため、本大会ではその報告を行った。なお、研究内容の詳細な報告は本稿では割愛するが、本誌26年2月号掲載記事4)に詳しく紹介されているため、ご一読いただければ幸いである。
農業機械部門で行われた本発表は、立ち見客を含め大勢の参加者で埋め尽くされ、特に地中点滴灌水への高い関心がうかがえた。サトウキビへの地中灌水は、国内では実施している農家はほとんどいない珍しい技術だが、海外ではブラジルやインド、豪州といったサトウキビ大国から、中東やアフリカといった水資源の限られた国や地域で試験導入や実用化が進み始めている。しかし、農家レベルで一般的に本技術が普及している地域は、世界的にもほとんど見られないのが現状である。その理由として、長大作物であるサトウキビの管理・収穫に利用される大型機械が埋設したチューブを損傷する危険性がある、根の伸長が非常に活発であるためドリップ孔へ侵入する可能性があるといった、その作物特性が関与している。実際に質疑応答時には、地中埋設するチューブのメーカーや構造、耐久性、埋設の深さなど、いかにチューブを長持ちさせられるかに関する質問を数多くいただいた。また、サトウキビは他作物と比較して栽培面積が広く生産量が多いため単価が低いが、地中点滴灌水は初期投資・更新コストが高く、費用対効果が見合わないといった経済的な理由や、慣行法である畝間灌水やスプリンクラー灌水でも比較的高収量を実現できるため地中点滴灌水の必要性を感じないといった理由も挙げられる。この点に関しては、農家の高齢化・後継者不足や気候変動に伴う水需要の拡大などが進む中で、省力・節水灌水がこれまで以上に求められるようになると考えられるため、今後の有益な技術として提言できると考えている。その他、実証した技術の実用化に向けての考えなどへの質問もあり、どの国でも現場実装フェーズにおいて同様の課題を抱えているように感じた。


(1)国際サトウキビモデリングコンソーシアム(International Consortium for Sugarcane Modelling、ICSM)
ICSMは、サトウキビの成長モデルに関する情報交流の場として、南アフリカ共和国糖業研究所(SASRI)やCIRADなどの機関が中心になって2006年に設立され、成長モデルの改良や気候変動予測などに関する国際共同研究プロジェクトを実施している。これまでに、各国のデータを共有し、遺伝子型と環境交互作用の組み合わせの大規模な評価を行ったり、成長モデルの改良を試みたりしてきた。世界各国の研究機関や大学によって構成されているため、普段は電子メールやオンライン会議でやりとりを行っているが、ISSCT関連の国際会議に合わせて現地ミーティングを開催し、取り組むべき課題について意見交換し、活発的に議論を行っている。筆者のうち寳川は、19年アルゼンチン大会より、渡邉は本コロンビア大会より、ICSMに参画している。本大会時のミーティングでは、呼吸や糖蓄積の影響を加味したモデル開発の必要性や、間作に関するモデルの紹介があった(写真9)。寳川からは品種混植に関し話題提供し、データ提供を含めた共同研究の進め方について議論した。現在、サトウキビに関連する成長モデルや環境モデルのためのデータ共有プラットフォームの作成や、成長モデルのためのデータ収集方法プロトコールの作成なども進行中である。

(2)国際サトウキビバイオテクノロジーコンソーシアム(International Consortium for Sugarcane Biotechnology、ICSB)
ICSBは、サトウキビのゲノム解析に関する情報共有や研究費捻出を目的として、1988年に第1回国際サトウキビゲノム解析ワークショップが米国で開催された折に設立されたコンソーシアムである。当初は米国メンバーがほとんどであったが、その後、世界各国から参加者が集い、現在では20カ国以上の公的・民間研究機関によって構成されている。ICSBは、サトウキビ界における分子遺伝学の研究分野を飛躍的に進めたコンソーシアムであり、サトウキビのゲノム解読・遺伝子マッピング、マーカー選抜用分子マーカー開発、遺伝子形質転換技術開発といったプロジェクトを先導してきた。これらの成果は、特に国際的な遺伝資源共有の枠組みを構築したという点で非常に重要であり、農業バイオテクノロジー分野における共同研究モデルの代表例とされる。
(3)国際サトウキビバイオマス利用コンソーシアム(International Sugarcane Biomass Utilization Consortium、ISBUC)
ISBUCは、世界的な再生可能エネルギー推進の流れを受け、ISSCTが主導して2006年に設立されたコンソーシアムである。サトウキビは糖とエタノール生産に広く利用されるが、その副産物であるバガスや葉・梢頭部などのトラッシュといったバイオマスを未利用のまま廃棄するという問題があった。ISBUCは、これら副産物からより付加価値の高い製品を産み出し、炭素排出量削減と農業経済発展を両立させることを目的としている。ISBUCには、研究機関だけでなく民間企業やその他関連機関も参画していることから、資源の高付加価値化に関する研究推進だけでなく、開発した製品の商業化にも積極的に取り組んでいる。メンバー間で分析技術やプラットフォームを共有し、国際会議やワークショップを通じた知識交流を推進している。
なお、これらのコンソーシアムは、ISSCT公式の下部組織や常設委員会ではなく、直接の関係はないものの、構成員や構成機関の多くがISSCTに所属しているため、人的・研究的なつながりは非常に強い。本大会でも、コンソーシアムメンバーによる共同研究の報告を行った発表が複数あり、活動の活発さがうかがえた。
